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29.今後の方針

俺たちは今後について話をすることにした。


「とりあえずの目標は偽の勇者一行に真っ向からぶつかって文句言えるくらいに強くなる、でいいのかな」

「文句……いえ、はい。そうですね。ちゃんと、胸を張って勇者だと言えるようになりたいです」


あとそれから、とアルジェンは言葉を続ける。


「聖女さま、今は勇者と一緒にいますけど、見かけるたびに顔色が悪くて、笑った顔も見たことがないし……もし無理して勇者と行動をしているようなら、解放してあげたいです」


アルジェンは聖女サラのことを気にかけているようだ。偽の勇者一行はアルジェンにとって決して無視できない存在なので、そこに属している聖女サラのことも気になるのだろう。

確かに彼女のことは俺も心配だ。シスター・ムエットにも頼まれたしな。


「だがそれは……簡単にはいかないだろうな」


しかしイベリスは難色を示した。


「無論、私も彼女が無理しているというのならばなんとかしたいとは思っている。だが彼女、聖女はこの国に伝わる予言で、魔王を滅ぼすその時に勇者の隣に立つとされる者。その条件に当てはまる者を国が他国からわざわざ呼び寄せたのだ。つまり、国の命令で勇者と共にいる」


国の命令……そう簡単に覆せるものではないということか。

どんなに体調が悪くても、どんなに疲れていても果たさなくてはならない聖女の使命……。それが勇者と行動を共にすること。

仮にマックスではなくアルジェンこそが勇者だと正式に認められたとして、じゃあ聖女はお役御免で国に帰らせよう、とはならないよな。


アルジェンの顔がみるみるうちに暗くなる。


「ま、まあ。アルジェンが勇者として認められれば彼女のすぐ傍でサポートすることができるし、身体のことも俺の回復術で少しは楽にしてやれるはずだし、」


ん? あれ? 言ってて思ったが、このままアルジェンが強くなって勇者として認められたとき、俺たちはどうするつもりなんだ? 何かナチュラルにその時も一緒にいるような発言をしてしまったが……。

イベリスを見る。イベリスは真剣な表情で俺を見ていた。ああ、つまり、俺もこの場のノリではなく、真剣に考えろということだ。

でも多分、俺の心は決まっている。イベリスも同じ気持ちだと思う。

だって、魔王なんてものがいたら、みんな笑顔になんてなれないだろ?


「――だから、一緒に強くなろう、アルジェン」


どのくらいの努力をすればいいのかなんてわからない。

だけど、この勇者と同じように、目の前の壁を越えて、前に進んでいきたいと思う。


「……はい!」


アルジェンはぎゅうっと握りこぶしを作って、気合十分に応えた。


「じゃあまずは、アルジェンがどのくらい戦えるか知りたいな。武器は剣だよな」

「はい! 剣の扱いは一通り、おじいちゃんに教えてもらいました!」


イベリスに促され、アルジェンは何度か剣を空に向かい振ってみる。俺は素人なのでよくわからないが、重いだろう鉄の剣を普通に振り回しているし、姿勢が崩れる様子もない。一通り教わった、というのは嘘ではないのだろう。

イベリスはアルジェンの剣のクセを一目で見抜いたようで、何やら指導している。イベリスも剣を使うから、師匠にはもってこいだな。ただ今後のパーティバランスを考えるとイベリスは他にスキルを持っている大剣か斧のパワータイプに転向するのもアリなのかも……。


「っと、そうだ。俺たちは陽だまりの花(サンライトフラワー)っていうパーティを組んでるんだけど……。アルジェンも冒険者登録してるんだよな。今後一緒に行動するならパーティに入っておいた方がいいのか?」


鍛える、というのはずっとアルジェンの素振りを見ているだけではないだろう。結局一番力が付くのは実戦だと思うし、魔物の討伐をするなら依頼を受けたほうがいい。


「私もそう思う」

「僕はお二人がいいのなら」


よし。となるとパーティ加入の手続きをしなきゃだな。アルジェンには悪いが街の中、組合(ギルド)まで一緒に行ってもらわなければ。


「うん、じゃあ早速手続きをしに行こう。今は偽勇者一行は街にいないみたいだ」

「そんなことがわかるんですか?」

「うん。便利なスキルがあるんだ」


色々とな。〈探知〉で街中を探ったが偽勇者一行の反応はなく、どうやら街の外の依頼に出ているようだ。今ならアルジェンも問題なく組合(ギルド)まで行けるだろう。


組合(ギルド)に着いて、さっそく手続きを済ませる。俺とイベリスの後ろについてくる、初めて見る顔にリジーさんはほんのり疑問をにじませた顔をした。なんだか、少しずつ表情が豊かになっているような。俺が、リジーさんの細かな変化がわかるようになっただけかな。

ちなみに、アルジェンは獣人であるリジーさんを見ても顔色を変えることはなかった。そのあたり、特に心配もしてなかったけど。彼の故郷、スズヤ村には獣人も多く住んでいたらしい。幼い頃から同じ村の仲間として生活してきたから偏見もないのだろう。……と思うと、ますますマックスの評価が下がる。


「はい。アルジェン・ライヒトームさんをBランクパーティ陽だまりの花(サンライトフラワー)のメンバーとして登録しました」


アルジェンには、陽だまりの花(サンライトフラワー)がどういうパーティかは話してある。

人助けのためのパーティ。金銭的な利益よりも、より多くの人の助けとなれることを目指すパーティ。アルジェンはそれに賛同してくれた。

身近な困っている人を助けながら、最終的には世界を困らせるヤツを倒す。いいんじゃないだろうか。先はまだ遠いけど。


そのまま依頼を受けて行く。モフモフの金があるのでアルジェンという新しいメンバーが増えても食うに困ることはないが、アルジェンの実力を見たいのもあるし、街の近くに出没する危険な魔物を狩る依頼でも受けよう。


「アルジェン。レベル見ていいか?」

「へ? あ、はい、どうぞ」


俺にはスキルがあるため自分のレベルも他人のレベルも簡単に確認できてしまうが、基本的には自分でレベルを確認することは出来ず、そういうスキルを持った神官に頼んで教えてもらうのが一般的らしい。その時にはお金も必要らしいから、普段からこまめにレベルを確認する人はそういないようだ。多くの冒険者は経験で自分の強さがどのくらいか知っていく。そっちのほうがいい気がするな。度胸や判断力なんかの経験は数値化できないし。ただ目安にはなるのでその点ではすごく便利だけど。


アルジェン・ライヒトーム 男 勇者 16歳

LV 28


おっ、意外と育っている。そしてちゃんと勇者だ。

こうなると赤毛にも〈鑑定〉喰らわせたくなるな。人の情報を覗き見するのはあまりにも悪趣味なので人にはなるべく使わないようにしているが、あの赤毛もマジで勇者だったら話がややこしくなるし仮にどっちも勇者で魔王を倒すには協力が必要なんだとか言われたらスゲー嫌だ。アルジェンみたいな若者には喜んで協力するがアレ勇者には……それが世界を救うためと言われたらそりゃ協力する以外の選択肢はないが……気持ちは当然乗らない。


それにしてもアルジェンは自分のことを弱いという割にはしっかり剣も握っているし一人で魔物も狩っていたんだよな。初対面の相手に教えを乞うため頭を下げることもできるし、優しげでふわふわしてる印象に反してしっかりしているというか……。そのアルジェンが体調に異常を来すほどに強くて恐ろしいと感じる偽勇者一行って一体? あれ、でも偽勇者一行って赤毛のあのパーティだからアルジェンに魔法を喰らわせた魔術師にも俺たちは会ってるはずで……。うーん、うーん、あんまり覚えてないというか、印象に残ってないな……。


ちなみに、今の俺のレベルは50になったところだ。モフモフがいい経験値になった。イベリスにも了承を取って確認したところ彼女のレベルは80をとっくに超えている。高レベルになるとレベルがひとつ上がるにもより多くの経験値が必要になるのは鉄則だが、俺の〈取得経験値増加〉〈必要経験値低下〉のスキルはパーティの仲間にも適用されるみたいだった。アルジェンのレベルもすぐ上がるんじゃないかな。


「あの……メイスケさんっていっぱいスキル持ってるんですね」


依頼を受けて、組合(ギルド)を出たところで、アルジェンが声を潜めて俺に言う。

人通りはそこまで多くないが、念のため気を遣ってくれたのだろう。


「まあな。他にも色々。だからサポートは得意だよ」


アルジェンも正式に仲間になったことだし、イベリスに伝えているぶんは彼にも教えていいだろう。鑑定と探知はなんとなーく使ったし、あとは収納(アイテムボックス)と料理あたりかな?

俺が明かすと、アルジェンは丸い瞳を丸くしたあと自分のスキルも明かしてくれた。

アルジェンのスキルは鍛錬で身に着けた〈剣術〉、生まれ持った〈天気予報〉〈孵化〉、それから〈勇者の光〉というスキルらしい。

〈勇者の光〉は勇者の固有スキルだろう。アルジェンも実際に使ったことはないようで、詳しいことはわからない。

〈天気予報〉はそのまま。天気がわかるスキルだ。俺もカミィがあるから似たようなことはできる。


「〈孵化〉ってのは?」

「僕が卵を温めると元気に孵るんです! 僕が卵から育てたニワトリは寿命で考えるともうおじいちゃんなんですけど、でもまだまだ元気なんですよ!」


誇らしげにアルジェンは語る。

アルジェンのスキルは戦闘にこそ向かないが、スズヤ村で暮らしていた時は十分役に立っていたようだ。〈天気予報〉にしても、雨が降るとか嵐が来るとかが早めに分かって感謝されていたらしい。

頭には、スズヤ村ののどかな暮らしが思い浮かんだ。いいな。余生はそんな感じで暮らしたい。一応まだ二十代なので余生とか考えるには早すぎるが。


挿絵(By みてみん)


街を出て、一度アルジェンのキャンプに寄る。荷物を整理したいらしい。

俺たちが受けたのは街道に出没し、荷馬車を襲ったフォレストウルフの討伐依頼だ。

普段は夜間に行動するフォレストウルフだが、襲われたのは太陽が昇っている時間帯らしい。まさかこれも“魔物を放った誰か”が関係しているのだろうか?


それにしても〈孵化〉か。いいなあ。テイマー系の作品も読んでいたので、魔獣の相棒ってのにも憧れがある。そんな簡単に命を預かるもんじゃないと思いつつもやっぱり縁があったらその時その縁は大事にしたいじゃん? 俺にも似たようなスキルないかなあと、アルジェンを待つ間多すぎて自分でも把握しきれていないスキル一覧を眺めていると、あるスキルが目に留まった。


「……不老、長命……?」


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