第0話 プロローグ
「……、10周終了!」
おれは、ほどよい疲れを感じながら、ひんやりとした廊下に寝転んだ。
目の前にはピカピカに輝きを取り戻した廊下が、おれ達に感謝するようにその存在を示している。
「ハァハァ……、しげさん……、ま、まだ余裕ありそうですね、……うぷっ」
隣で青い顔をしているムキムキマッチョの男は言った。
こいつの名前は幸田達也。おれの部下だ。
「幸田も10周できたじゃん! 最初のときは5周で吐いてたのにな! ナイスー!」
おれは半年前から一緒に筋トレをするようになった幸田にそう笑いかけた。
ここは消防署の3階にある会議室の外だ。
会議室の外には、25mくらいの廊下があり、その隅に大の男二人が汗だくで寝転んでいる。二人とも身長が180cmを超え、ガタイもいいので、廊下が狭い。
1往復50mの距離を雑巾がけで10周し、今二人はパンツまでぐちゃぐちゃになるくらいの汗をかいている。
余計に廊下が男臭い。
「雑巾がけって、なんでこんなにきついんでしょうね。小学生のころは、こんなにきついなんて感じなかったと思うんですけど」
「そこよ! 小学生と今のおれ達の違いが、まさに「雑巾がけ」によってその差異を顕現している! この差を埋めることで俺達は更なる高みを目指せるんだ!」
俺はピカピカに磨きあげた廊下の上で、雑巾がけに対する熱い気持ちを、声高々に語った。
地元を出て早10年。
おれは都会の消防署で働いている。
名前は山口滋、35歳。
2児の息子を持つ消防士だ。
黒髪短髪、懸垂で鍛え上げた肩幅は広く、身長も180cm後半と大柄な部類だろう。顔もそんなに悪くはないと思っているが、妻に言わせると「しげちゃんは、黙ってるとヤクザみたいなんだよ!」とのことらしい。
消防署では、3当番サイクルとなっており、今日は当番日。明日は非番で、明後日は週休日といういようなサイクルで過ごしている。
当番の日は、夜に後輩の幸田と筋トレするのを日課にしており、先ほど締めの「雑巾がけ」で、当番日の日課を終えた。
今はもう夜の10時を過ぎている。
「そろそろ汗も引いたし、食堂でジュースでも飲むか!」
「そうっすね。しげさん、男気でおなしゃっす!」
男気とは、勝った方が負けた方にジュースをおごるじゃんけんだ。消防署では、なぜかこのスタイルが昔からの主流である。
じゃんけんの結果、見事おれが勝利したため、喜んで幸田にジュースをおごることとなった。
今おれ達二人は消防署の屋外に設置されているベンチに座って、ジュースを飲んでいる。食堂で飲もうと思ったが、まだ体が火照って汗が引かないのだ。
「だいぶ寒くなりましたね。 気付いたらもう11月ですよ」
「そうだな~。 幸田と一緒に筋トレはじめて、もう7か月くらいか? ようやく俺についてこれるようになったな! そんだけゴリマッチョなのに、なんでおれに勝てねぇんだよ」
おれは、歯を剥いて笑った。
「しげさんが化け物過ぎますって! ほんと強すぎっすよ! 懸垂も無限にできるし、あの雑巾がけだってまだ何周かできますね?」
まあな、と答えて大好きなコーラを一気に1/3ほど一気に飲んだ。
筋トレ後のコーラは最高だ。
幸田とよく筋トレの締めで行う「雑巾がけ」は、おれの発案だ。とは言っても、お寺のお坊さんが掃除の時やるような、あの雑巾がけとなんら変わりない。
滋は、自重の筋トレこそが至高だと考えており、ありとあらゆる自重筋トレを今まで発明してきた。なかでも「雑巾がけ」を筋トレに転用したのは天才的な発想だったと自負している。
やってみなければ分からない地獄のつらさ。腕、足、心肺機能、体幹の全てを、余すところなく苛め抜ける最強のトレーニングである。
幸田が弱いのではない。
「雑巾がけ」がキツすぎるのだ。
「大晦日の当番で、年越し雑巾がけするから楽しみにしとけよ~」
ニヤつきながら幸田を脅す滋。
「いや、おれ年越せなくなるじゃないですか……」
絶望的な顔をした幸田は、その無駄に広い肩を落として言った。
それから他愛もない話を10分くらいしていたと思う。汗も引いたし、事務室で残っていた書類仕事を片付けようと、空になったコーラの缶をごみ箱に捨てた。
その時、
――――、ジジジッ、
ビ――――ッ、ビ――――ッ、ビ――――ッ、ビ――――ッ
『南区出火報! 南区幸町1丁目52番12号、住宅出火、南区出火報〜』
耳を刺すような長音4声のブザー音、それに続く緊張感のある指令室の声がスピーカーごしに響き渡る。
「しげさん!!」
火災だ。幸田が強張った顔をしてこちらを向いている。
――――うそだろ
出場の指令がなったら、すぐに消防車に乗って出場する。
そのための一歩が出なかった。
なぜなら、
「おれの家じゃねぇか……!」
おれの両足は、長年の訓練で培った条件反射のような一歩を無視した。
「隊長、出場です! 気持ちは分かりますが、奥さんや息子さんの安否を確かめないと!!」
幸田の声には、おれへの気遣いがあった。よく俺の家に車で遊びに来ていたので、住所も覚えている。
おれは、小隊長だ。
おれが現場で放水しないと火は消せない。
「すまん、幸田!要救助者の救出が最優先、出場だ!」
今まで経験した現場と違ってはならない。
訓練どおりだ。
そう、訓練どおりでなければならい。
荒れ狂う動悸を無理やり抑え、サイレンを鳴らした。
愛する家族が待つ、我が家に向かって。
ーーーーーーーーー
出勤前の朝食は大切だ。
8時30分の交替直後に火災出場し、夜まで署に帰れないこともある。そのため、食事がとれるときは、しっかり食べることを常に意識している。
山盛りの白米をウインナーと一緒にかけ込む滋に、声をかける者がいた。
「しげちゃーん、明日は何の日でしょーかっ!」
大きな目を細め、薄い桜色の唇をにんまりさせながらその人物、山口瑞葉は言った。薄く茶色がかった髪は背中にまで届いている。髪の毛は細く、毛先に向かって自然に緩くカーブを描いている。雨の日に髪の毛が爆発するのが瑞葉の悩みだ。
そんな彼女、おれの妻である瑞葉が、テーブルの対面からおれの顔を覗き込んでいる。
「礼士の誕生日だろ? 誕生日覚えられないランキング1位のおれでも、さすがに息子の誕生日は覚えてるよ」
礼士はおれの次男で、明日おれが非番の日に6歳の誕生日を迎える。俺の回答に、よしよしと頷き会話を続ける瑞葉は、左手の人差し指を右手で包み込むように握っている。
瑞葉のクセだ。
透き通るような白い肌、可愛らし顔立ちは、その気取らない性格も相まって、近所のおば様方の評判も良い。
ちょっと無理をして買った家は、買い物や交通の便も良く、近隣住民の自治会に対する意識が高い。
週一でお菓子作りや地域のボランティアを近くの公民館で行っており、瑞葉は「自助、共助の精神よ!」と張り切って参加している。そのため、近隣に住んでいるちょっとリッチなマダム達と無駄なマウントを取り合うことなく良好な交友関係を築けているようだ。
そんな瑞葉は、消防士の妻として、最高の女性だと思う。
「ちゃーんと息子の誕生日を覚えていたのは、いい子だよ、しげちゃん! だから明日は息子のために、どーしても完遂して欲しい任務があるんだよ!」
そう言って瑞葉は、150cmしかない身長の割には大きい胸を張って、さぞ重要なことを伝えるぞーっ、という雰囲気を出す。
そして、
瑞葉は、おれに任務を付与した。
普段であったら何てことない瑞葉の任務。
しかし、この当番だけ、
10年やってきた消防人生の中で唯一、
この当番だけは、
任務を遂行できなかった。
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これは火事だ。
現場に到着して最初に思ったことは、それだった。
消防士と言えど、一般的に想像するような業火は、なかなかお目にかかれない。
(なんで、よりにもよっておれん家でッ!)
いつもは、通報を受けて出場しても、大体が誤報であったり、ちょろっと水をかけたら鎮火するような火災がほとんどだ。
滋は、火災現場で要救助者を救出するために、毎当番、幸田と一緒に他の隊員達よりもはるかに厳しいトレーニングを積んでいる。
まさか、その成果を示す現場が我が家とは。
(なんで、なんで! なんでなんだよっ!!)
消防士にとって、自分の家が火事になることは「恥」である。そのため、消防士の自宅が火事になると重い罰則規定が設けられている。
家庭においても、瑞穂が台所で火から目を離すことに対して、滋は厳しく注意していた。
(瑞穂が台所から目を離して火事になるはずがない! どこから燃えたんだ!?)
滋の頭のなかは混乱していた。
道路に面する2階の窓は、悪魔の腕のように火を吹き上げ、庇を焼いている。
あそこは、滋と瑞葉の二人の部屋だ。
瑞葉は、いつでも子供達が自立できるように部屋を空けておこうと、2階にある3部屋のうち2部屋を子供達用に空けていた。その2部屋のうち奥の1部屋を現在、長男の礼士と次男の誠が2段ベッドで寝ているはずである。
今は夜の11時過ぎだ。
(瑞葉が起きていれば、避難しているはずだ!)
俺は、夢中で2階に放水する。
ホースの水圧は、想像以上に強い。
素人の成人男性が全力で放水しているホースを持っても、後ろに吹っ飛ばされて、ろくに放水することはできない。それを、滋は一寸の狂いなく2階の部屋に向けて放水する。
2階は子供達が眠っている可能性があるのだ。
(信じられないが、恐らく出火場所は1階の台所だ。防火ダンパーが落ちたはずのレンジフードのダクトから火炎が強すぎる!)
2階の滋達の部屋の火炎が少しだけ収束したのを確認し、滋は1階から内部進入を考える。
このままでは、子供達と瑞葉の安否が確認できない。未だに3人の安否確認が取れていない焦りが、滋を苛立たせた。
現場では、10台以上の消防車が火災建物の周りを取り囲んでおり、40名近くの消防士が消火活動に取り組んでいる。
滋達は最先着で現場に到着したため、消火活動のメインを担って活動している。
「幸田、おれは今から単独で進入する」
近くで消火活動用の資器材を準備していた幸田にそう告げた。
出火報を聞いて現場に到着するまで、約3分。
放水開始から現在まで約5分。
出火推定時刻から出火報まで約5分と計算すると、すでに火事になってから13分が経過しようとしている。
このままでは、絶対に間に合わない!
「えっ?」
何を言っているのか分からないような顔で、幸田は吐く息に疑問の音を乗せ呆気にとられている。
そんな顔を横目に、おれはホースを持って駆け出す。
部隊行動もくそもない!
内部に進入するためには、最低3人のチームで進入しなければならなかった。
(時間がない!)
とにかく、家族に会いたかった。家族を助けたかった。家族の無事を確認したかった。
そのためには、今、1秒でも時間が欲しい。
「ちっ、マジかよ隊長!」
唖然と見送っていた幸田は、我に帰って滋の行く先を見届けていた。驚愕のため見開いた幸田の細い目は、しだいにその目蓋の重みで元の大きさに戻る。
ホース片手に、今も火炎が吹き出している玄関に、単身で突入した滋の行く先を見ている幸田。
そこに、驚愕の色はとうになかった。開いた口はすでに閉じている。
幸田は、悪魔の口を広げた玄関へ消えた滋を、追いかけることができなかった。
いや、できるけど『しなかった』
幸田の閉じた口は、その細い目と同様に、悪魔のような笑みを型どる。
そして、言った。
「また会いましょうね……、しーげーさん♪」
人懐っこい顔で滋と筋トレをする幸田の姿は、そこになかった。
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空気呼吸器を装着しながら地獄のような我が家を進む滋。
周囲は500度以上の高温でありながらも、放水する水は細く希望の道を舗装していく。
(どこだ!?どこにいる、瑞葉!!)
おそらく瑞葉は、子供達のところに向かっているはずだ。現場到着後に、近くにいたちょっとリッチなマダムの情報では、瑞葉達を見かけていないらしい。
夜の11時を過ぎて、消防車のサイレンを聞いても姿が見せない、近隣住民も姿を見ていない、瑞葉達。
予感がする。
冷や汗が止まらない。
何かの間違いだと思うには、揃いすぎている状況証拠。
1階のリビングや台所にはいなかった。
2階の滋達の部屋は、滋が現場到着後にすぐ放水していた。瑞葉達がいるなら、何かしらのアクションがあるずだ。
(それなら、奥の子供達の部屋か!)
誠と礼士は、自慢の息子だった。3歳年の離れた兄弟。
兄の誠は、滋に似て黒髪短髪の切れ長の目をしている。9歳にも関わらず身長が160cmもある長身だ。
今朝、おれが仕事に出掛けようとリュックを背負っていると、
「父ちゃん!今度の非番にトランポリン行くぞっ、ハッ!、行くぞ!」
と、謎の気合いを込めて滋にそう言った。こう見えて、頭も学年で1番なのが世も末である。
「兄ちゃん、その、ハッ!ってなんなんよ~、ホントうけるわ~」
語尾を伸ばして気だるげに笑う幼稚園の年長さんが、明日誕生日を迎える弟の礼士。
この話し方は、瑞葉がいつも注意しているのだが、なかなか治らない。礼士は、瑞葉に似ており、色白の美男子になりそうな予感がする。今は正直、女の子かと思うくらい肌が白く綺麗で、顔も可愛い系なため、将来は女泣かせの贅沢ロードを進みそうで実に羨ましい。
「うっせぇ、礼士! これは、父ちゃんにおれがトランポリンを、ハッ!、したい気持ちを伝えるのに、ハッ!、超重要なんだよ!」
「変なところに、ハッ!が入って意味わかんないよ~」
と礼士がころころ笑う。
そんな平和なお見送りを受けて臨んだ当番は、まるで地獄だ。
すでに炭化しかけている階段。
そこはリビングから2階の中央廊下に繋がっている。
ある程度抜け落ちがなさそうな左側に身を寄せて、落下危険を確認しながら上っていく。
普段何気なく上っている家の階段が死ぬほど遠い。1階から2階に上るのがこんなにきついと思ったことはない。
(あぁ、幸田を背負って階段登ったときはきつかったな)
ふと、そんな日常のトレーニングを思い出し、足に力が入った。
周囲は灼熱。
体感温度がさっきよりも上がっており、防火服の隙間から刺すような熱を感じる。 1階よりも2階の方が放射熱の関係上、熱く感じるのは当然だ。
朦朧とする意識のなか、日頃のトレーニングが現場に活きている実感、まだ「要救助者」が現場で息をしている可能性、それらが滋の心を奮い立たせる。
2階に到着し、目指すは左奥の子供部屋、扉はすでに開いている、周囲に放水しながら子供部屋に進入する滋。
内部を確認した滋の目に映るのは、見慣れない「何か」大きな黒い塊。
………………
その見慣れない「何か」は、まるで迫る死の恐怖に負けないように、身を寄せあっている。
物言わぬ黒い塊。
「み、ず……は?」
そこから先の言葉はでない。
滋の目は曇っていた。
面体というマスクを着けているため、外気の温度差により自分の息でガラスが曇る。
それでもなお、
火災による煙とガラスの曇りでもなお、確認できる黒い塊。
今朝の瑞葉の任務を思い出す。
「しげちゃんは、みんなのヒーロー! だからたくさーん無茶をしちゃうかもしれないの」
続ける瑞葉は、慈愛に富んだ眼差しで滋を見つめる。
「だけど……」
桜の唇が紡ぐ、滋への愛情と労りの任務。
「自分の身体を大事にしてね。それが任務だよ」
滋は、その任務を守れなかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
周囲360度、すでは火事は最盛期だ。
後続の消防隊が内部進入を試みるも、フラッシュオーバーによる内部の急激な燃焼爆発によって進入できない。
瑞葉、誠、礼士
この地獄のような空間で、どれだけ辛い思いをしたのだろうか。
なぜ自分の家族がこんな思いをしなければいけないのか。
何も悪いことはしていない。
一般的な家庭よりかは、世のため人のために生きてきたつもりだ。
それがこの仕打ち。
確かに、世の中には理不尽な殺意によって奪われた命もあろう。理不尽な偶然が重なって奪われる命もあろう。
なぜ、自分の家族が。
滋は、家族と『思われる』黒い塊の前に正座をしていた。
もう、面体は着けていない。
曇りが邪魔で、家族の顔が見えないからだ。
三人の顔はすでに炭化しており、顔の表面に起伏が少ない。
服もすでに燃え尽き、滋でも瑞葉達の面影を判別できない。
(この家は俺ん家だ。 三人の背丈と状況から考えると、そういうことだろう)
さっきから頭がガンガンする。
なぜか意識ははっきりするものの、耳鳴りと頭痛がひどい。
(早く終わらねぇかな)
命の秒読みは始まっている。
愛する家族達。
それを守れなかった自分への怒り。後悔しかないが、あの世でみんなに早く会いたいと思う願いだけは叶って欲しい。
(そう言えば、幸田のあの顔はウケたな)
なぜか命が尽きようとしているときに、最後に見た部下の顔を思い出す。
(まあ、あの世でも雑巾がけしまくって、幸田が来たときに追い込んでやるか)
なぜか笑えてきたが、あの世での楽しみも増えた。
しかし、許すことはできない。
家族をこんな目に合わせた神を。
憎しみをぶつける相手はもう神しかいない。
耳鳴りと頭痛が限界に達してきた。
なぜ、こんな仕打ちを。
俺達はそこまで神に見放されることをしてきたか?
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
なぜか意識だけはより鮮明になる。
耳のなかに針を刺し、脳みそをかき回しているかのような拷問の時間が続く。
(許さない)
もう目の前は、真っ暗で何も見えない。
(絶対に許しはしない)
痛みはより鋭さを増す。
行き場のない怒りを、無情な神にぶつける。
もはや、なぜ、まだ生きているのか理解できない程の苦しみ。
神を呪う
痛みと呪いの念を引き連れて、
滋の意識は途絶えた。
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夜通しで行われた消火活動の末、次の日の明け方に火災は鎮火された。
3棟が全焼した大規模な火災。
規模の割には死傷者「0名」という結果で幕を閉じた。
不幸中の幸いであったと、消防署の幹部はそう評価したという。
死傷者「0名」
後日作成された膨大な量の報告書。
先着した消防隊の活動経過や、火災にあった建物の関係者の名前、周辺の見取り図や写真など、様々な情報が記録されている。
10.5ポイントの明朝体で書かれた、その数千文字の報告書。
そこに、「山口」という名は記されていなかった。