第1話「深夜の人探し」
金曜、正確には土曜の深夜3時、毎週欠かさずに聞く芸人コンビのラジオ番組生放送中、広告が流れた。
「人探しをしています…。男性で細身の方。私が駅で倒れていたところを助けてくださいました。お礼がしたいので090-……までご連絡下さい…」
男とも女とも似つかず、ボソボソと話すラジオに不釣り合いな声は、妙に耳に残る。
俺も当てはまるな、と思った。
たしかに、1ヶ月ぐらい前に駅で派手に転んで倒れていた爺さんを手助けして、駅員に引き渡した。
でもそれだけだ。確証もないしお礼までされるほどじゃない、と聞き流すことにした。
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深夜3時、今週も芸人コンビのラジオを聞く。
「ご恩を返したく、先日助けてくれた男性を探しています…。男性で年齢は35歳…身長は178センチ。私が駅で倒れていたところを助けてくださいました。お礼がしたいので090-……までご連絡下さい…」
またこの広告だ。ボソボソと喋る顔の見えない声の主に、言い様のない気味の悪さを感じ始める。
先週と違い、年齢や身長まで正確に伝えられている。
誰かから情報提供がされたのだろうか?
ピッタリ俺に当てはまるが、連絡するのも面倒で今週も聞き流した。
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また深夜3時がやってきた。
人探しの広告が今週も流れるんじゃないか、と耳をすませる自分がいる。
「600万円の謝礼を用意しました。人探しをしています…。男性で年齢は35歳…身長は178センチ。市内在住のヤマモトアユムさん。私が駅で倒れていたところを助けてくださいました。お礼がしたいので090-……までご連絡下さい…ヤマモトアユムさん…ヤマモトアユムさん…」
夏の暑さから逃げるため、クーラーの設定温度を自分が凍えるぐらいにしているのにも関わらず、ツーっと嫌な汗が背中をつたう。
まさかとは思ったが本当に探していたのか、謝礼まで用意して。煙草を持つ手がわずかに震える。
名前まで公にされた気持ち悪さは、自分が指名手配犯にでもなったような気にさせた。
芸人コンビが楽しそうに話し始める。
「最近、この人探しの広告が流れますよね!早く見つかるといいけど!ヤマモトアユムさーん!」
「お前やめろって!」
「だって謝礼600万ってすげーよ!」
ハハハッと楽しそうな芸人コンビに、なんだか安心する。
そりゃあ第三者からしたら羨ましい話だよな。
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気味の悪~いきもちわる~い作品が書きたくてコツコツと執筆していたホラー作品です。
なろう小説の企画もの参加したかった~!念願!
実際、私もラジオをよく聞くのですが、自分を探す広告が流れてきたら普通に嫌です笑笑