【※新イラスト有り】286話 ひた走りし者《Blue Soul》
「こんの餓鬼がァ……!」
転送門を抜けた先にふたりは、いた。
伝統ある円形を模した闘技場で武器を手に対峙している。
片側は先ほど転がりこんできたドワーフで間違いない。
彼は一族のなかで化け物染みた体格ではない。しかしさすがはこだわりの種族といえるだけことはある。全身のあらゆる筋肉は引き締まっており精巧な美であるかのよう。
手にする斧だって傑作とまではいわずとも業物のはず。ドワーフである彼自身が好んで扱う一点物。
「今日はほとほど厄日だぜ。女捕まえるのをしくるわ、餓鬼に不意を打たれるわでさんざんだ」
救世主であるのだから実力者であることに変わりはない。
それなのに。レティレシアの血色をした瞳が揺らぐ。
「――っ!?」
なぜ、なぜ、どうして。言葉にすらならない驚天動地。
頭に浮かんでくるのは疑問符ばかりで、一向に収束に向かうことはなかった。
少年が剣を構えながら佇んでいる。
「…………」
穢れ淀みのない佇まいだった。
剣身はさながら真珠のように可憐な輝きを秘める。光の当たりかた次第で7色に輝いている。
そしてなによりレティレシアの眼を眩ませたのは、身なり。
少年は、無頼なれど実力者のドワーフを相手に傷汚れひとつとしてなく、佇んでいるのだ。
「1本勝負なんて塩っ辛いこというつもりじゃねぇよなぁ?」
「付き合ってもらってるのはこっちなんだし、お互いの気が済むまでやろう」
「吐いた唾ァ呑むんじゃねぇぞ。後から泣いてせがまれちゃ目覚めが悪くなっちまうからなァ」
軽薄男はかなり冠を曲げているらしい。
片手斧の構えを変えて殺気立つ。すでに眼は血走っており歯止めがきくような状態ではなかった。
それもそのはず。この場にはあまりにも彼の恥を嘲笑するものが多すぎる。
「なにちんたらやってんだ! そんな餓鬼とっとと泣かしてママのところに帰らせちまえよ!」
「油断して1発もらうとかダッセェなマジでー! アタシらだって嫌なのに巫女様がアンタにころっといくわけねーだろ!」
やいのやいの。すでに野次馬がぞろぞろと群れていた。
現状救世主たちは祭り事に植えている連中でしかない。
そんな暇な阿呆どものなかでこれほど愉快な見世物もないだろう。研鑽の場はとうにイベント会場と化す。
しかし対峙するふたりだけは脇目も振らず睨み合う。
「このさい雑音は無視して神妙にやろうぜェ。久しぶりのダウンくらって炉に火が点きかけてやがるんでなァ」
「…………」
彼からの返答はなかった。
返事をする必要はないということ。少年は言葉の代わりに剣を脇に固めて構えをとる。
それを見た男はニタリと口角を引き上げた。
「てめぇは戦場に武器を構えて立ってんだぜ。ならせめて死なねぇていどに痛めつけられるくらいの覚悟は固めておけよ」
より前へ、より前のめりへと姿勢が変化していく。
180cmはあろうかという恵まれた身体を前傾姿勢へと移行させた。
さながら狩りをする獰猛な獣。対峙する相手の喉笛を噛み砕くのは牙の代わりに幅広の斧か。
そして十分なためを作ってから男は、後ろ足を蹴りつける。
「ラアアアアアアアアアア!!!」
蹴られた砂が舞った。
彼の立っていた砂は窪み、観客たちが砂を浴びて咽せる。
獰猛な咆吼が飢えを発する。尋常ではない脚力で獲物の元へと間合いを詰めていく。
「……ふぅぅ」
だが、彼は臆すどころか怯みすらしない。
それどころか瞬きさえしないで獰猛な獣の到達を待つ。
「おいあの構えって、まさか!?」
救世主のひとりが感づいた。
ひとりから、またひとり。異変に気づいた者たちの動揺が波紋の如く広がる。
「け、剣聖の構えとうり二つじゃないのか?! まさかこの数日であの剣技を習得したっていうのか?!」
「弟子になったからってそんなバカあるわけがないでしょ! まだ入門して半年も経ってないんだからあんなの猿まねに決まってるわ!」
彼の所作は、とても良く似ていた。
傍観する救世主たちが感づくほど、あまりにも酷似している。
バカをいうな。龍の剣技を数日如きの鍛錬でマネできるはずがない。と、いうのが刮目する救世主たちの総意。
しかし次の瞬間誰もが己の愚考を知る。
「喧嘩売る相手を間違えたなアアアアアアア!!!」
振り上げられた斧が大気を薙いで落とされた。
しゃああ、と。火花が道筋を作って横に流れる。圧倒的かつ巨大な力が滑るように逃がされる。
だが男も傍観しているだけではなかった。そのまま膂力を利用して2の手へと流れをつなげる。
「1発受け流したところでこっちにはいくらでも打つ手があるんだぜッ!!」
隆々とした猛りとともに放たれるのは必殺の刃だった。
しかし届かない。またも斧刃は剣身を滑るばかりで力の方角を失う。
舞の太刀。流れる剣閃。流麗な体捌き。風そよぐ銀光。
それは紛うことなき剣聖のもちうる技術、リリティア・F・ドゥ・ティールの剣技そのものだった、
だが明らかな荒削りでもある。真が剣聖だとするなら彼の技術は猿まねも猿まね。
「ッ――……っ。半拍子リズムが遅れたか」
強烈な連続攻撃だった。
その1撃を辛うじて受け切れずに弾かれてしまう。
あまりの余力に全身が吹き飛ばされる。砂を引きながら3mほど靴裏をすり減らす。
「へっへっへ……! まぐれぶち当てたくらいでいい気になるんじゃねぇぞ……!」
「じゃあ2発目からはまぐれじゃないってことになるよな」
「もし決められるってんなら認めてやるよッ!!」
再び互いの間合いを計りながら体制を整えた。
手を抜いているどころか救世主のほうから全力で向かう。
当たり前だがメインは先の話だからか魔法や殺しの手法は用いていない。あくまでこれは試合であって死合う戦ではなかった。
しかしその上で拮抗している。気に食わない。奥歯がぎりりと軋んで鼻筋に険が寄る。
「なに正々堂々と戦ってニヤニヤしてやがる……! そいつはこの間までただ地べたを這うだけの雑魚だっただろうが……!」
信じがたき。あり得ない光景が広がっていた。
種族格差も断然ドワーフが上なのはいうまでもない。それなのにまともに応対し適応することの非現実さ。
胃の腑が溶岩で焼かれて裏返りそうなほど。目の前の光景はレティレシアにとってただとにかく不快でしかなかった。
なのに救世主どもときたら盛大な祝い事に群れるかの如く、ありえないを享受しているときたものだ。
――どうしてこんなことがあり得る……! ここは余が長年を費やして創造した城だぞ……!
主の苦心を察するものは、どこにもいない。
救世主たちは戦いの動向に一目散といった様子。矢継ぎ早な野次と歓声を上げている。
「受けた恩は100倍にして返してやるのが戦場の掟だぜェェ!!」
そしてとうとう焦れた男のほうから動いた。
ニヤけている。が、牙を剥く。
戦意に満ちて肌が紅潮し、勇壮な双眸が敵を逃さない。
「その細っこい剣ごと心をぶち砕いてやるよ!!」
斧による大ぶりを空かす。
薙がれた大気がびょう、と揺らぐ。
そこへさらに回転を加えての痛烈な1撃を見舞うつもりらしい。
「………………」
対して少年のほうは、瞬きひとつしていない。
それどころか見開かれた黒い瞳さえ微動だにせず。
構えながらただ佇みつづけていた。
――あれは……なにをやってやがる?
レティレシアは、その不可解な挙動に違和感を覚える。
戦闘によって培われた勘とでもいおうか。兎に角彼の行動に意が見いだせない。
怯えているわけでもない。臆すことさえない。しかし切っ先を構えたまま襲いくる相手を全身全霊の集中で見据えている。
「食らいやがれええええ!!!」
オークの脳天でさえ割る渾身が猛風の如く振り下ろされた。
直後。少年はほぼ反射的な挙動で受け止める。
受け、流す。だが先ほどとは比べものにならぬ質量に押されより明確な火花が明滅した。
「オオオオオオオオオオ!!!」
ここで初めて彼のほうからのアプローチだった。
一丁前な叫びを上げながらドワーフの胸に向かって突進を決める。
「――ぬぐっ!?」
男のほうは、あまりの無謀さに面食らう。
しかし驚きはしても大したことはない。子供1匹がぶつかったところで身長差は歴然である。
すぐさま余裕をとり戻した軽薄男は、明らかな嘲笑気味に口元で半孤を描く。
「おやおやァ? お兄さんと押しくらまんじゅうがしてぇってかァ?」
救世主たちからどっと含み笑いが漏れた。
戦いの場であってはならぬ明らかな判断ミス。体格差を考慮せず、その上間合いはゼロ。
さらには正面きっての鍔迫り合い。誰の目から見ても勝ち筋のある勝負ではない。
「へへへェ! まさかこんな半端者の初歩的で幕を下ろしちまうとは……」
獲物を手元に置いて舌なめずり。
だがすぐに気づかされる。
「……なんだと? これはいったいどういう魔法だ?」
押し切れない。
斧と剣の鍔部分がピタリと張り付いてぎちぎち警告音を奏でていた。
しかも僅かにだが巨体のほうが僅かに足をすり引いているではないか。
「童のぶんざいでずいぶん身体の使いかたが上手くなったのう。きっちり腰が入っていて背にも一本杭が伸びちょる」
「鍛錬の成果。姿勢と体幹が効率よく筋力を発揮できてる。それに比べて相手は身長の低い相手に猫背で身体の軸が崩れてしまっている」
巨体の老父が白髭を絞るようにしごいた。
その鉄腕の肩にはちょこんとメルヘンな少女が騎乗している。
レティレシアはたまらずいつの間にか横にいる老父と少女へガンを飛ばす。
「テメェらがあれを仕立て上げたってのか?」
どす黒く渦巻くが如き低い唸りだった。
しかし双腕のゼト・E・スミス・ロガーは、一瞥すらくれず戦いの行方を見守るばかり。
白く霞む眼を細めながら銅色の腕を軋ませる。
「ワシはなぁんもしちょらん。リリィの弟子に唾つけったらなにいわれるかわかったもんじゃねぇ」
岩を転がすみたいな渋く屈強な声色だった。
伝説の鍛冶師とはいえレティレシアにとっては救世主のひとりにすぎない。
圧を強めながらまくしたてることくらいは日常と同義である。
「嘘ぶっこいてやがるわけじゃねぇだろうな? どうせ負け確だとわかっていて餓鬼の側に傾く意味がわかんねぇぞ?」
「なぜ魂体であるワシらが冥府の巫女に虚偽を語らにゃならん。ヨルナ辺りに引っ付かれて頼まれたのであればやらんこともないがな。こっちからわざわざ半死半生の童を手助けする義理も道理もねぇや」
彼に嘘をつく理由がないのは真実だった。
これにはレティレシアも口をつぐむ。納得せざるを得ない。
呪いを継承したあの少年は棺の間の仇に近い存在である。救世主たちはいますぐにでも胴首を別れ違えさせる容易ができている。
半年しか繋がらぬ貧弱な風前の灯火。エルフ女王との制約がなければその命でさえ刹那と化すだろう。
――白女王の雌豚め。余計なことしやがって。
腹にすえかね思わず爪を噛む。
するとそんなレティレシアを眼帯隻眼の銀燭が見下ろしている。
エリーゼ・E・コレット・ティールはゼトの肩上でぬいぐるみをぎゅうと抱きしめた。
「でも私のほうはたまに……」
あまり主張の強いタイプではない。
そのか細くも漏らした声は、他の歓声によって掻き消された。
あちらの拮抗した戦況がいよいよ動きだそうとしている。熱気が舞う。
「やるじゃあねぇかよ! 俺ぁドワーフにしては小柄なほうだが押し合い圧し合いで負けたことはねぇぜ!」
己の身体ごと力任せに斧を押しこむ。
ここまできて我武者羅。しかしそれで良いのだ。なにしろ種族差として勝っているのだから。
辛うじて踏ん張れていた少年の足がじりじりと砂に埋もれ、退いていく。
「ありゃ終わったな。洗練された戦士相手に真っ当な勝負を挑んだこと自体が間違いだぜ」
固唾を呑む必要すらなかった。
レティレシアは興味を失うと同時に冷淡な目を細める。
残す流れを想像するのは容易すぎた。押され潰され乗られ閉幕。
あとは好きなだけ嬲られて砂のベッドで辛酸を舐めるのみ。
そして軽薄男はレティレシアの予想通りとうとう詰めにかかろうとしている。
「ヒュームていどの肉体が他種族様に勝てるわきゃねぇだろうがよォォォ!!」
咆吼のあと。
コンマ数秒ほどの刹那だった。
「……お?」
軽薄男の身体がぐらぁりと斜めに傾く。
均衡を保っていたはずの力が100と0になったのだ。
するとどうなるだろうか。軽薄男のもつ100の力は無を相手することになってしまう。
「しまっ――」
虚を衝かれ、巨体が崩れはじめている。
頭の位置が下がって徐々に地べたが近づく。
あわや転倒。と、思わせながらそのまま倒れるわけもない。
「小賢しい!!」
たまらず男は片足を思い切り踏みこむ。
前に傾きながら地がえぐれるほど踏みこむことで転倒を押し留めた。
その瞬間。狙い澄ましていたかのように少年は動く。
「――フッ!」
油断を誘うのは戦の常套手段だった。
だが、彼の振るうのは手にした剣ではない。
その7分裾めがけて鞭の如く振るう。
全体重をあますことなく支える男の足めがけて鋭くしなる鋭利な蹴りを放った。
「い”!!?!」
捉えた直後に男の口から泡が弾けた。
まるでバルーンを割れるが如き爽快な音がスパァンと響き渡る。
尻へ平手を叩きつけるような凄まじい衝撃音だった。救世主たち全員の鼓膜を由良がしたに違いない。
誰もが予想だにしなかった、蹴り。それも脛と脛を交差させるが如き脛への鞭の如き、蹴り。
「な、なにしやがった……?」
それだけなのに軽薄男は凍てつく。
全身をわなわなと震わせる。
己の蹴られた足を凝視しながらゆっくりと全身が傾いていく。
「どうして俺は崩れる!!? なぜ足の感覚がねぇ!!?」
立ち上がっては崩れ落ちる。
さながら赤子が覚束ない千鳥足で立ち上がろうとしているかのよう。
それでも男は立ち上がろうと躍起になって足に力をこめる。だが踏ん張ってさらに膝から砕けた。
「いまなにをしたかわかる?」
エリーゼの吐息を混じりに問いかけた。
するとゼトは鈍く喉をがならせ「……ふぅむ」鉄腕で髭しごく。
「脛で相手のふくらはぎを蹴ったように見えたがのう。しかしそんだけで歴戦の猛者が立てなくなるほどのダメージになるとは思えん」
レティレシアとて同じ見解だった。
彼は蹴っただけにすぎない。彼は蹴られただけにすぎない。どちらもただ一般的な状態だった。
なのに男は未だ砂の上で藻掻きつづけている。
エリーゼはしばし時を経て「なるほど」ぬいぐるみ抱き上げて口元を隠す。
「あの部分は筋肉や脂肪が非常につきにくい。だからたとえドワーフであってもそうそう鍛えられないところ。だからきっと足の内部へ衝撃が伝わってしまう」
「だから脛のように固いものが当たって直接神経に響いたってのか……?」
「あくまでいま考え得る仮定の話。でも彼が狙ってあの状況を作ったことだけは確か」
「カッカッカ気の毒にのう! あんのぼんくらめがあっちの世の戦術に煮え湯を飲まされたっちゅーことかい!」
狙って倒す。もしそれが事実ならば実力でしかない。
レティレシアは目の前に広がるあり得ないモノを受け入れられずにいる。
「な、なにが、どうなってやがる……? ヒュームていどの種族がドワーフを地べたに転がす……? 余はいったいなにを見ていやがるんだ……?」
なのに反抗しても止まめられなかった。
身体の奥からじわりとあふれる。指先足先にチリチリとした熱に触れる。
意識が夢現をたゆたうような心地よさがあった。そうして無意識下なのに口角が痙攣しながら引き上がっていく。
「いいぞ人種族! そのまま能無しの頭落として決めちまえ!」
「なにやってんだ! ドワーフがそんなヒョロガリ相手に負けてどうすんだァ!」
「次鋒は誰が行くか決めようぜ! そろそろ女がでていっても面白ぇな!」
救世主たちもレティレシアとまったく同じ感情を募らせていた。
沸きに沸く。先ほどまで以上に興奮状態となっていく。
一方的な勝負だと思えばとんだ大波乱である。見物するならこれほどの余興はあるまい。
まるで飽いて乾いたところに水を与えられたかの如き喝采が渦を巻く。
「すっごい大盛況。救世主側が劣勢なのに」
「だからこそじゃろうな。弱者が己を強者であると証明して見せたのじゃから認めるしかあるめぇよ」
エリーゼとゼトも心なしか融和な表情で行く末を見届けていた。
これではまるで児戯、遊びではないか。血の凍るような緊迫感のある勝負ではない。
棺の間の救世主たちでさえ人の子を認めつつある。
「まだ俺ァ負けてねぇ!! 剣聖の弟子だからって調子に乗るんじゃねぇぞォ!!」
ようやく男が立ち上がった。
だがまだだいぶ効いているのか片足がガクガクと震えていた。
そして少年ミナト・ティールは、はじめからなにも変わっていない。
「ああ」
短く応じながら身じろぎひとつすることはない。
あれほど弱かったはずの少年は、平然と戦場にて佇んでいた。
「勝手に幕を下ろしたりしないから安心しろ。だから……もっと上へ連れていってくれ」
詰め寄ってくる、恐ろしい速度で。
迫ってくる、圧倒的なまでに。
人の子はこの期に及んで微塵も負け筋を見てはいないのだ。
200年前もそうであったように。イージスの父がこの大陸に奇跡をもたらしたときと同様に。
「――キヒッ!」
血色の瞳が見開かれ愉悦を滲ませた。
彼は親友の力を内包した肉の塊だと思っていた。
だが、どうやら思い違いだったと知る。これほど面白いことはない。
「おいミルマ。あとでテメェの血ィ寄越せ」
しなやかに傍観していたミルマはふふと口元を緩ませた。
主がこれほどご機嫌なのだ。使える従者として半端な気持ちではないだろう。
「あら本当に珍しいことずくめね。龍の血液は鉄の味が濃くて好かないといってじゃないの」
「選り好みはやめだ。くたばってる場合でもねぇ。なんせここからは――」
少なくとも退屈しねぇ。
軽薄男と少年の戦いはもう半刻ほどつづいた。
片側が音を上げ、最後に立っていたのは、少年のほうだったという。
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