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劉備たちと山賊①

劉備も年を12まで数えるようになると、地域の人たちの知る子供集団のリーダーとして目立つようになっていた。いつも同年代の者を引き連れてはあちらこちらでいろいろしていた。

葬式があれば、終わった瞬間にお供え物をいただくとか、野生の馬を捕まえては乗りこなし商人に売るとか、人の家の果樹を勝手に食うとか、夜中に裏道を練り歩いて悪者をやっつけるといいながら大騒ぎしたりとか。

とにかく思い付きで遊びまわっていた。数年前のいい子ちゃんはどこかに隠れてしまったようだ。

気が向くと山に入り狩りを行った。それをみんなで食べることもあれば市で売ることもあった。狩りを生業にしている者にしてみれば迷惑極まりない。集団で山に入り追い立てて狩るものだから、彼らが狩らない獲物はよそへ逃げてしまう。総合的な評価は悪いに傾いていた。

 ある日劉備の仲間が思い付きで、遠くまで旅してみようと言い出した。行き先など特になく、ただ冒険がしたいだけだった。

 賊が増えている時代に無謀な考えだったが、みんなして乗り気で出かけることになった。もちろんカーチャンたちには内緒だぞ。

劉備たちは歌いながら出て行った。

初日は何もなく、持って行った食料を食べて過ごした。

2日目にさっそく山賊に遭遇した。

山賊は当然大人の集団だ。子供たちが徒党を組んでも敵わないだろう。

「なんだお前たちは。子供ばっかりじゃねーか。」

山賊も誰彼構わず襲うわけではない。子供の集団に興味を持った。

「実は、家で殴られて働かされる毎日に嫌気がさして逃げているのです。」

劉備はとっさにうそをついた。

「それは大変だな。普通に暮らしてもお上にほとんど持っていかれちまうから、お前らの親も必死なんだろう。」

「それでも私たちはもう我慢できません。」

「ふむう・・・。」

山賊の親分っぽい奴は考える様子をした。そして、

「お前らは何ができる?」

「私たちは馬を捕まえて売ったり、狩りをしてなんとか暮らせています。」

「ほう。なるほどな。ほかには?」

「私と数人は読み書きができます。」

「ん。それはいいな。ちょっとまってろ。」

山賊たちは寄り集まって何やら相談を始めた。

劉備たちもその間に相談をした。

「兄貴、どうする?」

簡雍が聞いた。

「どうするもねぇよな。戦ってもかてねぇし。」

「だれか村に帰って伝えに行くか?」

劉燃が言う。

「ここで誰かが抜けていったら、残った奴は皆殺しになるんじゃないか?」

劉展が言う。

「様子を見るしかないだろうね。」

田豫が言う。

「なるようにしかならねーんじゃ、しょうがねーよな。」

劉備はさらっと言った。

劉備たちはただ待つことにした。

少しして山賊の親分っぽいのが戻ってきた。

「お前ら、俺たちと一緒に行くか。もちろん飯の分は稼いでもらうけどな。」

劉備は言を左右にしてごまかそうとしたが、よく見るといつの間にかに囲まれていた。

「それは渡りに船です。お役にたてるよう頑張りますのでよろしくお願いします。」

内心あぶないと思ったが、うれしそうな顔を作って答えた。

こうして劉備らは山賊になった。


山賊になっても毎日毎日誰かを襲うわけではない。そんなにターゲットはいない。たまに通る商人を脅かして物を奪うくらいだ。抵抗されれば賊なので言うに及ばずだ。

劉備たちは主に山で狩りをし、川で魚を取り、食べられるものを採取して飯を作る係だった。拠点は頻回に移動していたが、帰ったらすぐに飯にありつける状態にある山賊たちはいい拾い物をしたと思っていた。

 そんな生活をしながら流浪していると、近くに寂れた村があるのが分かった。あまり裕福にはみえないが、山賊よりはたくわえがあるに決まっている。山賊はここから略奪しようと考えた。

山賊どもは効率の良い攻撃方法を話し合い始めた。

その計画は劉備たちにも漏れ聞こえてきた。

「あの集落はおれの知り合いが住んでいるところだ。」

士仁が言った。

「それじゃぁ、どうにかしないといけねえなぁ。」

劉備は答えた。だが劉備にいい案などない。

「どうしたらいいんだ?」

子供たちはいろいろ話し合った。そして田豫が言った。

「どうせ直接戦うのはおっさんたちだろ。俺たちは後ろで待ってるんだから。だからな、誰かがこっそり向こうに伝えに行くんだ。そして向こう側が戦う様子を見せたら、俺たちが後ろから奴らを狩る。」

「そんなにうまくいくかい?」

士仁は言った。

「見殺しにするかやって成功か失敗かに賭けるかどっちがいい?」

田豫は答えた。

「本当にすまねぇ。」

「で、誰が向こうに伝えに行くか、ということなんだが・・・」

田豫は周りを見渡しながら言った。

「ばれたら一番先に殺される役目だな。俺が行こう」

劉備は言った。

「いや、劉兄貴は向こうに行ってもうまく伝えられないだろ。俺が行くよ。」

田豫はそういって劉備を制した。

「そうかもしれないな。おれがやるよりいいだろ。」

「で、いつ攻め込むんだい?」

簡雍は聞いた。


山賊は計画はしたが決行をいつにするか決めかねていた。

ばれずに近づいて攻めるにはいつがいいのかがわからないのでまとまらないのだった。

ある時山賊に劉備だけが呼ばれた。

「おめぇ、読み書きができるっていってたよな。兵法とかも少し知ってんのか?」

「そんな難しいことはよくわかりません。」

「まぁいいや。おめぇさ、あるところに攻め込むときにばれないで近づくにはどうしたらいいと思う?」

「そりゃ、真夜中か雨の日だと思います。」

「お! 雨の日か! さすが頭いい奴は違うな。」

「真夜中なら相手が眠っているから、より確実だと思いますよ。」

「ばかおめぇ。真夜中はおれたちも眠いじゃねーか。」

山賊は何を優先するかもよくわかっていない。

「ありがとよ。お前のおかげで助かったわ。次の雨はいつだろうなあ。」

劉備はそれで解放された。


劉備は仲間に内容を打ち明けた。

「雨の日になるみたいだ。最近曇ってるから、そろそろ降るかな?」

「じゃあ、明日狩りに行ってそのまま村へ行くことにするよ。こっちはなんとかごまかしてくれ。」

田豫は言った。続けて、

「おれはほとんどおっさんたちと喋ったことがないから、多分いなくても気づかれないと思う。」

「死ぬなよ。」

劉備は言った。

劉備たちの装備は狩りのために山賊がちょっといい弓矢と短刀を貸してくれていた。彼らはこれで自分たちが襲われるとは考えなかったのだろうか。子供たちだからと油断していたのだろう。だから計画も漏らす。

その日の夕飯時、簡雍は山賊の方へ行って飯を食った。狙いがあるわけではない。なんとなくそうしたかったらしい。

「お上が税を重くしなかったら、俺たちみんな村で暮らしてたんでしょうかねぇ。」

配膳しながら言った。

「そうだな。山賊なんかやりたくてやってるわけじゃないからな。」

「もっと人数を多くして、どっかの郡でも落とせたら楽になれるんですかねぇ。」

「はっはっは。お前は面白いことを言うなぁ。郡じゃなくても村を丸ごと奪うのもいいなぁ。」

「村っていうと、なんか生々しくて怖いですね。」

「やっぱりお前はまだまだ子供だなぁ。」

「えへへへへ。」

そんな話をしながら簡雍は時間を過ごした。山賊のおっさんに気に入られたようだ。


それから2日後、雨が降り出した。

「お前たち、ちょっと出かけてくるから、雨をよけられるようにここに屋根をつくっておけ。飯は後でいいいから先に屋根だ。時間があったら壁も作っとけ。」

山賊は劉備たちに言った。

「わかりました。急いで用意します。」

わかりやすい指示だった。これから村に攻め込むということだろう。

劉備たちに緊張が走った。

田豫に修正

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