劉敬と劉備の有名なお話
ある日劉敬は劉備に会いに行った。
「のう劉備。」
「叔父上、お久しぶりです。」
劉備はそういって拱手して礼をした。
「最近お前の素行が悪いんじゃないかと、お前の母上が心配しているぞ。」
「大丈夫ですよ。ご迷惑はおかけいたしません。」
「おまえは将来どうしたいのだ?」
「私は将来、大きな桑の木でできた馬車に乗りますよ。」
劉敬は慌てて劉備の頭を抱えて口を押さえた。そして周りを見渡した後、
「そのようなことを申したら三族誅滅にあうぞ。大声でいうものじゃない。」
「劉備は劉敬を振りほどいて答える。
「大丈夫ですよ。周りに誰もいないことが分かっていましたから。」
「そうは言ってもな、冗談ですまないことがある。」
「叔父上は心配性ですね。」
「仕方ない奴だ。ちょっとうちに来なさい。」
二人は劉敬の家に向かった。
「さてな、お前が将来何になるにかかわらずだな、学問を押さえておかねばならぬ。わかるか。」
「読み書きは覚えております。充分でしょう。」
「いや、全然足らん。学ばないでもすごい奴はいるが、同じ能力なら学んだ奴が勝つ。」
「・・・・。(めんどくせぇ・・)」
劉敬の話はつまらなく長かった。
劉備は解放されてからたまり場へ向かった。
「兄貴どこへ行ってたんですか。」
士仁が劉備に声をかけた。それに呼応してほかの者も同じようなことを言った。劉備は適当に返事しながら面々を見渡して田豫に向かって聞いた。
「どうしてお前は頭がいいんだ?」
「何をいきなり。」
田豫は訳が分からずに聞き返した。
「だってよ、おれたちが困ったときにはいつもいいことを考えついてくれるじゃねーか。」
「それは他のやつもいろいろ考えてると思うよ。」
「結局お前の考えに決まることが多いように思うんだよな。」
「あぁ。それはな、話し合っている内容をまとめて俺ん中でいいように直してるだけだよ。」
「そんなことしてるのか。すごいなお前は。」
「全然すごくないよね。人の考えを借りて喋っているだけだから。」
「でもよ。」
そして劉備はみんなに言った。
「田豫はすげー頭いいよな?」
「兄貴のいう通りです!」
士仁が言う。
「あんな風にまとめるなんて私にゃできませんな。」
簡雍が言う。
「実は俺の考えを取られたと思ったりしたこともあったんですけどね。」
劉展は言う。
「ほらな、なんだかんだ言ってみんなお前のこと頭いいやつだと思ってるぜ。」
「はぁ…。何もでないよ。」
「何も出ないってよ。残念だな。でもお前の頭は一番いいってことに決まったぞ。」
田豫は持ち上げられてとても困った。
その夜劉備が家に帰ると
「メシは食うんだろ?」
劉備の母が聞いた。
「ああ、腹減った。」
「いい身分だな。」
「けっ。」
劉備の分の夕飯を用意した後、劉備の母は言った。
「今日叔父さんと話しただろ? 叔父さんがお前の勉強の金を出してくれるって言ってくれたんだよ。」
(あれ? 勉強しに行くなんて返事したかな)
「あしたお礼に行くんだよ。」
「ん? ああ、そうだな。」
(適当に返事してた中にあったのかも知らん)
「それにしても、お前が勉強しに行くというとは思わなかったよ。」
「どこに行けばいいんだ?」
「明日聞いたらいいだろう。聞いたらまた戻っておいで。渡すものがある。」
「何をくれるんだ? 今でいいじゃないか。」
「今じゃだめなんだよ。」
「ふぅん。まあいいか。それにしても、もっとましなメシはないのかよ。」
「ぶちのめすぞ、クソガキが!」
田豫に修正