表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/364

『※新イラスト有り』69話 未開域《PREY》

挿絵(By みてみん)

アカデミックな

アカデミー


アザー生まれの

初参上


《人類域》を超えろ


そして新域へ

 灯りに満たされ影ひとつ落ちていない廊下を歩く。

 四方様々な箇所、至る所に及んで人工物だ。その上曲がり角もなくただ愚直なほどに真っ直ぐ。

 ミナトはどこか病院と近しい部分を感じてそわそわと落ち着かずにいる。


――さっきからするのは、人の……匂いか? 多くの人の匂いが染みついてる……場所?


 床材はなんだろう、壁も似ている。灯りが眩しい、電気の無駄ではないのか。砂も埃も落ちてない、まず大地に立たないのだから靴裏に砂がつくことすらない。

 歩くという動作をしているだけなのに暇ではなかった。目と脳が自動的に周囲から情報を得ようとしていた。


「それほど緊張することはない。これから君たちにやってもらいたいのはただ1つ、認定試験を受けてもらう」


 前を歩く源馬が振り返りながらふふ、と頬を緩ませた。

 勇壮な目立ちが友を見るときのように優雅に細められる。ジュンほどではないにしろ人当たりの良さが窺えた。


「認定試験? これからやるのはフレックスの開発じゃないのか?」


 ミナトは僅かに遅れながらも隣に追いつく。

 ほどほどに謙遜しつつも初聞きの単語だったため思わず首をひねってしまう。

 横に並ぶと身長差が顕著だ。高身長かつ体育会系を匂わす筋骨隆々な体格。男としてならミナトより源馬の格が圧倒的に勝っている。


「君は類を見ないフレックス能力を持つという検査結果が上がっている。そのもつという新型の第2世代能力を公式に認可するかを測定する場へ案内しているというわけさ」


「それをやっていったいなんの意味があるんだい? もっと超科学的なサムシングを使って手っ取り早くフレックスに目覚めさせるとかしないのか?」


「はっはっは。若者らしい柔軟かつ功を急く発想だ。だが残念なことに現段階で人類はフレックスを開花させる近道を知らんのでな」


 源馬は愉快そうにミナトの細肩をバシバシ幾度と叩いた。

 本人は軽いコミュニケーションのつもりでやってるのかもしれないが、わりと力が強い。

 痩せこけたアザー生まれと天才級のサラブレッド。意図せず相容れない組み合わせとなっていた。

 源馬は、がたいのいい直角ないかり肩で風を斬る。


「とりあえず君自身のためにも君のステータスを判明させる必要がある。開発や鍛錬に入るのはそれからが賢明だ」

 

 のっしのっしと偉そうに歩を進めていく。

 ミナトは痛む肩を押さえながら「……はぁ」その広い背につづいた

 聞いたところどうやら年齢は32才なのだとか。なんとなく聞いたら思考の間もなく教えてくれた。

 年輪を重ねながらも未だ成熟とも言えぬ若さと情熱を持て余す絶妙な年頃。ふんぞり返るほど堂々とした在り方とハキハキした声量は自信の現れに他ならない。

 ふとミナトは先の発言が気になって足を止める。


「ん? これから君たちにやってもらいたい?」


 この自信満々な声でか男が果たして言い間違えるだろうか。

 少なくともこの場にいるのはミナトと源馬だけ。あえて複数を指す君たちなんて言い回しを使う理由はない。


「む、気づいていなかったのか。このアカデミーに入ってからというものもう1人君を守護する騎士の如くついてきているぞ」


 源馬は辿ってきた廊下の奥を指し示す。

 それに沿ってミナトも横目につつ、とそちらを見やる。


「…………」


 いた。

 少し離れたところの柱の陰に1人ほど。

 やけに端正な顔を半分ほど覗かせこちらを凝視している。


「先ほどからずっとあの調子で視界の端辺りをちらちらとしている。特にこちらへ危害を加えてくる素振りもないため放置しているのだ」


 源馬と目が合うと人影はさっ、と隠れてしまった。

 どのみちノアでは――良くない意味で――有名なのだ。《四柱祭司(スクエアプリースト)》でさえ存在を認知していておかしくはない。

 あの柱の陰でチラチラ覗く――残念な――イケメンは、とにかく周囲の人々から距離を置く。しかもコミュ症なんて甘いものではなく、頑なな意思をもって無視を決めこむ。

 ミナトは頭痛を堪えながら全力警戒モードの信を呼ぶ。


「そんなところに隠れてないでこっちこいっての! うっかり外に逃がした家猫と外で出会った時の野性味あふれる姿じゃねーんだから!」


 思い切って手招きすると、彼は野良猫よろしくゆっくり姿を現す。

 どうやら警戒させる元凶となっているのは、やたら声のデカい男がいるから。

 信は源馬のことが気になって仕方がないらしい。眼差しが厳しく、全身から殺気めいた気配を漂わせている。


「唐突に消えてどこ行ってたんだよ? てっきりアカデミーにきたくないから姿を消したと思ったじゃねーか」


「エルツァディアムを少しな。人目に晒されないところへ置いてきた」


 信は言うとおりに丸腰だった。

 普段から肌身離さず帯刀しているはずの幻想刀を帯びていない。

 さらに刀ではなくわざわざ名で呼んでいるあたり含みがあった。源馬に長刀の存在を隠し通すつもりらしい。

 しかし彼と付き合いの長いミナトはとうに見通している。


「それ単に聞かれたときいちいち説明するのが面倒くさかったってだけだろ?」


「…………」


 信はふい、と色男面をあちらへ逸らした。

 どうやら図星らしい。となればわざわざはぐれて自室にでも置いてきたのだろう。


「おいこらオレに対してもネグレクトすんな。次から食券制じゃない飯屋での注文代わってやらねーぞ」


「ハレルヤのうどんが食べられないのは正直困る。あそこは店員が騒がしい以外非の打ち所がない食堂だからな」


「お前そういう目でヒカリのこと見てたのか!? 明るくけなげでいい子だぞ!?」


 ったく。ミナトは悪態をつきながらも彼の将来を案じている。

 家族もとい親友の行く先は暗雲ばかりだ。そうでなくとも7代目と管理棟にいたという件もあってかノアの民に警戒されすぎている。

 だがアザーに住んでいたころより環境は大きく変化しているといえなくもない。今でさえ孤高の残念イケメン。それでもノアで多くの人々に揉まれながら生きていけばいずれは……構成するのかもしれない……しないのかもしれない。

 源馬は、信に睨まれながらもカラカラ愉快そうに喉を鳴らす。


「様々な手段を講じてアカデミーへ勧誘しても黙殺されてしまっていたからな。正直なところミナト少年に付随し、信少年がついてきてくれたことはこちらとしても嬉しい誤算だ」


 万事こいとばかりに厚い胸板をどんと叩いた。

 その音に驚いた信がびくっ、と肩を揺らす。


「……っ!」


「たわけ。まず人様にガン飛ばすのを止めろ。お前その状態でどうやってノアで暮らしていくつもりだ」


 源馬は斜に構えるよう口角をふふとほころばす。

 内輪もめをする2人を「良い良い」と(こころよく)引き受ける。

 これが大人の余裕というヤツか。実力が備わっていると懐まで深くなるらしい。


「ミナト気をつけておけ。この男相当なやり手だ」


「そういうバトル展開っぽいことにはならないから落ち着け。1人でなにと戦ってるんだよお前は」


 そのまま男3人ひとかたまりになって廊下を進んでいく。

 先頭の源馬がさも当然とばかり前を歩き、ミナトは飄々と後につづく。信はやはりというかどこか心落ち着かぬ様子。

 外側から見ても巨大だったが中に入ってみるとどこまでも広い。これで1階相当なのだからちょっとしたテーマパークくらいの広大さ。

 そして廊下を進んでいくと両側に澄むくらい透明なガラス面が現れる。

 その奥に広がる景色もまた巨大だ。しかも様々な機材と思わしきものと人々が入り乱れていた。


――……ここは人間の実験場か? いや……杏たちが良く口にしてる訓練施設?


 チームメンバーたちから幾たび聞かされていたがこうして現場を見るのははじめてだ。

 しかも部屋のなかで行っているのは一概にトレーニングといえる代物ではない。

 ミナトが疑念を抱いていると、信も一緒になって首を捻る。


「なかでやっているのは……劇の練習か?」


「お、オレにもそう見えるんだが……どういうことだ?」


 どう見ても彼らの行っているのは、トレーニングではなく、劇のリハーサルだった。

 珍妙な格好で台本片手に円陣を組んでミーティングに取り組んでいる。


「アカデミーなだけにアカデミックなことしてやがるなぁ。なんかのイベントの余興でも用意してるのかね」


「どうあってもトレーニングには見えないな。ふざけ遊んでいるかのようだ」


 世にも珍しい光景に2人は食い入るようにしてガラス面に貼りついて様子を窺う。

 そうやってミナトと信が戸惑っていると、その2人の間から源馬がぬぅと顔を滑り込ませてくる。


「あれは決して遊んでいるわけではない。第1世代にさえ満たぬ者たちへの初期開発訓練だ」


 示し合わせたかの如く2人は同時に飛び退いた。

 ミナトと信は「嘘だろ!?」「ありえない!?」声を揃えて否定した。


「あれでも伝統と成功を極限まで高めた開発法でな。感情をわざと昂ぶらせる台本が使われている。あの演技の途中では必ずフレックスを開花させるパートが仕込まれているんだ」


 聞かされたところで未だ信じ切れるものではない。

 なにせなかで行っているのはただの劇だ。フレックスを発すでも、筋力を鍛えるでも、座学に励むでもなく、劇。

 しかも甲冑などの古風な武装から察するに中世のセットを舞台にした英雄活劇である。時代錯誤どころの話ではない。


「伝統の始まりとなった少年はきっとヒロインの子が意中の相手だったのだろうな」


 そう訳のわからぬことをいって源馬は颯爽と奥へ向かってしまう。

 そこからも訓練施設は奇妙奇天烈ばかり。

 カラオケ、楽器演奏、組体操、筋力トレーニング、絵描き、瞑想……えとせとら。奇妙を数えたらキリがない。

 当然ミナトと信は懐疑心を顕わにしながら光景に圧倒させられるしかなかった。

 そしてようやくこの長くもあり短くもあった歩程に終わりがやってくる。


「時に君たちはフレックスをなんと心得るかッッ!!」


 答えよ!! 唐突な気迫だった。

 源馬は両肩に下げたオーバーコートのような幅広の布を翻す。

 廊下突き当たりとなる大きな扉を背に仁王立ちとなる。まるで後につづく2人の行く手を遮るかのよう。

 ミナトは驚きつつも、しばし考えて源馬の瞳を真っ向から見つめ返す。


「オレにはなにもわからない。だけど……すごい素敵な力だと思ってるし必ずこの身に宿したい」


 自らを偽らぬ率直な解答だった。

 蒼とは心を寄り添わせながら誰かを守る力。使えぬ身だからこそ疎み羨み渇望する。

 源馬はこくりと首を縦に揺らし、今度は信のほうに眼差しを向けた。

 こちらもまたミナトと同様に僅かばかり思考の間を挟む。


「信念。己が正しいと信じる道を切り開くための力」


 信じたからこそ騙されてしまった。

 しかし信じたからこそ友と再会することが可能だったともいえる。

 信は怜悧ながらも芯のある瞳で答えた。きっと嘘偽りない答えのはず。


「どちらの答えも正答!! 己の望む道をゆめゆめ忘れぬよう心してここより先へ挑むと良い!!」


 大きな音と地鳴りとともに開いていく。


「第1世代は人類の延長線を現す!! 第2世代はさらに第1世代の具現化と超過を示す!! では第3世代に至りし人間はどのような力に目覚めるというのか!!」


 高さ10mはある巨大な扉がエアロックを解除しながら開いていく。

 ミナトと信は互いを横目で確認して呼吸を揃える。


「これより第2世代フレックス選定試験を開始しよう!! その身に宿す答えは果たして我々の停滞する《人類域》を超えられるか!! 志と闘志を燃やし人類を《世界域》へと導いてみせろ!!」


 喝ッッッ!! 豪快な気迫によって大扉が口を開いていく。

 そして2人は白光あふるる選定試験場へと踏み入る。


「いくぞ。アザー生まれビーコン屋育ちの意地をノアの連中に見せてやろうぜ」


「おう。この船で生きる連中とは物が違うってところを教えてやる」


 どちらともなく突き出した拳をぶつけ合う。

 高鳴る鼓動は微かな不安と大いなる期待を脈動に乗せていた。

 小さな希望を胸に宿して未知の領域へと挑む。



☆    ☆    ……  ……   ?

※新イラスト前目隠し用くっすん


挿絵(By みてみん)

















《聖なる守護者》




















龍印














《ナイツ3》

















第2世代


得意能力


不敵(プロセス)



















『んぇあ……? まだ夜じゃん? ……すやぴぃ……』





















亀龍院(きりゅういん) (たま)


挿絵(By みてみん)


能力:第2世代

武器:スイッチウェポン『流星式円月双輪(イラスト上は可変巨大化後』

性別:女

性格:やるときゃやる

   やらないときゃやらん

   なんだかんだ一緒にいてくれる久須美と夢矢が大好き

年齢:15



dz

挿絵(By みてみん)








挿絵(By みてみん)

ハイレグとお尻のムチ感を大切にしたいなと思いました PRN


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ