パスワード
繋がりを残す約束は無くなって、掛ける言葉も焼け落ちる。
黒く塗り潰した手紙が束になって、存在証明の保管場所を埋め尽くしてしまう。
震えるメッセージは切断された。
言いかけた言い訳は、退屈しのぎの餌に格下げされて廃墟の城を漂っているだけ。
自信ありげに並べられた血族の足跡に恐れおののいて、進めるはずの道すら無くしてしまう。
颯爽と歩く群衆に惜別の歌を!
淀んだ声を転がして、秘境になれない心の底へ。
貪れ、貪れ、原形留めぬ未来を目指して!
優しい弱さを棄ててまで、すがりつく未来に何を見る!
ばら蒔かれる暗証番号を手にして、今日も一時の恋人を演じているあなたは誰ですか?
甘い笑顔を味わいたくて、不必要な荷物を預けてしまう私は誰ですか?
終着の知らせは、無意味に難解な合い言葉を授けてくれる。
サインをくれ!サインをよこせ!
これで今日はお別れ。
滑らかなペンを駆使して、言いかけた言葉は塗り潰される。