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BREVE NEW WORLD ―蒼色症候群(ブルーライトシンドローム)―  作者: PRN
Chapter.9 【盾の救世主 ―MESSIAH―】
262/364

262話 剣の誓い《Beyond the Pale》

ヨルナの師

弱者を底上げする


真の実力者


力を欲す


すべてをとりこぼさぬ

救うために

挿絵(By みてみん)


 空が黄を帯びて山間から卵黄の如き朝日が昇った。

 大陸世界にまた新たな夜明けやってくる。やがて種族たちは思い思いに目覚め今日という素晴らしい1日に感謝する。

 仲間へ呼びかけ冒険の準備を整える。寝ぼけた旦那を見送ってシーツを広げる。商品を仕入れて店の棚に陳列する。

 凍っていた時を動かす種族たちの朝は忙しない。今日という平穏が訪れたことを奥底に尊びながら活気づく。

 そんななか約束の日を迎えた一行は朝と同時にイェレスタムの街を発っていた。

 広大な空に360度から抱かれ、高度数1000mの寒気厳しい朝を泳ぐ。


「突然な呼びつけで悪かったな!」


 ミナトは風に巻かれながら声のボリュームを高めた。

 肌を叩くみたいな大気の壁が前髪をばたばた踊らせている。

 そうして暴風に煽られて落ちぬよう龍の首鱗に辺りにしがみつく。


「長距離移動だからって毎回レティレシアのところへいくわけにはいかなからな!」


『僕は暇してたし全然構わないよ。なにより決闘に勝って僕を行使する権利をもってるのはキミたちのほうだからね』


 人を乗せたスードラ・ニール・ハルクレートの特急便が朝を真一文字に横切った。

 長蛇の如き胴はゆうに100mを超越しており、鱗の1枚1枚が宝石の如く煌めいている。

 まさに空を衝く勢い。スードラは巨躯を柔軟にしならせながらぐんぐんスピードを上げていった。

 大陸最強種族と名高き龍は、他種の届かぬ遙か上空でさえ、威光の下に支配する。


『ところで向かう先はエーテル国領土の端っこでいいんだね?』


 共鳴するが如き響きが脳に直接送られてきた。

 風の暴れる音で耳はぼおぼおという雑音ばかりしか受けとらない。

 しかし彼からの《無声会話(テレパシー)》だけは、はっきりと耳を打つ。

 聡明な対話手段に対し、魔法の使えぬミナトは、腹から絞りだすようにして言葉を返す。


「スードラも見たことがあると思うけどとっておきのお宝がそこにある!」


『なんだってまたいまになってそんな場所に向かうんだい? 1人が寂しくなっちゃったのなら毎夜僕が抱きしめてあげるよ?』


 このさい軽口は無視するに限る。

 相手が女性ならば提案を受け入れるのも心惹かれるというもの。

 しかしこちらも雄であれば、あちらも雄。得られるモノが多いとは到底思えない。

 ミナトは、いまだ船漕ぎ寝ぼけるアクセナを小脇に抱え直す。


「野暮用だッ!!」




……  …  …  ……




 青き龍の背を借りて久方ぶりの大地に降り立つ。

 龍を呼びつけ降り立ったのは、エーテル国領土の端。

 辿り着いた一党らを待っていたのは、大規模な工事の光景だった。

 牧歌的な草原に堂々と我が物顔で横たわるのは、墜落をした鋼鉄の蒼き龍である。

 目的地として定め降り立った先には翼をもがれ哀愁漂うブルードラグーンが鎮座していた。


『もうこんなに修繕の用意が整ってるんだね』


「東が陣頭指揮をしているならこれくらいの手際は当たり前だ。それに1日でも急がないと残り3ヶ月で直せないだろうし」


 憑依状態だったヨルナは「よっ、と」ミナトの身体から抜けだす。

 薄く透けるような魂から一瞬のうちにして肉体を形成すると、鶴のような足で着地を決めた。

 最先端テクノロジーの集結された超科学の元には、大陸種族たちが群がっている。

 多種族が蟻のようにあくせくと荷を運ぶ。馬足、騎士、屈強なドワーフ、と。作業に勤しむ種に境がない。

 ヨルナは指で輪を作り覗きこむ。


「こんな光景は生まれてこのかた見たことがない。お城でも建ててるのかってくらい大規模な作業は前代未聞だよ」


 心なしか興奮したかのよう頬を上気させ、踵を上下に揺らす。

 修繕光景を遠巻きに見るなら祭りとよく似ていた。

 ちゃくちゃくと蒼き機体は種族たちの手によって木枠に囲われていく。


「前代未聞っていうならこの世界の種族からすれば飛行機なんて超過技術(オーバーテクノロジー)だろうな。合金、カーボン、ステンレス、アルミにタングステンとくればブラックボックスもいいところさ」


「よくわからないけど作り手としてはなんだか燃えてくるものがあるね! ミナトくんのいってる言葉の意味がまったくわからないけどさ!」


「大丈夫オレもまったくわかってないから安心しろ!」


 実体はミナトもヨルナとさして変わらない。

 なにをどうやって修理するのか、なんて。知るものか。餅は餅屋。こういう面倒ごとは大人に任せれば良いという決まりがある。


「ゆめっ!」


 モチラが唐突に駆けだす。

 先ほどまで眠たそうに目をこすっていたのに尾をピンと立てる。

 そうしてこちらに向かってくる影に向かって草原の草を蹴りつけ飛びついた。

 彼女の小柄ながらに猛烈なタックルが炸裂する。しかし受ける側も抱きとめながらくるりと回って上手に勢いを受け流す。


「モチラちゃん久しぶりっ!」


「ゆめー!」


 モチラを受け止めたのは、人。

 虎龍院(こりゅういん)夢矢(ゆめ)はひょいと幼い龍を抱え上げてしまう。


「ゆめ、ゆめっ!」


「あははははっ!」


 中性的な少年と幼龍の心温まる光景だった。

 可愛いと可愛いの合わせ技。捕まったモチラは夢矢の頬に触れながら尾を振り切れんばかりに振る。

 対して夢矢のほうも幼い龍にほんわかと陽気な笑みで応対していた。

 そうしてしばし触れ合うとモチラを地面に下ろしてミナトのほうを見る。


「今日くるって連絡が入ってたから待っていたんだけど早朝とは思わなかったよ!」


 ぴょん、と。夢矢は子兎のように両足を揃えて跳ねた。

 身にパラダイムシフトスーツをまとっていない。戦闘がないためノア用の制服で日常を過ごしているらしい。

 ミナトは、迎えてくれた友人にたまらず頭を撫でる。


「善は急げっていうくらいだからさ。ところで良くオレが到着したことがあんな遠くからわかったな」


「遠くからスードラくんが降り立つところを見たんだよっ! だから早く会いたくて走ってきちゃったっ!」


 女子と見紛うほどに麗しい無垢な笑みだった。

 夢矢は髪を乱されながらも抵抗するでもなく、くすぐったそうに目を細める。

 女性にしては短いが、男性にしては少々長めのセミロング。触れるだけで艶やかでふわふわとした感触が手に伝わってくる。


「またちょっと筋肉が厚くなったんじゃない? それに少し背も伸びた?」


「離れてたとはいえたった数日だしそう変わらないさ。あるいは……夢矢がちょっと縮んだか」


「あっ! いまさりげなく酷いこといったでしょ!」


 夢矢は、むぅっ、と白い頬を膨らませる。

 しかしすぐに砕けた笑みが咲いた。


「ジュンやリーリコちゃんもミナトくんに会いたがってたよ! 久しぶりに帰ってきたんだからちょっとくらい顔見せにいってあげてよ!」


 ミナトとて人の子で、独り立ちするにはあまりにも早すぎる。

 だからこうして友人との再会につい頬が緩んでしまう。

 しかしここは友と再会を祝する場ではない。


「そのうちな」


 友に気を利かせながら短く受け答え、船のほうに気をやる。

 木組みよって浮かされた蒼き龍は目覚めず。無残に両翼をもがれた機体では発つことは叶うまい。

 いくら種族たちの協力とエーテル国からの資金援助があってもタカが知れている。

 どう考えたって完全な修復はかなり苦しいはず。科学のイロハがない大陸世界では空に絵を描くが如き空想だった。


「それで、ブルードラグーンの両翼が直る目算はたったのかい?」


「一応の予定では……ね。大陸の子たちもがんばってくれてはいるんだけどすべてが順調かといわれれば……」


 ミナトの問いに夢矢は目を伏せた。

 表情にも陰りが差し声も調子が乗らず浮かない。


「翼の角度とか構造はAIで算出が済みだから設計図そのものはは完成しているんだ。だけどやっぱり素材の加工とかそのへんの科学的な部分がボトルネックになっちゃってるかな」


 ミナトは想定通りの事態に「……だよなぁ」前髪をくしゃりと握りしめた。

 決してルスラウス大陸の文明が遅れているというわけではない。発展する方角が違うというだけなのだ。

 その証拠にこの世界独特の独自文化が根づいている。食も、職も、工芸も、宇宙世界と比べて魅力的な部分は多く存在している。

 ミナトは作業光景を眺めながら頬を掻く。


「種族たちからしてみれば新未来への挑戦か。大陸種族にとっても新たなるステージに進む一世一代の大舞台だもんな」


「しかも大陸種族たちは僕らの世界の技術を大陸に流入させたくないらしいんだよ。だから技術的に厄介な部分は僕たち少数の人間の管轄になってるのさ」


 夢矢は女子と見紛う愛らしい微笑の眉を困らせた。

 なんともいえない複雑そうな表情だった。

 ミナトは、ヨルナにちらと目配せをする。


「革新的文化の飛躍は時として毒となり得る……ってところかね?」


 話題を振られたヨルナは肩をすくませた。


「そっちの世界の技術がこっちの世界に入りこむとそれだけで戦争が起こりかねないからね。もし1国に人の文明を分け与えたとすれば、多くの他国――ひいては他種族がそれを忌避して争いの発端となりかねない」


 決して難しい話ではない。少し長い目で考えれば当然のこと。

 科学世界の技術をこちらへ伝えれば文化侵略となる。多くの利が1国を養えば、それ以外の国に脅威となり得てしまう。

 その辺の(まつりごと)へ慎重になるのは人のみならず。きっと大陸種族たちも重々承知の上で修理への参加を希望してくれているのだろう。


「もちろん大陸種族たちも無茶な発展は望んでないらしいね。なによりこの世界の宗教がそういったものを拒んでいるだってさ」


「ダイナマイトからミサイルが出来るようなもんだな。あんなものが完成したら龍の飛ぶ空が狭くなりそうだ」


「僕たち作り手はある意味で導き手でもあるんだ。だから多くの命を救うのではなく奪う悍ましい兵器は絶対に作らないようにしてる」


 種を違える3人は感慨深げな視線を横たわる船に向けるのだった。

 文化とは学びという道のりがあって正常に機能するもの。学びの工程を無視すれば文化は方角を間違い……やがて崩壊する。

 なにより人の世が同じ道を辿ったのだ。マザーという超過技術を得た人類が間違えつづけたことを人類は知っている。

 過ちの螺旋は途絶えさせなければならない。

 

――いまならまだ手遅れじゃない。


 奥歯を噛み締めるミナトの脳裏に映るものは、ノアの魔女だった。

 彼女は確実に人類への報復を成し遂げようとする。

 ゆえに真実を明かさねばならぬ。人が作りし魔女は人に弓引き頂点に立とうとしていることを。


「そういえばミナトくんどうして突然帰ってくるなんてメッセージをくれたんだい? いま決闘に向けての修行ですっごく大変だって聞いているけど?」


 夢矢はふと思いだしたかのように前髪を巡らす。

 丸くつぶらな瞳が上背の高いミナトを見上げた。


「今日帰ってきた目的は、あれだよ」


 あれ。夢矢の問いに多くの言葉は必要ない。

 ミナトはおもむろに喧しい発端を指さす。

 あちらでは小さな騒ぎになっている。


「すっげえなぁすっげえなぁ!! なんだーこのデッケえカッケえのはぁ!!」


 すでに降り立った直後にはじまっていた。

 弾けんばかりの活気が幼子を中心に渦を巻いている。


「なんだーこりゃあ!! 蒼くてデケぇなあ!! これはまさかあの大陸に伝わる伝説の超巨大要塞かあ!!」


 まるではしゃぐ子供同然だった。

 ブルードラグーンを見上げるアクセナの瞳には期待と希望が満ちあふれていた。

 二日酔いでくたばっていたというのにその影もない。大きく開かれた眼は爛々と光輝いている。


「こりゃなんだぁ! あちしにもわからねぇデッケぇもんすっげぇなぁ!」


 まるでテレビで見た怪獣と出会っているかのよう。

 ビー玉の如き目が潤みを帯びて、純真な反応だった。

 策の効き目は、およそ上々の成果を上げている。アクセナは全身を使ってはしゃぎ、蒼き龍の虜になっていた。


「なにあれ? あの子もミナトくんの新しいお友だちなの?」


 初見の夢矢にとっては当然の疑問だろう。

 褐色肌のメルヘンな恰好をした幼子がブルードラグーンをしきりに絶賛している。

 しかも作業する種族たちに怪訝な眼差しを向けられても、まったく動じていない。


「よくあの土壇場でちび師匠の弱点とも言える材料を見つけられたね。確かに巨大造形が性癖レベルで好きなドワーフにあれを見せたらメロメロになるよ」


 ヨルナは、ミナトに向かって横目をくれ、ふふ、と口角を持ち上げた。

 すでにアクセナの行動は狂喜乱舞の域にまで達している。

 作業する他種族を押しのけ枠を潜り船に飛びつく。だらしのない顔で船体の表面に頬ずりを決めていた。

 ミナトはひとまずの安心を得て軽い吐息を零す。


「この世界にやってきて1番最初に見たものがオレをここに導いてくれたんだ」


「1番最初って……あっ!」


 心当たりがないわけがないのだ。

 あのヨルナとミナトがはじめて出会った場所にも、とてつもないものがあった。

 出会いの丘には、天を穿つほど巨大で伸びさばらえそそり立つ超大の剣が生えている。

 あれの存在こそがアクセナを口説き落とすための秘策だった。


「まさか墓剣(ぼけん)ヴェルヴァから師匠のこと!? 過去にやってきた人間のお墓をヒントにしたということかい!?」


「そこまで大層なひらめきじゃなかったさ。ただなんとなくヨルナのやっていた魔法は、アクセナからの受け売りだったんじゃないかと思っただけだよ」


 それ以外にもヒントはあった。

 老父から聞き及んだ癖の話。それと巨大なフォーク。

 ここまでくればおのずと答えは見えてくる。


「ともすればアクセナの使う魔法は物質の巨大化だ。しかもヨルナは師匠であるアクセナから無理矢理同じ魔法を教えこまされたんじゃないか、ってさ」


 初日にヨルナのマナが使い切られていたという点も鍵だった。

 あの日、ヨルナはミナトと出会う直前で、剣にマナを注いでいたとしか考えられない。

 世界を越えた特異点、イージス・F・ドゥ・グランドウォーカーの帰還を待つ、数百年にも及ぶ暇潰し。

 悠久の時に流されて、あの丘の剣は、あそこまで巨大に育っていたのだ。


「魔法名は、《ジャイアントキリング》といって、効果は君の想像通りさ。ちび師匠が私利私欲で生みだした異端の超魔法だよ」


 ヨルナの横顔には微かな哀愁が滲んでいた。

 帰らぬ者を諦めずに待ちつづけた彼女だからこそ思うことは多いはず。

 ミナトは、改めてこのヨルナという幽霊少女を真っ直ぐに見据える。


「なんでこっち側についてくれたんだい? ヨルナだってイージスの力をもっているオレを恨む権利はあるだろう?」


 すると彼女はうつむきがちにクスリと喉奥で笑う。

 平原をそよがす風が黒き漆黒の髪をはらはらとなびかせる。


「だってボクはまだイージスが生きているって信じてるからね!」


 とくり、と。ミナトの心音が高鳴った。

 そのいまにも泣きそうな柔らかな笑顔が視界に移る。なぜだか胸の奥がきゅう、と締めつけられてしまう。


「きっと帰ってくる。もし危ない目にあっていたとしたら同じ世界に帰ったキミがきっとなんとかしてくれる。だからボクはイージスとイージスが守り抜いたキミのどちらもを信じて待ちつづけることが出来るんだよ」


 ヨルナは目の淵に涙を溜めながら天を仰ぐ。

 すん、と高い鼻を鳴らしながら悲しみを零すまいと強がる。

 託されているのは紛れもない絶対の信頼だった。

 ならばミナトとしても友から注がれる信頼をとりこぼすわけにはいかない。


「勝って帰るさ。そして帰ってまたここに戻る。今度はちゃんとみんなが笑えるようにしてだ」


 決意を拳に宿し、ヨルナを置いて歩きだす。

 ここまで追い詰めたのだ。ならばあとは王をとりにいくだけとなる。

 決闘で勝たねばならない理由がまた1つ増えた。この世界でもっともはじめに縁を結んだヨルナの願いもその双肩に背負う。

 そしてブルードラグーンまで辿り着いたミナトは、大きく見上げて空に呼びかける。


「おーいちびっ子! ちょっと聞いて欲しいことがあるから降りてきてくれ!」


「だーれがちびっ子だー!」


 呼ばれたアクセナは数メートルという高さに臆せず落下してきた。

 スカートをばたばた羽ばたかせながら地面に着地を決める。

 ずいぶん堪能していたようだが、興奮冷めやらぬといった様子。火照った息で肩を揺らす。

 ミナトはそんな彼女へ手招きしながらそっと耳に口を寄せた。


「これ……()ぶぞ?」


 囁きを聞いた直後に異変は起こった。

 昂揚していたはずのアクセナの呼吸がピタリと止まったのだ。

 しかも揺らいでいた肩も、濡れていた瞳も、彼女のありとあらゆる動作がいっぺんに静止した。

 そして緩やかな巻き戻しのあとは、先ほど以上の興奮が返ってくる。


「や……やや、や――やう゛ぇえええなああああ!!?」


 サメのように尖った笑顔が高ぶりによって支配されていた。

 瞳も零れんばかりに剥きだし。両拳薄い胸の前に掲げながら有頂天といった感じにぴょんぴょん跳ね回る。


「どうやったら飛ぶ!? これどうやったら飛ぶんだーぁ!?」


 見た目の幼さと舌足らずなところが相まってまさに子供だった。

 アクセナは、オモチャをせがむみたいにして、ミナトの腕にしがみつく。

 ここまで蕩けさせればもうこちらの手中である。はじめから彼女に求めているものはただ1つきり。

 ミナトは、歓喜するアクセナの耳元にそっと吐息を吹きかける。


「オレが決闘で勝ったら間違いなくその時に飛ぶ。だからアクセナは決闘でオレが勝てるように鍛えてくれ」


 なにも嘘はいっていない、語るのは真実のみ。

 決闘で勝てば、帰るためにブルードラグーンは、飛ぶ。

 しかし負ければ残留を望む船員たちとの約束のため、飛ばない。

 これは決して嘘などという卑劣な手段ではなかった。景品を見せつけた上で行われる交渉術(ネゴシエーション)である。


「やるぅーーーーーーーーッッッ!!!」


 アクセナからの回答は、期待と希望がふんだんに散りばめられていた。

 高らかな空に即決が吸いこまれていく。

 これによりミナトに新たなる師が生まれる。

 斧動明迅アクセナ・L・ブラスト・ロガーという師の元でより精錬に磨き上げられていくのだ。

 新たなる地獄が待っているとは、露とも知らず。

 


  ○   ○   ○   ○   ○


最後までご覧頂きありがとうございました!!!!!

挿絵(By みてみん)


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