314話【VS.】神気 希少鉱石魔獣 ダモクレスガーゴイル 5
走りだした猛虎の群れは止まる術を知らない。
ミナトを筆頭に冒険者たちはダモクレスガーゴイルへと攻撃を開始する。
「まずは炙れ! 炙って叩いてタイミングを見て冷やせ!」
「欲張って全身を砕く必要はないぞ! 小さなダメージを蓄積させればいずれは終わる!」
威勢の良い声に別の冒険者たちも無言で頷いた。
弱点がわかった以上1撃で倒す必要はない。堅実に攻めていけば、やがて。
あちらは質で勝るがこちらは量で勝っている。攻撃さえ通るならば形勢は転ずる。後者のほうに圧倒的な軍配が上がるはず。
「呼吸が整ったのならもう1発デカいの頼めるか!」
「うん! いつでも!」
一団の先頭、先駆け。
モチ羅は、短い足で駆けながらミナトに応じる。
すぅぅ、と。膨よかな鞠を大気で大きく膨らませた。
「はぅっ――ぷううううううううううう!!」
すぼめた口先から煉獄の業火が発現した。
森羅万象を焼き尽くす龍の炎。紅色の光に当たるだけで肌が沸騰しそうなほどの熱気が襲ってくる。
そして身を起こしかけていたダモクレスガーゴイルを再び炎獄の炎が包みこんだ。
「ROAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!?」
「ぷうううううううううううう!!!」
敵はモチ羅の炎を露骨に嫌がる。
ソレが己の身体に害なすモノであると本能で認識している証拠だった。
牙城朽ち、砂上の楼閣。天下無敵だったのはすでに過去。ここに盛者必衰の理をあらわす。
「攻めろ攻めろ攻めろォ!!」
「狙われてる奴は回避に集中して! 狙われてない奴がアタッカーだよ!」
象は生涯に幾匹の蟻を踏み潰してきただろうか。
だが地に伏した象もまた蟻の餌となる定めにあった。
「KEEEEEEEEEEEEE!?」
4本の腕がまとわりつく蟻を払わんと狂乱した。
しかし冒険者たちも手練れ揃い。猛撃の間を縫って懐へと入りこむ。
「ガァハッハッハ! 力任せでいいのならドワーフの敵じゃねぇ!」
巨漢の大斧が当たると明瞭な火花が爆ぜた。
照り輝くダモクレスガーゴイルの向こう臑辺りを引っ叩く。
当然ダメージは入っていないし、大斧も易々と弾かれてしまう。
だが冒険者たちは止まることと恐れを教えられていない。荒れ狂う巨躯に俊敏さを備えて突撃する。
「魔法でたたくのもありでしょ! 《ストーンショット》!」
「肩口を狙って腕を減らせ! 1本でも多く減らせればそれだけ楽ができる!」
地団駄に巻きこまれぬようそれぞれが散りつつ交代で攻撃を加えていく。
無言の連携だった。手練れたちの織りなす共演の舞台。
そしてそのなかに混ざって1人ほど。着実にこなすものがいる。
――武器に振られるな! リリティアの教えを思いだせ!
戦闘鎚による猛追だった。
ミナトは鎚の鉄塊に振られないよう歯を食い縛る。
普段扱っている骨剣とはまるで別。先端のみに鉄塊のついた鎚は暴れ馬の如し。
――打撃のあとは弾かれる! その弾かれた勢いを利用して次の攻撃に加える!
初撃を振るっては、次に繋ぐ。息をつかせぬ連撃だった。
打撃ともに体重を後ろに反らす。すると跳ね返った鎚の重りがミナトを中心に円の軌道を描いて2撃目に繋がる。
支援魔法、武器の作り、要領のすべてがひと繋ぎで、理にかなっていた。硬い相手へ面で打撃を加えるのであれば銃より遙かに効率的とさえ思えてしまう。
「ッ」
「ROOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
調子に乗るな。
連撃のさなかそんな罵声が脳裏をよぎった。
ミナトは急ぎ攻勢を転じ、回避に脳を切り替える。
直後にミナトの経っていた場所が砂塵によってさらわれた。
ダモクレスガーゴイルは、金切り音を天高く発する。
「ROAAAAAAAAAAAAAA!!!」
丸太の如き太い腕を平行に振るう。
まるで冒険者を草木の如く払うようにして大地に爪を滑らせた。
暴風と暴力に巻きこまれた冒険者たちが数名弾き飛ばされてしまう。
「ぐおおおおおおおおお!?」
「きゃあっ!?」
強靱な1撃を貰えば刃は欠け、鎧でさえ砕けた。
弱点がわかったところで楽なモノか。尾が欠けたところで相手が巨躯の化け物であることに変わりはない。
大柄が大地を踏むだけで世界が脈動するのだ。少しずつではあるがやむなく犠牲になる者もではじめている。
「マナが切れた! もう援護に回せない!」
「仲間の腕の骨がやられた! 治癒可能なヤツはコイツを見てやってくれ!」
「動けなくなった重傷者をメインに治療して! 動けるのなら自分の足で戦場から離れなさい!」
物情騒然。現場は火の車だった。
吹き飛ばされた衝撃で腕がへし折れた者もいる。飛来した石が当たって片目を負傷している者や、そのまま気絶している者まで。
全員無事なんて甘い夢を見るなかれ。こちらも殺しに掛かっているのだ、あちらだってこちらの命を奪う。
死者はいるだろうか、なんて。ミナトは、振り返りかけて、鎚を担ぎ直す。
「ッ、余計なことを考えて立ち止まるな! 自分の命すらろくに守れないヤツが敵から目を背けるな!」
それかけていた意識を強引に敵に向け直した。
冒険者たちを多く救うには、1秒でも迅速に敵を無効化するしかない。
そう、刹那ほどミナトが戸惑っている間に横をすり抜ける影が1つほど。
「めそめそとダルいことやってんじゃねェ! ここからが盛り上がるところじゃねぇかよォ!」
「レティレシア!? どうしてお前まで前線にいるんだ!?」
悪辣な修道服の参戦だった。
ミナトは踏みだしかけた足を止めてしまう。
「参戦しねぇと功績にありつけねぇだろうがァ! それと使いっ走りどもにデカいツラされてんのもいけ好かねェ!」
駆けるたび豊かな胸元が波を打つ。
腰辺りまで深いスリットから白い脚が日の下に晒される。
そうやってレティレシアは上空を駆けるヨルナを見上げた。
「大鎌は向かねぇ! 余に手頃な武器を寄越しやがれ!」
「っ! わかったこれを使って!」
彼女の意を汲んだヨルナは、即座に武器を召喚する。
生みだしたソレを身を翻しながらレティレシア目掛けて投じた。
受けとった彼女は獲物を検分するようまじまじと眺める。
「ひゅぅ♪ 戦根か……――いいぜ極上だぁ♪」
手にした武器には柄の先に鉄球の如き頭がつく。
殴るに適した最良の形の武器だった。
戦棍を構えたレティレシアは一陣の風となって、飛躍する。
「楽しい楽しいオシオキの時間だぜぇ!!」
上空より肩口に向かって1撃を打ちこむ。
しかし荒れ狂うダモクレスガーゴイルの腕はすでに彼女を狙っていた。
「GROOOOOOOOOOAAAAAAAA!!!」
「危なげねぇ!」
すぐさまレティレシアは敵の肌を蹴って軌道を変える。
回避と着地をノンタイムで行いつつ横に回りこむ。
「そうらもういっちょう!」
今度は桃辺りに火の花弁が爆ぜた。
それからも裾と尾長の頭巾をたなびかせながら着実に攻めていく。
いっぽうでミナトは繰り広げられる猛攻に視線も心も奪われつつある。
「だ、誰よりも強い……どの冒険者よりも……」
あるていど慣れてきたからわかることも多い。
レティレシアの動きは他の追随を許さない。身のこなしから一挙手一投足まで熟練した強者の挙動だった。
肩、股、首といった確実にちぎれる部分を精密に狙い、叩く。
「戦場でぼーっとしてんじゃねぇッ!! さっさと次の工程に進めやがれッ!!」
「っ!?」
彼女に叱咤されてようやく現実に返ってくる。
ヨルナ、ルハーヴ、レティレシアだけではない。他の冒険者たちが稼いでくれた富をここで奮発する。
「そろそろ冷やしどきだぞ!! 前線で戦ってる連中は蒸気を利用して後ろに下がれ!!」
ミナトが声を荒げて指示を飛ばす。
すると後列にて待機していた魔法班がこくりと頷いた。
やれることはぜんぶやった。冒険者たちだってほうほうの体で最後の力を振り絞る。
生き残れば膨大な成果と功績が手に入る。しかも今回の戦いは経験としても大陸に栄華をもたらすであろう。
ダモクレスガーゴイル討伐法が確立された、と。このときの勝利をもってして白き魔獣による犠牲は大幅に減少する。
「タイミングを合わせる必要はない!! 準備が完了した順からアイツに冷や水を浴びせてやれェ!!」
人という部外者の手によって成された。
語られずとも大陸史の端へ確実に刻まれる。
ミナトの音頭に合わせて魔法が次々とダモクレスガーゴイルに放たれた。
「《フロストアロー》!!」
「《フリーズブラスト》!! 《ミストダイヤモンド》!!」
「《ハイウォーター》!!!」
3度の濃霧が苛烈な草原を塗りつぶした。
じゅわ、じゅわ。五月雨がアスファルトを叩くみたいな音が止まない。ダモクレスガーゴイルの肌に触れて沸点に達した水が蒸気へと昇り詰める。
息を吸えば熱気で咽せてしまいそう。ミナトは冒険者たちと霧を縫って後方に待避した。
「こい……こい……こい……!」
「お願い……効いて……!」
成果を待ちながら拳や祈りを結ぶ者までいる。
霧の緞帳は未だ開かず役者の姿を隠したままだった。
一心不乱という表現が正しいか。徒党を組んだそれぞれが本気の眼差しで霧の晴れる向こう側を見つめている。
そして鼓動にして10つほど。長くも短い間を経てからゆっくりとじらすように霧の壁が開いていく。
「G……G……G……!」
まず1つ。
メシィ、と。ガラスの割れるような音とともに、へし折れた。
そのまま根元の腐った腕が草地の上に横たわる。
「……rrrrrrrrrr!」
輝かしかった姿は見るまでもない。
まるでまだら模様。曇りなき白き巨躯は全体に斑点を作っていた。
錆と鉱。鉱の重みによって脆く薄汚れた錆部分が割れ、自己崩壊を誘発していく。
「RORORORO……!」
1歩踏みだして踏みだした側の足が根元から削げた。
その衝撃でまた1本の腕が身から外れる。バランスを崩した巨躯が前のめりになって倒れ伏す。
もうダモクレスガーゴイルは2度と大地を踏むことは叶わない。腕も、足も、もっていたものすべてが彼のものではなくなっていた。
「R……O……R……A……」
そしてゆっくりと眠るようにして眼から光が喪失する。
霧をさらう風が草原の青葉を波立たせて吹き抜けた。
ダモクレスガーゴイルは、さながらそこにはじめからあった大岩のように、動かぬ1つの大岩と化す。
「や、やった?」
どこかの早とちりが震えた声を漏らした。
それにつづいて1人また1人と現実を身に沁みて実感する。
「やったぞおおおおおおおおおおお!! 俺たちの勝利だああああああああああ!!」
「やったやったぁぁ!! 突然変異種討伐と超希少鉱石同時攻略よぉぉ!!」
「怪我した連中はさっさと治療して貰え!! ここまできて息絶えたのなら後々バカをみることになるぞ!!」
各々が平等に勝利を謳い、喝采した。
女たちは胸を弾ませ抱き合う。男たちは手にした武器を天高く掲げる。それぞれ最高の瞬間を喜び讃える。
支援魔法が切れると同時に戦闘鎚の重みが、ずしりときた。
ミナトは、長く熱い吐息を吐いて肺を冷やす。
「ふぅぅ……なんとかなったか」
汗を拭う。風が額に当たって心地よい。
まさに肩の荷を下ろすような感覚だった。
他人の命を背負う感覚。重責だったため心労のほうが讃えるというより祟っている。
冒険者たちのよう感情のままに喜ぶのは、少しばかり難しい。
「……?」
安心しているさなか。ふと、気づく。
こういうときヨルナなんていの1番に飛びついてきそうなもの。
そのはずなのに黄色い声のひとつも聞こえてこない。
「おーいそんなところでなにやってるんだよ? せっかくなんだからお前らもみんなと合流して……めし、で、も?」
なにか様子がおかしい。
ヨルナとルハーヴがダモクレスガーゴイルだったものを前に佇んでいる。
「……なにかがオカシイよ。なぜかひどく嫌な感じがする……」
「ああ。冒険者連中が第3まで布陣を敷いてたわりにコイツは新品だったからな」
他が勝利に浮かれてはしゃいでる。
というのに2人の周囲だけには物々しい様相が抜けきっていないのだ。
「しかもこんな難易度の高い任務にきているのはみんなベテランの冒険者たちだ。この場でさえ犠牲者の数は目に見えて少ない。つまりダモクレスガーゴイル相手に第1第2の布陣が半壊するとは到底思えないよ」
「同感だ。団体での戦いは3割が戦闘不能になった時点で半壊から撤退が常識。無策で挑んでそれだけの損耗するのは冒険者じゃねぇ」
割っては入れぬほど、真剣な声色だった。
違う。ミナトはあの話のなかに入りたくないのだ。2人のいってることを心の底から信用したくない。
肩の荷を下ろしたということもある。だがなにより冒険者たちの笑顔が歪ませたくない。
「……っ!!」
その時反射的に戦闘鎚を握る手が固まった。
大団円を迎えた冒険者たちは気づいてすらいない。
ミナトだって本来なら気づきたくなかった。だけど、気づかざるを得ない。
先ほどダモクレスガーゴイルがやってきた方角から迫る巨体がある。
「ま、まだ、くるのかよ……?」
目視してはじめて恐怖以上の吐き気をもよおす。
怯えて縮んだ胃の腑が裏返って中身をすべて零してしまいそうなほど、最悪だった。
「……う、そだろ?」
世界を疑った。
残酷すぎるこの世界を呪った。
神でさえ否定したい気分だった。
横一線になったグリーンラインの地平線が隆起していく。
存在が音より早く振動として伝わってくる。
数にしておよそ3つ。どれも部分的に負傷しているものの、ほぼ健在の姿をしている。
「…………」
ミナトは真の絶望というものを知った。
声さえだせないほど腹の奥から墜ちていく感覚。死さえも上回る、その前提。
「潮時だ」
いつからそこにいたのだろう。
ミナトの隣にはレティレシアが佇んでいた。
彼女は戦棍で肩を叩きながら気だるそうに唇を歪めている。
「潮時って……どういう意味だよ?」
「回収は後回しにして棺の間へ戻るってことだ。嵐が過ぎた後に改めて討伐分の功績を回収にくりゃいい」
とてもではないが人としての発言とは思えない。
ミナトは冷静ではいられなかった。感情がぐちゃぐちゃになっている。
だから黙っていられなかった。気づいたときにはレティレシアの胸ぐらを掴んでいる。
「引く!? オレたちだけで逃げるっていうのか!? だったらここに残された冒険者たちはどうなるんだよ!?」
「上手くやりゃ命からがら逃げんだろ。そもそも面倒を見てやる謂れってもんがねぇ」
レティレシアは修道服を捻り上げる手を振り払うことさえしない。
しかも冷徹な振る舞いを、さも当然であると、曲げることはなかった。
そしてシャープな顎を上げて憔悴するミナトを平然と見下す。
「十分だ。今回の戦いでの活躍は評価に値する。だからこの無礼な手をいますぐ離しやがれ」
瞳の血色が深くなって細まった。
睨みだけで蛇すら殺せそうなほどの重圧が放たれる。
だが、ミナトも一向に譲ろうとしない。焦りと怒りでレティレシアをまくしたてる。
「ふざけるなよせめて全員助ける努力くらいしろよ!? あんなにぼろぼろの状態でどれだけの数が運良く逃げられると思う!?」
「なに熱くなってんのか知らねぇけど、そもそも冒険者ってのは原則自己責任で生きてんだよ。未開の洞窟に突っこんで名声を得ようが醜い魔物の孕み袋になろうがヤツらの選んだ結末ってやつだ」
とてもではないが説得の余地はない。
レティレシアの考えかたは一貫してそうそう曲がるものではなかった。
もしこの場から棺の間へ逃げれば見なくて済む。多くの生きていた冒険者たちの悲鳴や断末魔を聞かずにのうのうと生き延びられる。
「もういい」
だが、その選択肢ははじめから存在していないのだ。
ミナトはレティレシアを突き飛ばすようにしてひねり上げた胸ぐらから手を解く。
「お前の薄情さにはいよいよ呆れた」
手を離したのではなく、繋がりを断った。
コイツはいらない。そうミナトは判断する。
「ミナトくんどこにいくんだい!? 早く撤退しないとキミだって――」
ヨルナが道に割って入った。
だが大陸でもっとも付き合いの長い友でさえ押しのける。
「死ぬっていうのか? ならここに生きてる連中だっておなじ末路を辿るろうな?」
「そ、それは……そうだけど、キミがいったところで……」
止めようと伸ばした手がミナトによってはね除けられた。
それでヨルナは一瞬ショックを受けたように「っ」と下唇を噛んだ。
冒険者たちは未だ地平の向こうから押し寄せる影に気づいていない。勝利したという美酒に酔いながら今日を生き延びたことに喜び勇む。
今生の死別が迫っていることさえ見えていない。もう幾ばくもしないうちに与えられた勝利がやがては仮初めであると気づかされる。
「誰かが死ぬところはもう見飽きたんだよ」
ミナトは戦闘鎚を担ぎ直す。
そしてちょこちょこと駆け寄ってくるモチ羅の頬にそっと触れた。
「みなと? どうするの? たたかう?」
「ああ。戦闘がはじまれば冒険者たちは必ず気がつく。オレが先手を打って時間を稼げばアイツらには参戦か逃走の2択を選べるようになる」
きっとモチ羅ならば逃げおおせるだろう。
勝敗が決したとき、龍の膂力で戦闘から離脱可能のはず。
「テメェマジでいってんのか? 相手はさっきの3倍だぜ?」
ルハーヴさえあきれ顔だった。
槍を杖代わりに頭を抱える。
しかしミナトの足が止まることはない。徐々に巨大へと進展する振動を靴裏に感じながら前のみを目指す。
するとその死地へ赴く無謀者の背にゲタゲタと鐘を割るような哄笑が降りかかる。
「雑魚が足掻いてみすぼらしいよなァ!! 英雄にでもなって世界を救う夢でも見てんのかァ!!」
この場合笑っているとはいわない。
レティレシアは馬鹿にしているのだ。それも最大級の軽蔑と侮辱を籠めて。
だから立ち止まる、振り返る。
「そう願うことは……ダメなのか?」
《区切りなし》




