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Arcana Starys  作者: はーみっと
3/3

騒乱の世界

1


大陸の東にある半島、そこには二つの国がある。元々は女帝が統べる一つの国であったが、一人の男が半島の南半分を独立国として建国した。


その建国戦争は非常に激しい戦いとなり、その戦争は北の国の女帝が力の半分を失い死亡する事で終了した。


女帝は不死者である為、死んだ瞬間に輪廻転生を行い大陸にて再び生まれ、国に戻った。


その後、現在から5年前体制を建て直した北の国がもう一度、南の皇帝軍に報復戦争を行った。


その戦いは、双方に大きな犠牲を出して、両軍が戦線を維持する事が難しくなり停戦。


しかし、緊張状態は続いていた。そんな状況を緩和すべく大陸にある国々が半島の二国に何とか和平を結べないかと呼びかけ。


遂に今日、大陸と半島の全ての国々による平和式典が執り行われる。


2


「もうすぐ、式典会場に到着する。今日、我々は国の誇りに懸けて平和にこの式典を終わらせるための警備の任務を行う訳だ。英雄制度を広める為にも頑張るんだ」


式典会場へ向かうビークル車内、エドワードはチームのメンバーに今日という日の重要性を改めて伝えていた。


「君達は今日、平和式典にてライブをしてもらうわけだが、今日のライブは非常に大切な物になる…。大陸中、半島にまで知名度を高める為に頑張って歌ってくれ!」


アイドルグループ「COLOR」のプロデューサーであるケイは、今日が一大チャンスであると考え、高まる気持ちが収まらない。


「精霊の森の平穏、その為に国ではないけど呼ばれたんだ。主に変わってこの大事な席に立ち会わないと。みんな…僕がきっと、森の平穏を掴み取って帰るよ」


大陸にある精霊が住まう精霊の森。その精霊達を統括している精霊使い。彼もこの平和式典に呼ばれていた。今日結ばれる平和協定に参加すれば、精霊の森の平穏が約束される。


「あの半島の戦乱が大陸にまで拡散される事は防ぎたかった。大陸にある小国等に関しても独立を認める事にはなるが、戦争になってしまうより遥かに良いこの選択でよかったんだろうか…バロン」


永遠の栄光を願い付けられた永国。この大陸で最も権力を持っていたが、王は自国の権力の低下と引き換えに大陸と半島の結束を強める為の平和協定を推し進めたのだ。


「王の考えに間違えはないだろう。みんな平和を願っている。ならば、きっと一番力を持つ我が国が動かなければ叶わない。この先も俺が見守っている。王に危険が迫るのなら、守護者である俺が守り抜く。安心して欲しい」


エドワードが去った今、守護者代表となったバロン。多くの国の要人が集結するこの式典、何か良からぬ事を企む者がいるかも知れない。王を守りきるのが守護者の役目。守護者の気は休まらない。


「力を失ってしまった我々の国だか、とうとう今日この日再び国として認められる時が来たようだな」


大陸の西とその周辺の列島を集めた小さな国。その国の王は呼ばれてこそいなく、存在も忘れされている。しかし、この平和式典に参加するため機会を伺っていた。


「正直だりぃ、だりぃけど妻と娘の為を思ったら絶対的に他の国とまで争う必要はねぇしなぁ…。まぁ、俺が?魔王としての威厳的なもんはとりあえず示しといたらいいか?知らね」


大陸北の辺境にある、欲望渦巻く国。その魔の国を圧倒的力で支配した魔王の中の魔王。大魔王すらもこの平和式典へと参列する。


「元々国だった領土の半分を失うのは辛いけれど、私にその記憶はないし、これ以上国の民の血を見るのも嫌でした。これで良かった」


半島の北の国の女帝。彼女は急に女帝となれとたくさんの男達が家まで迎えに来て、それから必死に頑張った。それでも自分には力が足りない事を知っている。だから平和協定を結ぶ事を決意した。


「皇帝陛下…。遂に我々の国が公式に建国される時が来ましたね」


「あぁ、そうだなトパーズ。我々の勝利…等と言うのは他の国の反感を買いかねんな。我々の平和が訪れるのだ!」


今回の平和協定で最も得をするのは半島の南の帝国。もちろんそこには命を失う事も恐れない強い意志で戦う帝国の強さが恐れられた事が大きく関わる。つまり、この平和協定は彼らの勝利と言っても過言ではない。


様々な者の思惑か渦巻く平和式典がもうすぐ始まろうとしていた。


3


「今日、大陸と半島の全ての民が戦争に怯える事もなく安らげる日。そのための平和式典を開始致します!まずは平和の象徴となる平和の巫女の挨拶からお願い致します」


司会の挨拶から、いよいよ平和式典が始まる。会場に設営された舞台の裏から一人の少女が現れる。


その会場にいた皆が少女を拍手で出迎える中、一人だけ顔が青ざめていた者がいた。


彼はあの青い長髪を知っていた。今ほ整っていないが、あの長さの長髪の少女を見た事があった。


彼はあの飾りも何も無い白い無垢なワンピースを着た少女を知っていた。あの服と同じ服を、上からコートを着てはいたが、あの白いワンピースを着た少女。見た事があった。


あの少女の顔を知っていた。目が光っていない事以外は同じ顔、あの顔の少女を見た事があった。


「言ノ葉の終点-幻想狂-」そこには若くして死んだ者の魂が集まり、そこにいるシンとレディアントの力で現世へと再臨する。


そのレディアントは、青い長髪。白いワンピースに黒色のモッズコートを羽織った少女。平和式典の挨拶に出てきたあの少女と一致している。


ケイにはだいたい察しが着いていた。この平和式典を超えてあの少女が輝ける時はないだろう。いつかはあったとしても若いうちにそれが訪れる事はないだろう。


つまりあの少女はほぼ確実にここで死ぬ。


「私が平和の巫女となりました、レディアントです。本日は平和の為の大きな一歩になるこの式典に来る事が出来た事をここから光栄に思います」


名前も同じだった。やはり彼女はここで死ぬ。なら何故死ぬのだろう。事故か?それよりも誰かに殺される可能性が高い。とりあえずまずは今はあの目立つ場所に立っている彼女を助けるべきだろう。


「危ない!彼女に何か危険が迫っている!」


会場の後ろの方にいたケイは走り出してそう叫んだ。


「それでは多くの人の幸せを…」


閃光の如く何かが壇上のレディアントの胸を貫いた。そのすぐ後、大量の血を噴き出しながら、彼女はその場に倒れた。


「おい、平和の巫女が撃たれた!天士今すぐ治療を!」


英雄エドワードは他の誰よりも早く事態に対する対応策を叫び、指示を受けた天士もそれにすかさず反応する。


背中に大きな白い羽を生やして、壇上へ向けて飛び立つ。しかしその直後、天士の右の羽が飛散する。


「羽を、羽を撃たれたわ!」


制御を失い天士はそのまま地面へと叩きつけられた。


「おい!これをやったのは女帝の所の誰かじゃねぇのか?」


トパーズは直ぐに犯人が半島の北の国の者ではないかと言う。その直後、レディアントが撃たれたの同様にトパーズも血を流して倒れる。


「トットパーズ様が撃たれました!」


「おのれ、穢い奴らが!ここで皆殺しにしてやる!」


皇帝軍の誰かがそう言ったのを皮切りに、女帝軍に向けて攻撃を開始する。


平和式典の筈が、ここで世界対戦が始まった。


「これじゃ精霊の森は…」


精霊の森を憂いていた精霊使いにも、危険が迫っていた。レディアントや天士、トパーズを貫いた何かが精霊使いに向かっていた。しかし、精霊使いに到達する寸前で現界した精霊の森の主がそれを防ぐ。


「君がどうしてここに?太鼓の昔に封印されたはずなのに…」


精霊の森の主は強大な存在であった為、太鼓の昔に他のもの達と合わせて十二禁忌獣として封印されていた。ここに精霊の森の主がいると言うことはその封印が解かれたという事だった。


「バロン、ここで私が死ぬ訳にはいかない。すまないが命を落とす事になっても私を護ってくれ!」


王がそう言った刹那、バロンは遠くに光る何かが見えた。それが今みんなを撃ち抜いた何かである事は一目瞭然。バロンはその光と王の間に割って入った。しかし、バロンの直前でそれは歪曲し後ろに立っていた王を貫いた。


この国の王の死は戦争を加速させる。それだけは防がなければならなかったのに、王は撃たれてしまったのだ。


もうこの式典は既に多くの者の血が流れる死地と化していた。その中で一人、この状況をどうにかする為に動いたの大魔王だった。


「クソ!誰だよ。けど、俺は何処に行けばいいのかがわかった。あの引きこもりを引きずり出さなければならなそうだ」


機嫌が悪い。面倒な事が巻き起こって機嫌が悪い。黒星と呼んでいる右手の先から黒いエネルギーの塊を発生させる。その黒星を掴み取って空を叩き割る。


「おい、聞け!この戦いに俺の国は参戦しない!だが、今ここで戦いを続けるようなら俺は個人的な怒りでお前らを皆殺しにする!」


会場に激震が走り、皆は魔王の存在を改めて痛感する。


その圧はその場にいる者に死を連想させられるものだった。


会場は一旦静まり返る。


「じゃあ、俺は一度国に戻ってから、あの引きこもりをシバきに行く!」


そして魔王は空を睨みつけていた。


4


遥か天空。そこには嘗て、強力な力を持つ種族である龍人達が住んでいた。


その龍人達も十二禁忌獣として封印されていた。やはり、その封印は何者かに解かれていた。天をも穿く岩山の頂上にある梔子城と、その城下町がこの世に再び現界した。


「空が拓けた。つまり封印が解かれたのか…」


空の王であった龍王の雨龍は、その封印が解かれた事をしみじみと感じていた。


5


幻想狂からシンは現世を覗く事が出来る。しかし、覗ける時代は彼が現世にいた時代から時系列に沿ってのみ。好きな時代を覗ける訳ではないが、この平和式典がある事。そこでレディアントが殺される事は知っていた。


だから、覗き見ていたのだが、今よく見知った男と目が合った。正確には本当に目が合った訳ではなく、彼がこちらの方角を睨んでいるだけなのだが、シンには彼が今覗き見をしていた自分の存在に気づいているとさえも思えた。


「この、騒乱の世界。この先の運命はもう誰にも分からない。でも、君たちならきっと大丈夫だよ」


その先にあるのが希望か絶望かも分からない。だが、シンは一人幻想狂にて不敵な笑みを浮かべていたのだった。

次回は三月に投稿予定。

最低月一程度のペースになりますが、お楽しみに

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