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エピローグ:魔法少女VS魔法少年  

 二千二十一年四月、突如「魔法使い」と名乗るローブ姿の集団が日本の国会議事堂を占拠した。

 彼ら一人一人は不思議な力を持つ杖一本で、銃を持つ日本政府軍と渡り合い、兵士達を次々と撃破していった。

 そしてその集団の長である「魔法女王」なる者が全世界に声明を出した。

「我々魔法使いは全人類に、我々が生きる為の土地の提供を要求します」と。

 国際連合は彼女の要求を拒否。

 結果、「一万人の魔法使い」対「七十億人の人類」という図式が完成した。

 日本に出現した魔法使い達に対し、世界中の兵力が日本に集中した。

 当初はその圧倒的な人口差から人類の勝利は時間の問題かと思われたが彼らの力の源である杖は時にはナイフを越える近距離武器、時には大砲を越える長距離武器になる程に強力な武器だった。空中戦においては軍隊の戦闘機の速度を彼らの箒が凌駕していた。

 彼ら魔法使いは日本の埼玉県祈桜市の樹海の中に存在する謎の門より出現したという調査結果がある。門がいつから存在したのか等の詳細は一切不明。

 そんな彼ら魔法使いの中で一際恐ろしい魔法使いが槍を持つ紫色の魔法使いの少年であった。軍の戦闘記録によると彼に銃弾を撃ち込めば弾は全てこちらに跳ね返り、ナイフで刺せばその衝撃すら跳ね返され、こちらに切り傷ができているとの記録がある。下手に彼のいる場に核爆弾でも落とせばそれすら跳ね返されるかもしれない。女王に対して核爆弾を落とすという選択肢を各国がとらない理由が常に彼がボディガードについているからである。その、全てを反射する魔法の特徴から、軍の間では「リフレクター」という呼称をつけられている。



「この町に魔法使いが潜伏しているという情報が入りました。住民の皆様は落ち着いて避難所に避難してください。繰り返します――」

 サイレンとアナウンスが深夜の町に鳴り響く。

 埼玉県祈桜市男女町。ここに女王が潜伏していると聞きつけた政府軍は避難警報を出し、住民を避難所に逃がした後、町中の建物を探し回った。そして、過去の戦闘の爆発で天井にぽっかり穴が空き、廃墟同然と化した男女町中央図書館の屋上にてその身柄を発見した。

「見つけたぞ! 魔法女王だ! 奴を捕縛しろ! 無理なら射殺で構わん!」 

「構え! 撃て!」

 指揮官の合図とともに軍服の男達が一斉に銃口を魔法女王に向ける。

 しかし銃弾が女王に放たれる前に、空中から何かが落下してきた。

 小さな少年が舞い降りてきた。紫のローブに三角帽、そして交差する光輪を纏っている。

「何だコイツ?!」

 兵士が少年に銃をぶっ放す。

「よせ!」

 指揮官が止めに入る間もなく、放たれた銃弾は少年の光輪に触れると静止し、そのまま政府軍の脚に跳ね返り、命中した。

「いてえっ!」 

「出たか、気をつけろ。『リフレクター』だ。奴の前で銃弾もナイフも効かない。奴は狙うな。魔法女王の殺害のみに専念しろ!」 

「了解です!」 

 だが政府軍が行動に出る前に天井から桜吹雪が棘の波のように魔法女王に向かって降り注いだ。

 リフレクターは女王に桜が触れる前に魔法女王の前に出る。光輪がリフレクターと女王を桜の津波から守り、それらを政府軍の方に反射させた。

「あぶねっ!」 

「今度は何だ?」

 兵士達がうめき声をあげる。

「……」

 リフレクターは無言で空を見上げる。

 十数メートル上空で薄紅色の髪が風に晒され、はためいている。満月を背後に、和風ドレスの少女が箒にまたがり、リフレクターと女王に杖を向けたまま空で静止していた。

「何だ? 新手の魔女か? いや、魔法少女?」

「こんな時に何アニメの話してんだおめー」

「いや、アレ見ろよ」

「あっほんとだ。魔法少女だ」

 兵士達が騒ぎ立てる。

 少女が急降下し、箒から降り、地に脚をつけた。

 少女と少年が向き合っている。少女は杖を少年に、少年は槍を少女に突きつける。

「朝日……」

「月夜……」

 二人は互いに見つめ合い、互いの名を呼び合う。

「朝日。私は貴方を守るため、女王を殺す。例え貴方と戦うことになってでも」

「月夜。僕は君を守るため、女王を殺させない。例え君と戦うことになってでも」


大切な人を守ることを願えば、大切な人を幸せにできない。

 大切な人の幸せを願えば、大切な人を守れない。

 彼らは、想い人の幸せより、想い人を守ることを優先した。

 お互いを守るため、お互い戦い合うことを選択した。

 これはそんな、とある魔法少女と、とある魔法少年のお話。


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