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Arcana Starys  作者: はーみっと
1/3

〜嘗て集いし友達へ〜

1


暁の空、黄昏の空。ここの空は常にその二つ。


この世界の中央には光を放つ玉があり、そこから伸びる純白と漆黒の二つの螺旋の柱が、玉から世界の外殻にエネルギーを送りこの世界を維持している。その影響から、ここでは空から純白と漆黒の羽根が降り注ぐ。


玉の周りには幾つもの八面体が衛星の如く廻っている。その中にはここに存在する言霊達の魂が閉じ込められている。これが若くして一度輝きを失ってしまった言ノ葉達の棺。


「そう言えば、シンっていつの時代から来たんだ?聞いてなかったから教えて欲しい」


この世界を作り上げて、維持しているという転翼の覇者-シン-。そんな彼の生前の話をケイは聞いた事がなかった。だから、ふとその事を思い出して、何も考えずに質問した。


ここにいる者たちにとって生前の記憶が良い物である可能性の方が少ない。それはケイの経験則。自分自身アイドルをしていたが、事故で顔に酷く大きな傷を負って光を失ってしまった。


他にも、


令嬢であったが、父を恨む者たちに襲撃され、強姦された後に殺された者。


姫を守る為に戦い、その命を贄に大戦に勝利した騎士。


貧しかったため詐欺師になるしかなかったが、師に騙されて殺された青年。


革新的な発明で天才と言われたが、後に犯罪者と言われ処刑されてしまった少年。


生まれてから両親に地下室に閉じ込められ出る事もなる死んでしまった少女。


おそらくはシンも過酷な人生を歩んできたのだろう。


「あぁ、そう言えば僕の話は全然していなかった。僕が生きている時代はケイと同じだよ?」


ケイはここにいる中で自分と同じ時代に生きた人が居るとは思っていなかった。古い者は神話とされている程に昔から、更には未来から来ている人もいる。後者はケイが現世に蘇る代わりに教えもらう事は出来なかった上に、未来の話なので本当かどうかの確かめる事も出来ないが。


「まさか同じ時代の人が居るとは思ってなかった。で、シンは何をしてたんだい?」


何か知っている話が出るかも知れないと、ケイは内心でワクワクしていた。


「そうだね、僕は嘗て友人達とヒーローごっこをしていたんだ。もちろんその友人達はみんなケイが戻った今でも元気にしているよ」


2


王都セントラルには特殊な職業がある。街に発生するトラブルを解決して金銭を貰うその職業が『英雄(ヒーロー)』。


嘗て王城の守護を任された守護者であった、エドワード・ビーク・フィスタ・ラティス・イクリス。幾つもの守護者の家系が統合した結果この様な名前になったのだが、守護者家系の誇るサラブレッドの彼だが、八年前に起きた事件の影響で。王を護るよりもこの国の民を護る事を決め、英雄と言う職業を立ち上げた。


発起者である彼が立ち上げたチームはセントラルで最も強いチームであるとされている。栄誉ある黄金のライフルを携えた狙撃手、カイ。祈る事で傷を癒す自称天使の天士。国一の格闘家、ゲン。天才と称される美少年剣士、馬鈴。


他にも英雄達のチームは数多くあり、最近ではチョー絶カワイイ美少女ヒーローを名乗るモモ&リンゴを初めとする新世代も続々と現れている。


中でも、英雄発足当初から活動しており今なお人知れず英雄活動に勤しむ一人のヒーローがいる。その通称孤高の英雄こそがシンと共に嘗て、英雄ができる前にヒーロー活動を行っていた創創(つくりはじめ)


彼のスタイルは、口上を名乗る怪人であろうが気にせずに一刀両断。その時に「はい5万!」と叫ぶのが孤高の英雄の特徴である。孤高の英雄と呼ばれるのには訳があり、誰にも自己紹介せず、誰ともチームを組んでいない。この二つから名前も分からない謎めいた人気ヒーローとされている。


「あぁ、金なくなってきたぁ。ちょっと、買い物行く序に怪人でも狩って金稼ぐかなぁ」


数分前、創はそう言って家を出た。もちろん毎日怪人が徘徊する訳でもないが、創が怪人を狩りに行きたいと思う日にはいつも怪人が街に現れる。


全身黒色の剛毛に覆われ、頭からは大きな角の生えた怪人。彼は街に来るなり暴れだしていた。


「いいか!よく聞け!俺様はグ「はい5万!」グオォ!」


創が持っている両手剣は『創世の剣』その真なる力を発揮すれば、全てを斬る事ができ、そして全てを創り出す事が可能。


「あの!すみません!あなたが噂の孤高の英雄さんですよね?その戦いぶり、流石です!あ、私も英雄として活動させてもらってます。モモです!是非その強さの秘訣とか教えてください!」


そうモモが話しかけたが、創はそれを無視して歩き出す


「えぇ?無視ですか?それはちょっと酷いと思います!」


無視をした創に構わず、モモはその後を追ってくる。正直創にとってこの様なタイプの人間は苦手以外の何ものでもない。


「ちょっと急いでるから」


創は振り返った後で、今度は無視するのではなく面と向かって断りを入れた。


「ちょっと、ちょっとなら良くないですか?」


それでもしつこく絡んでくる。創は単純に腹が立った。つい強く言ってしまいそうになった時、モモを後ろからおってきたであろう少女がモモに声をかけた。


「もうモモちゃん!あんまり人様に迷惑かけたらだめだよ。ほら、孤高の英雄さん急いでるでしょ?きっととっても大事な事なんだよ。きっと世界の存亡とかがかかった用があるんだよ。なのに引き止めちゃダメでしょ?」


そんな大した用事でもないのに、意味のわからないハードルの上げ方をされる。更にモモはそれを信じてキラキラとした目で創を見る。創はこの二人を非常に苦手に思った。


「いや、ゲーム買いに行くんで…。じゃあ…」


3


世界は広く、まだ見た事ない景色が多く広がっている。そう信じて彼らは世界を巡る旅に出た。


「おい、いつも言っているだろう。僕はあまり体力には自信が無いんだ。だから、速い速度で歩かれると追いつけないんだ!」


氷剣を使う黒髪の青年、ハルは他の旅の仲間である、ナツ、アキ、フユを後ろから必死に追いかけていた。


「もっと体力を付けた方がいいと思うぞ?だから俺と体を鍛えるんだ」


リーダーである陽剣使いのアキは、ハルとは違い肉体派であり、体力には自信がある。普段から体を鍛えている事もあって体力がなければ付ければ良いと言う発想で話す。


「それは確かに思わない事もないけど、筋肉がエネルギーを使って魔法の邪魔をする。だから鍛えられない」


二人はいつもこのやり取りをしているが、実の所は体を鍛える事で疲れた状態での魔法の行使に支障が出るだけで、体を鍛える事が魔法に影響する事はない。


そこにほかの二人、ナツとフユも入ってくる。


「鍛えないにしろ、歩いて旅をするなら最低限の体力があった方が良いかもね」


高身長でシュッと伸びた手足、それでいながら緩い雰囲気のナツはのらりくらりとした性格であまり直接的な厳しい事も言わない。


「やっぱり、女の子の私よりも体力がないのはどうかなって思うよ?」


肉体派なのはナツとアキであり、フユもそこまで体力に自信はない。そんなフユよりも体力のないハルは相当なのだ。


「あっほらハル、岡の一番上まで登ったら、向こうに新しい町が見えて来たよ?」


岡の上まで登りきったナツはそう叫んだ。それだけではナツの心は満足しない。


「じゃあ、俺は先に行ってるよ!」


そう叫んでナツは一人、町の方へと駆け抜けていく。風と等しい速さで走れるナツはあっという間に町までたどり着く。ナツが初めに町に着くのもいつもの事だ。


「おぉ、ナツくん!また会ったな」


町の入口にはナツの顔なじみである時雨という中年の男が立っている。彼とは旅の途中でよく出会い、ナツが訪れた全ての町で出会っている。ここまで来れば何故出会うのか不思議で、恐ろしくもあるが、ナツはそのような事は気にしていない。


「あ、時雨さん!また会ったね。それでこの町はどうだった?」


時雨はいつもナツに、町で行っておいた方が良いスポットを教えてくれる。


「また会っちまった好だから、またいい事を教えてやる。この道の先、角を曲がった所にあるパン屋がすごく絶品だったぜ」


その言葉を聞いて、ナツは勢いよく走り出した。オススメしてくれたパン屋のパンを買って、みんなが着いた頃合流して、みんなでパンを食べる為に。


しかし、角を曲がった時、刃物を持った男がパン屋の中に入っていくのが見えた。何かマズい事が起こっているような気がしたナツは急いでパン屋へと駆け込む。


店の中からはパンのいい匂いがする風が吹き抜けてきた。しかし今は案の定、パン屋の中では刃物を持った男が店員を脅している。


「さぁ、ほらとっとと金を出しやがれ!儲かっている事はわかってるんだよ!オラ!」


男は店の扉が開く事に気づき、振り返った。


「おいおい、兄ちゃん大変なタイミングで入って来ちまったようだな。ほら、死にたくなかった奥まで行ってじっとしてな」


ナツは扉も開けたまま店の奥へと追いやられる。ナツは男に刃を突き立てられながら店の奥へと進む


そう長くは経たないうちに、店員は金を袋の中にありったけの詰め終わり、男はそれを手に取った。


「よし、お前ら、俺が今から渡す手錠を片方の手に着けて、もう片方の手錠をそこの柱に着けて大人しくしてろ!」


ナツと店員は言われた通り大人しく手錠を着ける。それを見終えた男は安心した様子でいた。


「よし、じゃあな」


そう言って、外へ出ようと歩き出した所は次の瞬間、幾つもの粘性のある物体が身体中に纏わり付き、身動きが取れなくなっていた。


「華弁・創造・桜吹雪。それは俺のちょっとした技だよ。観念しな強盗さん」


動け無くなってからも更に粘性のある物体はその量を増していく。


「ちなみに、手錠の鍵はさっき横を通った時に見つけてこっそり盗っちゃったごめんね」


ナツは自分と店員の手錠の鍵を開けて自由の身となり、その後はその手錠を強盗の手に嵌める。その後金の入った袋を店員に返した所で、先程まで恐怖に染まっていた店員の顔色は元に戻る。


「じゃあ、友達もいるから、友達の分も合わせて4つオススメのパンを買いたいんだけど?」


ナツは何事もなかったかのように店員にパンを注文した。


「いえ、そんな!助けて頂いたのにお代は結構ですよ。是非好きなパンを持って行って下さい」


ナツは別に受けた親切を断るタイプではなく、お店にあったパンの中から幾つかを手に取ってお礼を言う。


「ありがとう、それじゃあまたね」


ナツが一人町のトラブルを解決するのもいつもの流れであり、このタイミングで合流した他の三人ももう慣れていた。


「こっちで強盗騒ぎがあったって聞いて来てみたけどやっぱり居たんだな、ナツ。セントラルにいた時からずっとトラブルが好きだなぁ」


アキのその言葉に店員が反応した。


「あのすみません、見た所この辺りの人ではなさそうですが、あなたが噂のセントラルにいる英雄なんですか?ありがとうございます!」


「別に俺達は、途方もなく世界をフラフラしてるだけの旅人だよ?」


ナツはそう言って、店を後にした。


4


「いずレ世界はデストロォォイィ!その前に私がクァーミになれねばッ!ファァァァァ!」


セントラルの地下の暗い部屋。ここに一人で暮らす研究者のオタリは伝説の生物を作り出し、それを自身に移植する事で神になろうとしていた。


人差し指を立ててキーボードを高速で押していく。独特のスタイルのタイピングで、研究の最終段階へと移行する。


「これぞ私が作り上げた、最高の竜!これまた私が作り上げた、素晴らしい旧支配者…。遂に遂につ・い・に!私が神になる時が来たのだァァァァ!」


オタリは大きく股を広げ、腕を上げながら歓喜する。その奇声を聞くのは養液の中に漬けられた異形と言うべき実験体達だけ。


「八年前のあの失敗から私は学んだァァァ。あの時は知能までもを依存した為に暴走してしまったのだッ。だァが今度は違う!私が制御出来るのだから、暴走するはずがないのだ!ファァァァ」


オタリは秘密結社から実験のための金銭を受け取り、その金で異形を作り、動作確認の為にセントラルへと放つ。そして、それをオタリが開発した装備を搭載した秘密結社のエージェントが倒し、その謝礼金を再び実験費用へと還元する。


そんなオタリは実験の最終段階を開始するため、その人差し指でキーボードのエンターキーを押す。


「さァ!遂に私がクァーミになる!」


奇声を上げながら、実験室を駆け抜けて混合実験を行っている実験室へと駆け抜けていく。


5


この世界には影で世界を守る為に暗躍する秘密結社がある。大金を貰う代わりに彼らは様々な兵器を駆使して世界の平和を脅かすもの達と戦っている。


もちろんこの事は裏社会での話で、表の顔はまた別にあり、この秘密結社のエージェント達は超人気アイドルとして世界中を飛び回ってパトロールしている。


「みんな!今日は来てくれてありがとー」


少し、力の抜けた挨拶をするのはこのアイドルユニットのセンターを務める、キリ。非常に可愛らしくアイドルらしい見た目であるが、その実男であり、アイドルも無理やり任務で行っている。


「ちょちょちょ、それは知ってる話だ。と言うか俺がプロデュースしてるアイドルじゃんか!まさかキリの知り合いだったよかよっ」


シンがキリの話をしようとした所でケイは話を切ったのだ。


「まぁそうだね、キリとナツの従兄弟兄弟とは昔仲良くしてたよ」


けいはそこで先程の話に上がったナツがキリの従兄弟であった事を知った。


「情報量が多い…もう、話してくれなくて良い」


ケイがそう言った事でこの話は終わった。


「嘗て集いし友達へ。どうやらこれから世界は段々と大変な事になっていくみたいだよ…。でも気を引き締めて、みんなが死なない事を祈っているよ。いつかまた会える時まで…元気でね」

次回は2/14日

バレンタインエピソードです。

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