302話 血の盟約《Vampire Priestess》
空気が澄んでいた、さながら凪。
多くが集う闘技の場だというのに耳が痛くなるほどの静寂にあふれている。
無頼の救世主たちからは音ひとつとして発されることはない。なかには膝を落とし祈り手を結ぶ者までいた。
大陸種族たちは降臨せし上位存在の偉大さをその身をもって提唱する。現れた断罪の天使を前にして崇め、奉る。
「なんか天使って珍しいって聞いてたけど、ずいぶんエンカウント率高くなぁい?」
そんななかでもミナトは正常だった。
寵愛、慈愛、選定ときての断罪である。
大陸世界に降りたった短な期間で4体ともなれば緊張感も薄れるというもの。
「オメェのもってるそれが元凶なんだよォ! 序列上位の3級天使なんぞ呼び寄せやがってくそったれがァ!」
いっぽうレティレシアは気が気ではないらしい。
青ざめきってミナトの胸ぐらを引っ掴む。
「テメェか!? 聖誕祭に選定が現れたっていうのもテメェのせいなんだなァァ!?」
「疲れてる頭を揺らすんじゃないよぉ……。なにこの十字架捨てれば満足かぁ……」
怒れているようで、実はそうではない。
ミナトの目には彼女が酷く怯えているように見えている。
「なにこそこそやってんです? 内緒話なら見えてねーとこでやるかワタシも入れろです?」
「――イ”ギッッッ!!?」
だから先ほどからずっと、こんな感じ。
己を囲う場だというのに天使の降臨以降まるでままならない。
レティレシアは借りてきた猫のように震えていた。
「ちなみにその天界より授かりし遺物は捨ててもムダです」
ちなみに降臨した天使のほうといえば。
これもまたほどほどに複雑怪奇なことになっている。
降臨してからというもの表情を傾げながらなにもせず佇むだけ。目的もわからなければ要領すら得ない。
「ムダってどういうことだい? そういえば今日この十字架置いてきた気がするんだけど?」
「ソイツは気に入った所有者から決して離れず付き纏うです。だから捨てても放置しても必ず手元に残るです」
「なにそのストーカーばりの飽くなき執念は!? 完全にただの呪いのアイテムじゃないか!?」
むっ、と。口にするも表情にまるで変化はない。
まるで石膏で固められてでもいるかのよう。ときおり瞬きをする辺り仮面ではないことは確か。
だがタストニアと名乗る天使はここにきて眉ひとつ動かすことはなかった。
「天界から授かった遺物を呪いと表現するのはかなり失礼な物言いです。それのおかげで天界はおはようからおやすみまでオマエの赤裸々な暮らしを見つづけることが出来るです」
「ありえないくらい超ハタ迷惑だなぁ!? オレの数少ないプライバシーとプライベートを同時侵略するんじゃないよ!?」
いちおういまのところ対話は可能だった。
というよりむしろ気さくな部類ともとれる。こうして人間相手に限ってはとても饒舌に言葉を交わしてくれている。
ただ表情がまったく変わらないため内心読みづらい。立っているだけで花になる少女ではあるが、いまいち不気味な部分があった。
――なんでわざわざ棺の間へ降臨してきたんだ?
「なに黙って見てるです?」
ミナトが首捻る。
するとタストニアも揃って同じ方向に顔を斜めに倒す。
見た目は真に美しき少女。白い装いも清潔ならば白き2枚翼も相まって清純ささえ感じさせる。
骨格や体型のか細さから見ても少女と断定して良いだろう。対して胸の辺りはだいぶ慎ましやかだった。
天使を観察していると、ミナトの袖が申し訳程度に引かれる。
「オマエが呼びだしたんだから責任持ってなんとかしろよお……!」
普段高圧的なレティレシアにしては弱々しい悲痛な声だった。
袖を強引に引くどころか、きゅっと握って離さない。大鎌でミナトの肩を貫いた彼女とは思えぬほど少女めいている。
「どうしてそんなに天使に怯えてるんだよ。表情筋は死んでるけどおとなしくていい子じゃないか」
「天に還る魂を掠めとってる余からすれば面と向かって出会っていい相手じゃねぇんだっつの……!」
ああ、と。ようやくミナトにも納得がいく。
彼女が影に隠れ潜みビクビクしている理由が判明した。
ここ棺の間は無頼ゆえに天へ昇れず浄化される魂の掃きだめ。その掃きだめを作りだしているのはレティレシア自身。
「つまり要約すると、警察に見つかった暴力団事務所みたいな感じかい?」
「い、意味分かんねぇよ……! と、とにかくさっさと天使をなんとかしやがれぇ……!」
頼むからよぉ、なんて。すがりつかれても困り果ててしまう。
というよりむしろミナトからすればいまの弱っているレティレシアが丁度良い。
天使と目が合わぬようミナトの影に隠れて震える。ときおり胸の突起が背に押しつけられて心地よい。
「おお。ヨルナもいるじゃねーですか奇遇です」
「あ、あははぁ。どうもお久しぶりですタストニア様」
タストニアのほうはといえばまるで眼中にない。
ヨルナを見つけるやいなや浮いていた身体を降下させ素足で砂を踏む。
「あの子と知り合いなのか?」
「ああうん。タストニア様はこの間僕の腕に頼くださって天界の武器の修理を依頼してくださったんだよ。だからちょっとした顔見知りって感じだね」
さすがは伝説級の鍛冶職人と讃えられるだけはある。
大陸種族のみならず天使にまで頼られるとは。
「あの子感情がまったく読めないというか全然表情変わらないんだけど、怒ってたりする?」
「たぶん怒ってないと思うよ。怒ってたらまず降臨すらしてこないはずだし、なにか別の目的があるんじゃないかな?」
顔見知りのヨルナがいうのであれば信憑性は折り紙付きか。
ミナトはひと息ついた後にタストニアへ恭しく礼を決める。
「本日はどういったご用件でこちらにお越しになられたのですか?」
「呼ばれたからきただけです。応じない手もあったんですが面白そうだから忙しいなか時間を裂いてきてやったです」
「え? オレが呼んだことになってるの? 別に呼んでないんだけど?」
さくっ、さくっ。すらりと伸びる白い足が砂を踏む。
歳のほうは13から4といったところか。そもそも天使の年齢なんぞ見た目で計れるものではないが。
歩むたびベル状に開いた花弁の如きスカートも伴って揺れる。そうしてミナトの前で立ち止まる。
「オマエが聖都にクソ上司――もとい選定を呼びだしたとかいう調和と調律のお気に入りですか」
「おおすごいぞ。なんの話してるのかまったく頭に入ってこなかった」
あまりに専門用語が多すぎて理解に遅れてしまう。
とりあえず調和の天使カナギエルと調律の天使ミナザエル、双天使の話ということだけはわかった。
「ふむふむ。これはこれはなかなかです」
「あ、あの……なにか?」
触れてみたり、嗅いでみたり。
タストニアは、唐突にミナトの顔や身体をくまなく探っていく。
対してミナトも少々悩ましい事態に陥っていた。
――前にタストニアがいて背中にはレティレシアが……!
これでは前門の虎後門の狼ではないか。
背には怯えるレティレシアの蠱惑な感触が押しつけられている。
さらに前からはタストニア。どちらともから感じる体温や女子特有の甘い香りで脳が揺すられる。
そうしてしばし観察を終えたタストニアはゆっくりと身を離す。
「オマエそうとう変な状態になってるです。本来人種族はもたないマナと人種族特有の蒼力がどっちも宿ってるです」
「それはおそらく呪いのせいかな。いまオレの身体にはフレックスを封じる呪いがかけられてるらしいし」
「……呪いとはずいぶん穏やかじゃねーです。ありがたい天使のワタシが話くらい聞いてやらないこともないです」
背に隠れ潜むレティレシアの身体がひく、と震えるのがわかった。
呪いをかけた張本人からすればこの話題は避けたいに決まっている。
「おいオマエ口滑らすんじゃねぇからな……! 絶対に絶対に天使の前で余の名前だすんじゃねーぞ……!」
レティレシアはもうなりふり構っていられないらしい。
振りなのかと思ってしまうくらい怯えてしまっていた。
――さすがにここまで怯えてるのに意地悪するのは趣味が悪いか。
あの居丈高なレティレシアが縋るなんてあり得ない。
つまりそれほど天使と関わり合いをもちたくないのだ。
ミナトは、なんとなく置きやすい位置にあるタストニアの頭に手を添える。
「ほう? これはなかなかの無礼です。乙女の頭に許しなく触るとはいい度胸です」
話題逸らしのつもりだった。
が、どうやらお気に召さなかったらしい。
ミナトはしっとりと触り心地の良い頭部から「あ、ごめん」乗せた手を離す。
「いい位置にあったからついうっかり。機嫌を損ねたなら申し訳ない」
「別に止めろとまではいってねーですただびっくりしただけです」
そう言ってタストニアはつま先立ちになって翼を羽ばたかせた。
どうやら好意的、あるいは好奇心が旺盛な性質らしい。相談にも積極的に乗ってくれるようだし表情が変わらないことを除けばかなり親しみやすい。
とはいえこのまま放置していてはそろそろレティレシアの胃に穴が開きかねない。さきほどからついぞぜぇ、ぜぇ、という荒い呼気が届いている。
「ところでタストニアさんはなにしにきたんだい?」
思い切って踏みこんでみる。
すると彼女はほっそりとした肩と翼の先をひくっ、と揺らす。
「おっと。こっちも暇じゃねーですそろそろ本題に入るとするです」
さすがにぶらっと遊びにきたというわけでもあるまい。
タストニアは、ひたひたと砂に素足を埋めながらそちらへと向かっていく。
「おいそこのオマエに天界へ昇る許可がでたです」
「……あ?」
寝耳に水とはまさにこのこと。
他人事とばかりにそっぽ向いていたルハーヴの欠伸が止まる。
「2度言わせんなです。西方の勇者ルハーヴ・アロア・ディールに英雄として天界へ入る許可が下りたです」
場にどよめきとも違う鮮烈な動揺が疾走った。
救世主たちは狼狽え、レティレシアでさえ目を皿のように丸くする。
しかしもっとも衝撃を受けているのはそのどちらでもなく、彼。ルハーヴ自身だった。
「ど、どういうこと、です、か……? どうし、てこの俺に……?」
唇が震えて言葉を刻んでしまう。
愕然としながらもハッキリと感情を紡げていない。
しかしタストニアは無表情かつお構いなしに淡々とつづける。
「西方の勇者としての功績は天界へと至るに十分な栄誉です」
「じゃ、じゃあなんで……!」
「簡単です。オマエは死の淵に生前で重ねた西方の勇者としての務めを呪ったです。だからオマエは天界へと至れず冥府によって浄化される運命を辿ったです」
死への恐怖か、仲間への失望か。あるはそのどちらも。
ルハーヴは死の直前に憎悪に呑まれて森羅万象へ恨みを重ねた。
つまるところ己そのものを否定したということ。仲間も、勇者としての立ち振る舞いも、己の生きた理由のすべてを。
「だけどいまは違うです全然まったく違うです。なんの因果か浄化されるはずの魂が現世に繋がれてやがるです。そしてその最中に己が西方の勇者として築き上げたモノを思いだし、呪いを解きやがったです」
少なくとも人間の世界であれば死とは終わりを意味する。
だが、この世界に創造されたこの領域は別だった。棺の間とは世界に例外を作りだし魂を補完する。
そうしてレティレシアという主の手から得た死の先で、ルハーヴは罪を禊ぎ、生前に解呪に成功した。
「そんなバカな話聞いたことねぇ……! 天使が1度見捨てた魂を再回収するなんて歴史上でも類を見ねぇ奇跡に等しいぞ……!」
どうやらレティレシアにとっても予想外の顛末のようだ。
声を潜めながらも驚愕に打ち震えている。
「待て――まさか!? さっきの試合がきっかけとなって西方の勇者の運命を変えたってのか!?」
「冥府の祖母の娘、ご名答です」
「――うッ!!?」
再びレティレシアはミナトの背後にそそくさと身を隠す。
しかしタストニアはすでにこちらに気づいている。というより元より気づいて無視していたのかもしれない。
「そうビクビクすんなですオマエのやってる行動は天界に筒抜けです。創造主の魂の欠片を掠めとるという罪は創造主自身のご意志によって見逃されてんです」
「そうかよ。そりゃずいぶんとお心が広いご判断をなさるじゃねぇかよ」
「天界と天使の意思はオマエをいつでも抹殺可能ですから調子に乗んなです。創造主が許してなけりゃワタシだっていますぐオマエの首を叩き落とすです」
タストニアの小ぶりな頭が横にもたげる。
直後に空気が舞う。大気がビリビリと振動する。1点より肌を刺すが如き波動が剛と放たれた。
とてもではないがただの少女から発される圧ではない。強がっていたはずのレティレシアも顔を歪めて身をすくませる。
表情が変わらぬことも相まって異様異質だった。しかも放たれる感情は、明確な殺気。
主が是としていても部下が是としているとは限らない。少なからずここにいる天使は否を明らかにしている。
「しかし今日はそんなことどうでも良いです。ここへきた理由はそんな些末な事象とは比べものにならないです」
すっ、と。殺気が風のように吹き抜け、去った。
タストニアはもたげた首のままルハーヴのほうを見つめる。
「創造主が直々に勇者の意思を留めろと布告されたです。墜ちた魂を回収する行為なんてものは例外中の例外です。だからこれは大陸世界に敷かれた道理そのものを覆しかねない特異点になり得るです」
相も変わらず感情が読めぬ。
しかし口調は滑らか。それでいてどこかウキウキと薄い胸を弾ませているようだった。
「で、くるです?」
卒のない単刀直入な問い。
当然レティレシアにどうこう語る謂れはない。
そして集う救世主たちもまた固唾を呑んで彼を見守る。
「……考えさせて欲しい」
躊躇や戸惑いがなく、真剣な顔立ちだった。
槍を携えたルハーヴは、タストニアを真摯めいた勇壮さで見つめる。
「俺はひとつだけどうしても見届けてぇもんが出来ちまった。もし決定がいますぐってんなら俺は天界にはいけねぇ」
「ほう?」その高い吐息は感嘆か、失望か。
「天使様直々に天界へお誘いくだすったことは身に余る至上の幸福といっても過言じゃねぇ」
「ならいますぐこられない理由を聞いてもいいです? いちおうこっちとしては創造主からの通達なんで下手な理由なら侮辱ととるです?」
「この棺の間には仲間や友がいやがるし、お姫様には返しきれねぇ恩があんだ。だからせめてきっちり責任を終えて後ろ髪引かれねぇ身体でそっちに向かいてぇ」
区切りをつけてから天界へ向かいたい。
もし反故にされるのであれば天使の提案を拒絶するという意味に他ならない。
なにより握った拳が彼の決意表明だった。
しばしの膠着。誰もが天使が声を発するのを待つ。
そしてタストニアはちら、とミナトを見てから視線をルハーヴへと戻す。
「おっけーですおっけーです。夜逃げみてーにいますぐ覚悟と荷物まとめてでてこいっつってるわけじゃねーです」
「これはこっちの一方的な我が儘だ。足を運んでもらった上に頼みまで聞いてもらって本当に申し訳ねぇ」
折り目正しい騎士然とした本気の礼だった。
しかしタストニアはすでに彼のことを見ていない。
くるり、と。踵を返すと生白い太ももの根元辺りが明かりで晒される。
「帰るです。またきたるべきときにくるです。それまで目一杯励むです」
レティレシアを庇うミナトを見つめながらしっかりと、そういった。
そしてまた現れたときと同様に、音も気配もなく、存在が喪失する。
「帰った……のか?」
「た、たぶん?」
天使の帰還とともに緩急するのがわかった。
ミナトとヨルナだけではない。この空間全域で力ない吐息がそこらじゅうから漏れでる。
あまりにも現実から逸脱するような事態だった。人間のミナトでさえ実感するのだから大陸種族なら倍は疲弊していることだろう。
「特異点、だと?」
しかしこの期に及んで振るわない者がいる。
未だミナトの背後に隠れ潜みながら背を丸くかがめ両手を垂らす。
「そうか……つまりそういうことか……これが、これがあの子の繋いだ……」
ぶつぶつ、ぶつぶつ。さながら呪詛。
これにはさすがのミナトも心配になって身をかがめる。
「おーいもう天使はいないから元気だせって? いつまでオレをエンジェルバリアーにしてくれて――」
その刹那に呼吸が止まった。
身をかがめ覗きこもうと前のめりになった体勢のままで、時が止まる。
見開かれた眼前に彼女がいた。遅れて蠱惑な香がなによりも近く鼻腔いっぱいに広がった。
濡れた感触が重なって、互いの鼻息でさえ混ざり合う。
「レティレシア!!? なにを!!?」
ヨルナの驚愕する声でさえ遠い。
心臓の音が、潰れる胸の感触の奥で、肌と肌を通し、共鳴する。
艶めかしく舌と舌がうねり、そして混じり合う。
――これは、血の味!?
彼女の首筋から香る甘い香りに鉄と唾液の味が口内で溶け合う。
許可のない一方的なまぐわいだった。強引な形で互いの唇が重なる。
「ン、ァ……フ、ぅ、れるっ……」
1秒、1秒、1秒。まだ終わらない。
レティレシアはかすれるような甘い吐息を漏らす。
ミナトから身を離そうとするも、離してくれない。彼女はいっぽうてきに指を搦め身と身を強引に寄せる。
そしてねっとりとした官能が10秒ほど経ったころ。余韻もなく唇から押しつけられた濡れた感触が離された。
「余の血とはじめての異性接吻をテメェくれてやった。だからこの2つを生け贄とし契約に記述を追加させてもらう」
頬は若干ほど赤らみ、瞳は血が浮いたたように滲む。
レティレシアは、噛み切ったであろう唇の端から強引に血を拭う。
「オマエが剣聖との決闘に敗北したら心と体、魂に至るすべてが余のモノとなる。そして対価は余の心と体、血の一滴にいたるまでオマエの所有物になる」
脳まで支配されるような濃密なキスだった。
視界がスパークしそうなほどの混乱。唐突に女という異性が遺伝子に割りこんでくるかのよう。
こんなのはもはや暴力でしかない。唇の感触、指先の震え、血濡れた舌の味、濃い汗の匂い。
「い、いったいなんの真似だよ!? 頭でもおかしくなったんじゃないだろうな!?!」
ミナトは、なにも考えられなくなっていた。
唇に舌を這わして鬼気と笑む女を見上げて、恐怖する。
生々しい余韻を覚えながら腰から砕け落ちてしまう。
「もし剣聖との決闘に負けたのなら余とオマエが婚姻するということで契約を成立とする」
飛びだした婚姻という単語に震えすくみ慌てふためく。
場の反応は総じて戦慄めいていて、騒然だった。
勝利を得て、奪われる。
天使の降臨なんてどうでもよくなるくらいミナトの記憶に深く深く刻まれた瞬間だった。
○ ○ ○ ○ ◎




