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BREVE NEW WORLD ―蒼色症候群(ブルーライトシンドローム)―  作者: PRN
Chapter.5 【両手一杯の花束を ―WORLDS Scenario―】
132/364

『※新イラスト有り』132話【VS.】超進化固体 石食いの怪魚 エヴォルヴァシリスク 9

挿絵(By みてみん)


進め


新世代ニュージェネレーション

その先へ


革命せよ

イマを

 目の前で横たわっているモノの正体はテレノアだった

 その身を挺した姿勢のままで地べたへと転げる。うつ伏せになってごろりと横たわっている。


「テレノア!?」


 ミナトは慌ててその身を揺らした。

 すると土に汚れた少女の目と目が合う。


「な、なんでッ!? なん、でこんな――」


 すでにテレノアの瞳から生気が失われていた。

 彼女がすでに呪われてしまっているのだと気づくまでそう時間はかからない。

 ジュンは、茫然自失と座ってしまったミナトの守護をするため間に滑りこむ。


「HEEEEOOOOOOO!!!」


「オオオオオッ!! 《不敵(プロセス)・ヘヴィα》!!」


 ヘックスの連鎖体を集結させた。

 そうすることにより突進してくるヴァシリスクの巨体を押しとどめる。


「グッ、くそ野郎が!? 一丁前に死体に化けてやがったってのか!?」


「ZERRRRRRRRRRRR!!!」


 必死になって押しとどめるも敵の膂力のほうが上回っていた。

 エヴォルヴァシリスクは血を吐き鮮血に鱗を濡らしながらも食らいつく。

 まさに死の物狂い。それだけにいままでとは比べものにならぬほど荒れ狂っていた。

 質量の暴力が《不敵》の壁に襲いかかる。

 ズゴンズゴンという執拗なタックルによって視界そのものが揺らぐ。


「GEEEEEEEEEEEEE!!!」


 紅き瞳を得た怪魚は猛りながら暴走していた。

 たとえ身が朽ちようとも目の前の獲物を狩ろうとしている。

 より凶暴な本能を剥きだしながらジュンの蒼き壁に向かって幾度と突進を繰り返した。


「このままじゃ俺のフレックスでもそう長くは耐えられねぇ!?」


「…………」


「おい!? ミナト聞いてんのかよ!?」


 決死の声でさえ届いていない。

 ミナトはテレノアの頭をそっと持ち上げて膝上に寝かせる。

 こんな状態だというのに小さいころ良く聞いた話が思い浮かんだ。チャチャが眠りにつくまで耳元で読んでくれた物語だ。

 眠りにつく姿は、まるで眠れる森の美女であるかのよう。


「……テレノア?」


 トクン、トクン、トクン、トクン、と。段階を経て奥底が高鳴っていく。

 眠る少女は生きているのかさえ安らかな顔をして眼差しを閉ざす。


「起きろよ、眠ってる場合じゃないだろう? なあ、なんで……こんな場所で本当に終わっていいのか?」


 ミナトはぼやりとした面持ちで鼓動を確かめるみたいに己の胸へ手を添えた。

 鼓動ひとつのたび不可解が重なる。なぜこれほど滾るのだろうかがわからない。

 いままで別れなんてもの珍しくもなかった。そのはずなのに滾って滾って仕方がない。


「民を導く素敵な女王になるのが夢なんだろう? 玉座レースに勝利してエーテル族のみんなに認められたいんだろ? ならこんな場所で眠ってる場合じゃないよな?」


 問いかけるも、問いかけるも。返事はない。

 テレノアは笑うことさえをやめてしまった。

 そんな彼女を映していると、テレノアを見つづけているだけで、狂おしくなる。

 ドクン、ドクンドクンドクンドクン。

 止めどない。限界を超越した鼓動が心の臓を突き破ってしまいそう。

 熱きなにかが肉を裂き皮膚を破り胸を貫いていく。もう少ししたら身体ごとなにかによって膨らみ張り裂けてしまいそう。

 そして意識可能な世界の裾に仲間たちの叫びが響く。


「ミナトォ!! 逃げろォ!!」


 その直後にジュンの構築した《不敵》が破砕した。

 押しとどめられていたエヴォルヴァシリスクが勢いよく彼の身体を弾き飛ばす。

 大柄に撥ねられたジュンは蒼き残影を引いて吹き飛ばされてしまう。


「――がハッ!?」


 戦場を囲う木へ背を強かに打ちつけた。


「ジュン!?」


 夢矢は一瞬そちらに駆け寄ろうとした。

 しかしだしかけた足を踏みとどめる。


「くっ――」


 夢矢はそちら側を見て一瞬くしゃりと顔を歪ませた。

 エヴォルヴァシリスクの進行方向には未だミナトとテレノアが残されている。


「ダメ!! もう間に合わない!! そっちに行ったら共倒れになる!!」


「それでもあのままじゃ2人とも死んじゃうよ!! それとも見捨てろっていうの!!」


「ッ、進めば3人になるだけ!! ここはもう……逃げるしかない!!」


 リーリコは、半べそになって進もうとする夢矢の手を決して離そうとはしなかった。

 確実に間に合わないことが――死が確定していた。だから彼女のとった現場対応の選択はなにも間違っていない。

 ただそれが彼女の本意かどうかは崩れて悔いた表情を見れば一目瞭然だった。


「ごめんなさい……! でもこうすることがきっとアナタが私に望むことのはずだから……ッ!」


 それでも夢矢は諦めきれず藻掻きつづける。


「いやだあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」


 喉が枯れるほど。悲痛な叫びが舞った。

 いままさに死に征く友へ送る手向けは、涙を散らし手を伸ばす以外ない。

 それを知っているのかザナリアは抵抗することさえ止めている。


「そ、そんな……聖女様がこんなところでなんて!?」


 その場にぺたんと尻を落とす。

 青ざめきった表情で凍えるみたいに唇を震わせた。


「ROROGEEEEEEEEEEE!!!」


 エヴォルヴァシリスクは血を吐きながら猛進する。

 紅き目の怪魚は大地を喰らいながらまるで嵐の如く荒れ狂う。

 顎を軋ませ、尾を払い、あらゆる物体をはね除けながらのたうち回った。

 呆気ないほど脆弱な人間をひねり潰すにはあまりに大仰すぎる。そんな渦中に呑まれたミナトとテレノアの2人は悲惨な結末を迎えようとしていた。


「……いい加減にしろよ……」


 火口となった言葉は、異常なほど低く、怜悧(れいり)だった。

 声色に恐怖もなければ感情の灯火さえない。発するというより湧きでたかのよう。

 ぼやり、と。怪魚を蔑む黒い瞳に蒼が混じ入る。


「OOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」


「……もしそれ以上もっていくっていうのなら……お前はいらない……」


 しな垂れるようぐらりと揺らしながら頭を持ち上げた。

 ミナトの瞳には煌々とした色が秘められている。

 それだけではない。その身にもまた巨大な変化が起きつつあった。


「第1世代の発露!? いえ……いったいあれはなに!?」


「まるで……空色の、蒼白?」


 リーリコと夢矢が息を止めるようにそう口にした。

 見開かれるよう剥かれた2人の目には、己のモノとは異なる別の蒼が映っている。

 ミナトの身には揺らがずの蒼白が沿っていたのだ。 

 その人の誰もがまとう蒼よりも目覚ましいほど白き蒼が発現していた。


「テレノアの思い、借りるよ」


 いっぽうでミナトのとった行動は、不利益かつ不都合で支離滅裂としていた。

 まるで壊れかけのブリキのようにソレへと手を伸ばす。

 ソレはテレノアがもっていた細剣だった。庇ったさいに手から零れて落としてしまっていたモノだ。

 拾い上げたミナトは、おもむろに左腕に巻いたフレクスバッテリーに重ねる。


「《破壊(ブレイク)》」


「HEEEEEEEEEEEEEEEROOOOOOOO!!」


 向かってくる巨悪に対し、真っ直ぐ照準を定めた。

 蒼白を宿した瞳は、毒々しい紅の瞳と、視線を交差させる。


「《効果(エフェクト)》」

 

 次の瞬間。バッテリーに添えられた細剣が消滅した。

 消滅した直後、剣だったものは光となった。蒼をまといし閃光がただ一瞬きらりと光った。

 すると蒼き閃光は敵の瞳と平行に発され、留まることはない。蒼き流線型から放たれた蒼き光が世界を横切る。


「R――……GA」


 横切る光に巻きこまれた怪魚は、轟音とともに横たわった。

 敵を貫いた閃光はそのまま森を抜けて彼方へと消えていく。

 目から尾まで真っ直ぐに小さな空洞が空いている。エヴォルヴァシリスクは、前頭部から尾まで、直径30cmほどの一切を失って生命を終えた。

 あまりにも刹那の出来事だった。時間が止まったまま動きだすまで静寂のみが森に委ねられた。

 残されたのは敵であったモノのの肉塊と、荒れ果てて全景の詳細すら失った花畑の凄惨さだけ。


「……ざまあみろ……部外者が……」


 そしてミナトは糸が切れたかの如く意思を飛ばした。

 最後に聞いたのは友の駆け寄る声と、『大変良くできました』覚えのない音だった。

 トドメを放った際、彼が思い描いたのは、流麗なる騎士の横顔だった。

 この大陸種族たちとまったく同じラストネームをもつ恩人の姿があった。



  ○  ○  ♪  ○  ○

※新イラスト紹介のコーナー


目隠し用もっちりもちもち

挿絵(By みてみん)

「ですう?」












というわけでこちら

『深遠なるかの異物。』様より描いていただきました!


最近出番が回ってこなくてぷんすこ杏です!

挿絵(By みてみん)


マテリアル3(14歳


挿絵(By みてみん)

マテリアル2(16歳



挿絵(By みてみん)

マテリアル4(16歳


胸囲の格差社会 IN スペース

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