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死亡フラグを回避したいだけなので!  作者: 春河マキ
第1章 回避のために
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1話 過去の記憶

「でね!ダニエルがそこで主人公をね!うふふふふふふ。」


「机が割れるから叩かないで」


 今机を叩いている友達は、乙女ゲームが好きで、私によく布教してくる。一度もやったことがない私だが、今彼女が語っている『王宮物語』は面白そうだなと思う(名前は地味だが)。そのことを伝えたら乙女ゲームの沼に引きずり込もうとしてくるだろうから言わないけど。


「そういえば...」


 彼女が私の顔をジッと見つめてくる。どうしたのだろう。疑問に思い、首を傾げていると、彼女の口から嬉しくないことを言われた。


「あんたの顔って、このゲームの悪役令嬢であるクリエラに似てるよね!」


「...え?」


 クリエラは彼女が言ったとおり『王宮物語』に出てくる悪役令嬢で、主人公をいじめる役である。悪役に似ているなんて、例え顔でも嫌だ。


「(まぁ、ブサイクではないけれど...)」


 クリエラは皆が振り向く美少女でも、守りたくなるような可憐な少女でもない。美少女なのはクリエラと共に主人公を虐めるミシェル王女だ。


「あーあ。私もこのゲームの主人公になれたらなぁ!」


彼女はうっとりと空を見つめた。


「そんな事、あるはずないよ。」


「も〜、つまんないの!」


★★★


ー友人よ。私の前世の友人よ。そんな事合ったよ。合ってしまったよ!!


「うそ...でしょ?」


「お嬢様?!お目覚めになったんですね!お知らせしないと!」


 部屋の中にいたメイドのエミリーが私が起きたことに気付き、家族を呼びに出ていく。


 そう、私は気絶していたのだ。何故気絶したかというと...


 クリエラは生まれつき両親がいない。クリエラが7歳の頃、馬車の衝突事故に巻き込まれたらしい。

 両親が死んだ頃からそのストレスからか周りに当たり散らすようになっていった。そして現在12歳の彼女は見事なワガママ横暴令嬢に育ってしまっていた。


 今日、そんなクリエラのもとに一通の手紙が届いた。差出人はダニエル家の時期伯爵のダニエル・ワトソンだ。


 捻くれた性格のせいで今まで一度も男性に相手をされたことがないクリエラは、ダニエルからの手紙に狂喜乱舞した。


 そして、テンションが上がりすぎたクリエラはうっかり階段で足を踏み外し、床に頭を打ち付けて意識を失った。


 ちなみに、手紙の内容は伯爵家同士の仲を深めるための茶会への招待だった。別に婚約を申し込まれた訳でも何でもない。


「(あぁ、どうしよう。あの悪役令嬢クリエラ・グラスになってしまうなんて...。)」


 クリエラは、原作で例のダニエルと結婚する。それは完全にクリエラの一目惚れが原因なのだが、ダニエルは性格の悪い彼女を嫌っていた。

 このゲームでは全ての攻略対象が主人公を好きになる不思議な設定で、プレイヤーがどう行動し、悪役令嬢等の障害を乗り越えていくかで最終的に結ばれる相手が決まる。


 そう、主人公がダニエルを選ぶと、主人公と結婚するために邪魔なクリエラは彼に殺されてしまう。


 しかもなんと、プレイヤーがダニエル以外の男性を選んでも、主人公を虐めて傷付けたという理由で殺される。ミシェル王女は王女という立場を考慮してかどのルートでも殺されはしない。


クリエラに対して酷くないか。


Γ(そして、よりにもよってクリエラに転生してしまった私って...。)」


 頭をフル回転して何か生き残る方法を捻り出そうとする。


「あっ!そうだ!!」


 いっそのこと、誰とも結婚しなかったら良いのではないか?


「いや、お祖父様とお祖母様は私に甘いから許してくれそうだけど...ディランお兄様がなぁ。」


 ディランはクリエラの従兄弟で、グラス家の時期伯爵だ。4歳年上で、彼も立派な攻略対象だ。


「(従兄弟だけど、ディランお兄様も...)」


 幼い頃からクリエラはディランを熱い目で追っていた。眉目秀麗で優秀な彼だ。淡い(?)恋心を抱いていても可笑しくはない。


 しかし、前世の記憶を思い出した今は、彼が怖い。なぜなら...


「クリエラ、ようやく目を覚ましたようだね。」


「ひっ、ディ、ディランお兄様...。」


 彼が、クリエラとダニエルを結婚させた張本人で、従姉妹を殺すこともいとわない腹黒な少年だからだ。

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