表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/36

32.組合の偉い人たち

「はい。お二方は討伐依頼を受けられて、街の外へ出られました」


丁度リジーさんのところが空いたので、リジーさんに二人が受けた依頼内容を聞く。勿論、俺が同じパーティだから聞ける話だ。他の冒険者が受けた依頼を組合(ギルド)の職員が外に漏らすことはない。まあ、ハンター依頼だと冒険者が己の強さを示すために自ら口にすることも多いが。


二人はグラスボアの討伐依頼を受けたようだ。街の西側。

今から行ってもすでに終わってそうだし、俺が途中からでも参加したらあの二人なら依頼料を分配してきそうなので向かうのはやめておこう。というか全く参加してなくてもナチュラルにイベリス、アルジェン、俺、パーティ運営資金の四分割にしそうだな? 俺は役に立てなかったとかそういうのでもなく本当に参加していないのだからその辺はキッチリしておかないと。


「そうだ、リジーさん。覚醒石……って知ってます?」


情報も集めておかなくては。

神様から集めるように言われたが、名前以外の情報がない。多分、石であろうことはわかる。神様ももうちょっと詳しく教えてくれてもいいのに。まあこれも含めてスキル入手の試練なのだろう。


「覚醒石……いえ、聞いたこともありません」


やっぱりレアなアイテムなのかな。そう簡単には手に入らなさそうだ。

仮に〈不老長命〉を打ち消すようなスキルがもらえるとして、そのスキルがもらえるのは何十年後何百年後になったりしねえか、これ。


「副組合(ギルド)長なら何か知っているかもしれません。聞いておきましょうか」

「ぐえ」


組合(ギルド)長。あいつかあ。

悪い奴ではないし、偉い人なんだけどどうにも苦手なんだよなあ。

まあしかし、そんなことも言ってられないか。


「はい、お願いし――」

「俺の話?」


背後からぬるりと男――副組合(ギルド)長・フェザーが現れた。

真後ろに立たれて声をかけられるまで気付きもしなかった。足音も、気配もない。怖っ。


「やあメイスケ君、昨日ぶり。ふふ、たった一日で美しさに磨きをかけたようだね……」

「……どうも……」


リジーさん曰く、フェザーの言う美しさとは人の善性らしいが……イケメンが恍惚とした表情で美しいだのなんだの言うのはキザったらしい上に怪しいことこの上ない。


「おおい、フェザー。どうした急に。何か問題か?」


そんなことを言いながらのっしのっしと身長が二メートルほどもありそうな大男が現れた。

跳ねた赤毛を後ろに流し、露わになった額には傷がある。明らかに体格が良く、近くに立たれると彼の影の中に自分がすっぽりと収まってしまいそうなのに、不思議と威圧感はない。朗らかな表情がそうさせているのだろうか?


挿絵(By みてみん)


組合(ギルド)長、お疲れ様です」


リジーさんが立ちあがり、一礼する。それを男は手で制し、座るように促した。

この人が、組合(ギルド)長。この組合(ギルド)で一番偉い人か。


「ごめんごめん、ギオケレス。メイスケ君が俺の話をしているのが聞こえたもんだから」

「メイスケ……ああ、こっちの彼が」


組合(ギルド)長が俺を見た。偉い人に品定めされてるのかと思うと緊張する。


「初めましてだな、メイスケ。俺はギオケレス。ここの組合(ギルド)長を任されている」

「あ、ど、どうも。初めまして、メイスケです」


リジーさん同様、立ち上がって礼をと思ったがやっぱりそれは制される。

あまり厳格な感じではなさそうだ。


「と言っても俺は組合(ギルド)のことはほとんどフェザーに任せきりだからお飾りの長なんだが」


組合(ギルド)長という肩書は望んでいたものではないようだ。組合(ギルド)長は顎髭をさすりながら気まずそうに言う。

見た目も組織のボス……と言うよりは一流冒険者って感じだから、裏で組織をまとめるよりも前線で活躍したいタイプなのかもしれない。


「いいんだよ、ギオケレスはそれで。自分が一番美しくあれる場所を知っている」

「へいへい。ま、組合(ギルド)長にしかできない仕事もあるし、最低限それだけは片付けとくぜ」


組合(ギルド)長はフェザーを軽くあしらう。付き合いが長いのかな。


「メイスケ、フェザーはこんな奴だが……悪い奴ではないんだ。適当にあしらっていいから、仲良くしてやってくれ。よろしくな」


組合(ギルド)長はフェザーの保護者か何かなの? よろしくされちゃったよ。

悪い奴ではないことはわかっている……んだけど。どうにも第一印象が良くなかったのを引き摺ってしまっているというか……。自分でもそれはどうかと思っているので組合(ギルド)長の言う通り歩み寄る姿勢を見せなくては、などと思う。


「それじゃな、リジー。頑張れよ」

「はい」


最後にリジーさんに声をかけて、組合(ギルド)長は去っていく。

労いの言葉をもらったリジーさんは嬉しそうに見える。彼女にとって組合(ギルド)長はいい上司みたいだな。


「そういえば」

「?」


フェザーが真剣な表情で俺に向き直る。顔が整っている分、そういう顔をされると迫力があるな。なんか良くない話なのではないかと身構えてしまう。


陽だまりの花(サンライトフラワー)の新入り君……まだ紹介してもらってないんだけど?」


良くない話だった。


「……パーティに新しいメンバーが入ったら副組合(ギルド)長に紹介しなければならない、とかそんな規則はないですよね」

「ないよ。ないけど、してくれてもいいじゃないか。俺と君達の仲だし。メイスケ君とイベリス君が選んだ子だから。それはもう……美しいのだろうね……?」


俺たちの仲、と言われるほど仲良くなった覚えはないし、シンプルに――紹介したくない。

アルジェンはとても良い子なのでフェザーと絡ませたくはないのだ。いや、フェザーは組合(ギルド)の偉い人なわけだし、今後を考えると仲良くなっておいて損はないし、実際紹介したところで美しいねとフェザーが喜ぶだけで実害はない……のだが、アルジェンがフェザーに絡まれて困惑する姿は見たくないというか。怪しい美形の男がアイドル系の美少年に美しい美しいと言いながら迫るのは教育にも良くないと思う。何の教育かはわからんが。


「……迷惑かけないなら、まあ」


結局、俺がどうこう思っても誰と交流するかはアルジェンの自由だし。

俺はフェザーのこういう……表現の仕方が苦手でつい過剰に反応してしまうわけだけど、イベリスは特に気にした様子もないし、組合(ギルド)長やリジーさんも華麗にスルーしていた。アルジェンも普通に受け入れるかもしれない。


ふふ、とフェザーが顔を綻ばせる。


「君は本当に不思議で、面白いね」

「……はあ」

「俺のことが気に喰わないって人間は、そのまま俺から離れるか仮面を被るものだけれど」


う。

俺がフェザーのことが気に喰わないっていうのは、どうやら顔や態度に出てしまっていたようだ。

ただの日本人であったころ……日本の、社会人だったころは表情を取り繕うのも得意だった覚えがあるが、これもまた身体が若返った影響、なのだろうか。


「……すみません」

「いや、それは当然のことだから構わない。君が面白いのは、それでも俺に対して真面目に向き合ってくれようとしてることなんだよね」


特にフェザーに対して何かしたつもりもないが、フェザーにとっては何か感じることがあった……のだろうか。全く実感はわかないが、どうやらフェザーは彼の言う美しさとは別のところで俺に好意的な感情を抱いたらしい。

え、何、フェザールートにでも入ったのか? 面白いって、そういう? 俺もしかして乙女ゲー転生でもしてた?

……と、ちょっぴり困惑からの混乱な俺だが、まあ要するにこれも神様から貰った服の良い印象を与える効果によるものだろう。大した事してないし。

それで副組合(ギルド)長と言う立場の人に目をかけてもらうのはなんだか申し訳ない気もするし……うん、これからはもう少しフェザーに対しての態度を改めよう。美しさを讃えてるときはスルーしよう。組合(ギルド)長にもよろしくされちゃったし。


「で、俺に何か用事があったんじゃない?」

「あ、そうだった」


まさかの組合(ギルド)長の登場と、フェザールート疑惑で忘れかけていた。フェザーはやれやれといった表情を浮かべる。


「ええと、覚醒石について調べていて。リジーさんから、副組合(ギルド)長なら何か知っているのではないかと言われて……」

「ふむ。覚醒石か……」


フェザーは口元に手を当て、考え込む素振りを見せる。癖だろうか、人差し指で唇を弄っている。その姿は悩ましげだ、とでも表現されるのだろうか。別の窓口にいる受付嬢がほう……と乙女の顔で溜息を吐いた。

人生においてイケメン爆発しろなどとは思ったことがない俺だが、フェザーの仕草は鼻につくのは何故だろう……。と、フェザーへの態度を改めようと思った矢先にそんなことを思ってしまう。こんなに引っかかるのはフェザーが見たところ同年代っぽいからなのだろうか。未だ少年と言える年齢のアルジェンや、俺よりも少し上に見える組合(ギルド)長も顔は整っているがこの野郎みたいな気持ちにはならない。


「三百年前くらいには貴族たちの間で流行ってたという石だね。家に飾っておくと運気が上がるとかどうとか。まあ、効果がなくて廃れたみたいだけど」


パワーストーンみたいな感じか? でも効果はなかったのか。

貴族たちの間……ということは結構お値段高めの宝石だったりするのかな。それを三つ……三つかあ。モフモフの素材で懐には余裕があるけども。

というかそもそも、三百年前に流行ってたってことは今はそうでもない、つまりメジャーではない、手に入りにくいってことなのではなかろうか。

うーん、先行き不安だな。


「詳しく知りたいなら王都図書館に行くしかないかな。俺が持ってる中には覚醒石について書かれている本はないんだ、ごめんね?」

「いや、大丈夫です」


そりゃここで全部済んだら楽な話ではあるが、流石にそう簡単にいくとは最初から期待はしていない。

それにしても王都。王都か。ハーマーズからどのくらい距離があるんだろう。

今、俺……俺たちパーティはここハーマーズの街を拠点に活動している。俺の都合で二人を振り回すのは申し訳ないので、王都に行けるとしたら暇が出来たとき……アルジェンが勇者として立派に魔王を倒し、世界に平和が訪れたら、少しお休みを貰って王都に出かけてもいいだろうか。

しばらくは後になるかな。まあ、今すぐ〈不老長命〉のデメリットを消すようなスキルが欲しいわけでもないし(人間の寿命の範囲内ではどうにかしたいが)、いいだろう。


そう考えていた俺だが、数日後、イベリスとアルジェンの三人で依頼や鍛錬に精を出していたところに思わぬ話が舞い込んできた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ