2話 令嬢VS従兄弟
「"ひぃっ"って、どうしたの?僕に対して何か嫌な事でもあるの?」
"せっかく見舞いに来たのに"と苦笑いをするディラン。笑っているのに、私に向けるその目は冷たいものだった。
「失礼致しましたお兄様。目覚めたばかりだからか、私は少し混乱しているようです。お兄様が一瞬何重にも見えて驚いたのです。」
私は嘘の言い訳を言う。この嘘がバレなければいいが。疑いの目を向けられていないか不安に思い彼の方を向いてみる。私の目に見えたのは、彼の驚きの表情だった。
「あの、お兄様?」
「...ふ〜ん。あ、もう少しでお祖父様とお祖母様が来るよ。」
「そ、そうですか。分かりました。」
では今、お祖父様とお祖母様が来る前に茶会を断る事と、誰とも婚約したくないという事をディランに伝えよう。
「あの、ディランお兄様。お話があります。」
「ん?何かな?」
「ダニエル様からのお茶会をお断りさせて頂きたいのです。」
「....どうして?」
ディランの顔に少し影が指す。そりゃそうだ。今までの私は横暴ワガママ少女。実際、ゲームでもクリエラは従兄弟であるディランにさえ嫌われていた。最終的に彼に殺されるし。
「お兄様...私は今まで横暴で、ワガママで、両親をなくした行き場のない悲しみを周りにぶつけていました。
しかし、私はもうこのような自分に別れを告げ、新しく生まれ変わりたいのです。
そのために、少しだけ時間を下さいませんか?本の数日で良いのです。今の私ではワトソン家の方々に迷惑をかけてしまうかもしれません。」
「...分かった。茶会は断っておくよ。」
「!!ありがとうございます!」
ダニエルとの関わりを断つことが出来て思わず笑顔になる。
「...。話はそれだけかな?」
一瞬沈黙があった所が気になるが、本題に入ろう。
「もう一つあります。私はいつか誰かの家に嫁がなければなりませんよね。その方がグラス家の為になる事も知っています。でも...」
「クリエラ。」
「はい...(あっ、ヤバイ)」
突然話を遮られ、下げていた頭を上げる。ディランは微笑んでいた。しかし、目は笑っていなく、冷たさを感じさせる。
「婚約する事が出来なかった令嬢がどうなるか知ってる?」
「し、知らないです...。」
ディランが窓際に歩いていき、外を見る。
「家の役にもたてない者は、邪魔者扱いされる。適当に王宮貴族の遊び相手に送られたりする。婚約しないまま家に居させてもらえるなんて、普通はありえない。もし、クリエラがそうなったら可哀想で見てられないよ。クリエラ、早く婚約相手を見つけるんだよ。君のためだからね。」
ディランは外から視線を外し、私を見る。怖くて私は視線をそらしてしまった。彼が優しげに微笑む。
「あぁそうだ。話の続きは何?」
「いえ、ただのふざけ話です。気にしないで下さい。でも、お茶会の件はお願いします。」
やはり、婚約をしないという事は許してもらえないか。
「うん。分かったよ。」
仕方がない。ゲームと関係のない人と婚約しよう。
そうと決まれば、早速人探しだ!!
「(それにしても、お兄様は13歳の子供相手に結構キツイことを言うのね。)」
あ。でも、この世界では13歳はもう子供ではないのか。大人という訳でもないが。それに、今までのクリエラの性格を考えたら早くグラス家から出て行って欲しいよね。
この会話を最後にして、お祖父様とお祖母様が来るまで二人は無言だった。
私の人生、こうなったら何としてでも全ての死亡フラグを折って幸せな生活を手に入れてみせる!!