4話 自分磨き開始
自分磨きをすると決めた日から私は、勉学や習い事を1からし始めた。クリエラは今までさんざん授業をサボってきたせいだ。ちなみに、ダンスの腕は幼稚園のお遊戯レベルだ。唯一まともに出来るのはマナー位。
地位がある貴族にとって教養はある程度必要だ。クリエラはそれさえ身に付いていないが、無駄にプライドは高かったらしい。マナーを守れないことで馬鹿にされることは嫌で、自ら進んでマナーを勉強していた。だからか、マナーに対する思いと努力だけは周りに認められている。
「(全てにおいて努力していない訳でもなかったし、それを周りに認識されているから、イメージをアップさせるのも思ってたより早く出来そう。それにしても...)」
庭で剣術の訓練をしているディランを見る。若い頃のお祖父様は剣術の達人で、時々ディランに剣術を教えている。今日はその日らしい。何時もよりキツい訓練に、流石のディランも苦しそうだ。
「(私も剣術を学びたいなぁ。)」
前世では強く、美しい女性に憧れていた。まぁ、平凡な女子高生には無理な話だったが。それに、護身術がある程度身についていると、もしもフラグを折りきれず攻撃された時に生き残れるかもしれない。
「(私が生まれ変わったのは悪役令嬢、クリエラ・グラス。ゲームのライバルキャラで、取り巻きと言う訳でも無かったので見た目は前世と比べたらとても良い。)」
今世こそ、その夢を叶える時だ。本来、女性が戦に関わることは良いと思われない世界だ。しかし、前世の世界にいたように、強い女性に憧れる者は男女共に少なくともいる筈だ。
「(それに、お祖母様も若い頃はバンバン戦に関わってきたしね。)」
軍師や戦争相手国へのスパイ、時には男装して剣を握り、戦ってみたりしていたらしい。お祖父様とお祖母様の2人が協力した戦は負けることが無いという...。
「カッコイイ〜!」
私は昼食後の休み時間に剣術を教わりに行くことを決めた。
★★★
と思っていたが、私に甘いお祖父様の事だ。"女の子がそんな事をしたら傷がつく!"とか言ってきそう...。どうにか言い訳をしなければ(私の夢とフラグの保険の為にも)。
「お祖父様!」
ディランとの訓練の休憩中のお祖父様に声をかける。
「なんだい?クリエラ。」
「私にも、剣術を教えてください!」
お祖父様に頭を勢いよく下げる。ポカーンとするお祖父様。
「いきなり...どうしてだい?」
私は頭を上げ、お祖父様を見つめる。
「私は今まで、強くて、聡明なお祖父様に憧れていました。私も強くなりたいのです。また、自身を守れる程の力を最低でもつけたいのです。......駄目でしょうか?」
懇願の瞳を向け、眉を少し下げる。ちなみに、私はめちゃくちゃ強くなりたい(強くなればなるほど殺されにくくなるだろうし)。ムキムキにはなりたくないので、ある程度だが。
「私達が守るよ。だから...」
私達って誰達だ。
「しかし、ずっと私を守る訳にはいきませんし、それは不可能です。私が出掛けるときに何時もそばにいる訳にはいかないでしょう。」
「ふむ。しかし...」
お祖父様が難しそうな顔をする。すると、さっきまで興味なさそうにしていたディランがお祖父様の背中を押してくれた。
「お祖父様。良いではないですか。もしもの時の護身術は、必要だと思いますよ。」
「お祖父様、私、強くなりたいのです!守られてばかりいる弱い令嬢は嫌なのです!私には、お祖父様しか居ないのです!(教えてもらう人は)」
「そこまで言うなら...仕方がないな!」
いよっしゃ!心の中でガッツポーズをする。最後の言葉が聞いたのか、お祖父様は嬉しそうだ。
「では、早速始めようかの。」
お祖父様が立ち上がり、倉庫から模造剣を持ってきて、私に手渡す。
「え、お兄様の訓練は...。」
「僕はもう終わったから。クリエラ、行っておいで。」
「行ってきます...。」
その前に、動きやすい服に着替えてこよう。
「この服では運動しづらいですね。着替えてきます。」
「ああ、そうするといい。」
★★★
「お待たせしました。」
「よし、では始めるとするかの。まずは庭の柵に沿ってランニング10周だ。」
お祖父様が笑顔で言う。
「(じゅ、10?!?!)」
ひえぇ〜!!ハード過ぎる!!!
「(しかしこれも命を守る為。頑張ろう!!)」