~process to front line~
~1章 チームデスマッチ~
そこは元は人の営みがあったのだろうか家の瓦礫らしきものが散在する場所だった。
「なんだお前、見ない顔だな」
そう野太い声で後ろから声をかけられ、振り向いてみるとそこには私よりもずっと大きい男性がいた。
ますます状況が掴めなくなり、その男性に尋ねた。
「ここはどこで何をしているのか教えてもらえますか?」
すると、その男は
「何って、お前の肩に下げてるもので大体は理解出来るだろ」
そう、ぶっきらぼうに答えた。
私は、銃を持っていた。
これは…
「AK47!?」
無骨なそのフォルムは紛れもなくゲームで使っていたものと同じだった。
「おっ、知ってんのか? 傭兵は敵を殺せれば何でもいいってやつが多くてよぉ」
「傭兵?」まだいまいち掴めない。
「そうだ。お前はただ、敵を殺すだけでいい。簡単だろ?」
どうやら、戦場の中に放り出されたようだ。
だが、なぜ?おかしくなったのは家で倒れてからだ。
ただ一つわかるのはこれは間違いなく夢ではないということだ。
「さあ、そろそろ移動だ」
そう言うとほかの厳つい人たちに近寄っていき、
「さぁ移動だァ、野郎ども!」と叫んだ。
すると、ほかの傭兵たちは
「おっさーん、あんたいつの人だよ。もう少しマシな掛け声にしろよな」と威勢のいい声を上げる。
そんなことを言われたおっさんは、
「昔はこういう掛け声する奴が沢山いたのになぁ…あと俺はマグルって言うイカした名前をママから貰ってんだ。おっさんなんて名前じゃねぇ」
そんな益体もない話を続けているとやがて銃声が近くなる。
「さあ、そろそろドンパチ始めるか!お前ら、弾は持ったか?下にくっついてる玉は忘れても弾は忘れんなよ!」と言って場を和ませる。
女である私にはその玉は付いていないし、何処をどうやったら忘れるのか分からないが取り敢えずはマガジンを持てるだけ持っておこう。
「お、重い…」
こんなので走るなんて考えられないというくらい重い。
「こんなの序の口だ。狙撃手の持つ弾薬なんかもっと重いぞ。と言っても弾の必要な数がちがうからわからんが」
結局どっちなんだ…
そんなことを思っていると前線の方から射撃音が聞こえ始めた。
気を引き締めなければ。殺さたらどうなるのかも分からない。
マグルと名乗ったこの男は少しためらいながらもこう言った。
「あんた女だろ?後方支援に徹してもらっても構わないんだがどうするよ?」
「その顔をしといて意外と思いやりのある優しい方なんですね。でも、心配しないでください。」
死なないようにするとは言ったがそれでも本物の銃を撃ってみたい気持ちもある。そんな迷いから結局前線に出ることにした。
『前やってたゲームでチーム同士の戦いは知っている。なんとかなるはず 』
そんな軽い気持ちで前線に出たのが運の尽きだったのかもしれない。