5話 変わった従妹 ディラン視点
来月から始める、新しい貴族との商事についての計画を練っていると疲れが出てきた。
「もうこんな時間か...ん?」
ふと外に目をやると、従妹のクリエラの部屋にまだ明かりが灯っているのが見えた。
「(こんな夜にどうしたのかな...体調を崩されたら面倒だし、様子を見に行くか。)」
今までクリエラが夜ふかしをするなんて無かったのに。
★★★
「クリエラ。入ってもいいかな?」
「えっ?ディランお兄様?どうぞ。」
「もう夜だけど、何をしているの?」
ドアを開けると、クリエラが木剣を片手に持ち、片方の手で汗を拭いていた。もしかして....
「深夜なのは分かっているのですが、今日の練習の復習をしたくて。」
「へぇ...凄いね。クリエラから"復習"なんて言葉、初めて聞いたよ。何かあったの?」
「えっ、あぁ、ただ...成長したいだけですよ。」
彼女の額に僅かに冷や汗が浮かぶ。....何かを隠している?返事も少し焦っていたし......。
「そっか。頑張ってね。でも、寝不足は健康に悪いからそろそろ寝るんだよ?」
「はい。お兄様も、何時も夜分遅くまで起きていらっしゃいますが、体調管理に気を付けて下さいね。まぁ、私が言える事ではないですけど...。」
「あぁ、僕もそろそろ寝るよ。ありがとう。」
やっぱり、変わったな。
「(誰かに体調を心配されるなんて、初めてだなぁ....。)」
このまま良い感じに成長していってくれたら、きっと彼女の結婚は早いだろう。そうなれば、自分はグラス家を継ぎやすくなる。それに、早く別の家に嫁いでもらわなければ、お祖父様は彼女を家主にするかもしれない。
結婚をするまでは大人しく自分磨きをしてもらおう。そして、良くも悪くも彼女には早く結婚をしてもらいたい。
「(いきなり性格が変わったんだ。また元に戻るの可能性もある。どっちみち注意が必要かな。)」