劉備たちと山賊②
山賊たちは息を荒くして集まっていた。
劉備たちは枝と葉を集めるための用意を急いだ。屋根をどうにかする行動をとらなければならない。
山賊の一部は便利な子分たちがいて良かったと思った。
いよいよ雨が強くなってきて視界もかなり制限されてきたころ、山賊たちは村へ向かった。
留守番係の山賊はいなかった。略奪は早い者勝ちだ。遅れると疲労だけが戦利品になってしまう。留守番などをしたいと思う山賊はいなかった。
劉備たちは完全にフリーになった。雨で見えにくくて良いのは山賊だけではない。音も雨にかき消される。計画通りに事を運ぶ時だ。
山賊たちにつかず離れずの距離を保ってバレないようについていかなければならない。誰も言葉を発さないで劉備の合図に合わせて移動した。
あとは田豫がうまくやっていることを信じるだけだ。
山賊たちは殺気を放ちなから息を荒くして村へ向かった。村人を蹂躙して奪いつくすことを考え興奮している。普段の小規模な強盗とは全く違う行動に一人も残らず気を張っている。
村の端にある家の輪郭がなんとなく見えてきた。親分はいったん全員を止めた。
「いいかお前ら。なるべく逃がすなよ。役人に伝えられたら厄介だからな。わかるか、皆殺しだ。」
息も整わないまま親分はそういった。いざとなって怖くなったのもあり、皆殺しの指示を出した。
よくは見えないが、建物の周りに人がいる様子はない。動いている者はないように思える。
「突撃するぞ。殺ったあとに奪えば間に合う。とにかく先に殺るぞ。わかったな!。」
静かに近づいてから襲えばいいのに、ここから走って近づいて襲うことにしたらしい。
「行くぞ!」
親分は大声で言った。山賊どもはウオーッと大声をあげて村に向かって走り出した。
少し走ると先頭を走る数人が悲鳴を上げながら倒れた。矢がたくさん撃ち込まれる。郡の兵士が警備していた。田豫はうまくやったらしい。
なれない突撃に頭がいっぱいになっている山賊は止まることもできずにそのまま突っ込んだ。しかし個々の戦力(装備から違う)の差が圧倒的に違い次から次へと倒れていく。
半数くらいが倒れてようやく山賊の足は止まった。しかし兵は止まらない。逆に山賊に突撃してきた。
その中で親分も死んだ。
残った山賊は逃げることしか考えられなかった。後ろを見せて逃げるのだが、逃げ切れない。足の速い数人がうまく逃げられたくらいで、ほとんどが討たれてしまった。
逃げた山賊たちは後ろをついてきていた劉備たちに遭遇した。
なんでここにいるのかわからないのだが、とにかく助けがいたと思った。
「お、お前ら。山に逃げるぞ。やばいことになった。」
しかし逃げた山賊が思っていた通りにはならず、劉備たち少年軍団は持っているもので山賊たちに襲い掛かった。棒で殴る。なたで切りつける。などにとにかく力いっぱい攻撃をした。
敗走して浮足立っているうえに息も絶え絶えの山賊になすすべはなかった。
こうして、山賊はあっという間に退治された。
劉備たちは特に恩賞がもらえるわけでもなく、
「家に帰りなさい。」
と怒られて兵隊2人をつけられて帰されることになった。
(つまらねぇな・・・)劉備は不満に思ったが仕方がない。
家出をして山賊につかまった子が解放されただけだ。数人を倒したとは言え、家出少年に恩賞を与える必要はない。結果的に村が助かったのだが、そういう受け取り方はされなかった。
劉備が家に帰ると、いきなり母親に頭をたたかれた。
「一体どこをほっつき歩いてたんだい。役人さんの世話までかけて。」
「うっせえ ばばぁ!」
「誰に向かって口をきいているんだ! さっさとメシ食って寝ろ!」
劉亮が離れたところから覗き見ていた。どんな気持ちで劉備の反抗期を見ているのかは誰もわからない。
ある日劉備の母は、劉弘が洛陽で買った見た目だけは派手な剣に興味を持った。
(普通に戦えるくらいに直してもらえるだろうか。)
そう思い、鍛冶屋に持って行った。
「すみません。この剣なのですが、何とかできますか?」
「え、何とかって。まぁ商売だからやりますよ。」
「じゃあお願いします。」
「でもこれ、刀身が錆びすぎていますね。どんなふうにしたらいいです?」
「柄のところが残ってて、普通の剣になればいいですよ。」
「なんとかやってみますよ。特別なモノなんですか?」
「ただの土産物です。飾るにしても役に立つくらいにはしておきたいのですよ。」
「わかりました。龍の柄の剣なんてなかなか見ないですよ。仕上がったら家までもっていきますね。」
劉備の母は鍛冶屋に発注した後、簡雍の家に向かった。
「簡雍、居るかね?」
「おお、これは伯母上。いらっしゃいませ。」
「最近劉備の素行が悪くてね。なんとかうまくやってほしいんだよ。」
「大丈夫ですよ。悪いことは多分しませんから。」
「あの子は私のいうことなんか聞きやしない。お前のいうことなら聞くだろうから頼むよ。」
「はいはい。わかりました。だいじょうぶですよ。」
簡雍は独特のふんわりした空気をまとわせながら答えた。
劉備の母はなんとなく大丈夫なような気がした。
そう思いながら、ついでにと劉敬のもとへ向かった。
「子敬殿、いらっしゃいますか。」
「義姉様どうされました。」
「劉備がみんなを連れまわっていろいろしているみたいじゃないですか。そちらの子も引きずられてはいけないと思いまして。」
「あの年頃はあんなもんですよ。あれだけを引き連れるのも才能じゃないですか。私は将来が楽しみですよ。」
「わたしは明日さえも心配ですよ。」
「今度あったら、それとなく何か話してみますよ。」
「すまないね。」
それから数日後、劉敬は劉備に会いに行った。
子敬っていったら魯粛だよなぁ・・・
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