1-9 清州会議に俺も行くのかよ
山崎の戦いの後、俺は近くにあった山崎城へ小一郎らと共に落ち着くことにした。
皆は戦後処理に忙しくしているが、俺はそのあたりのことはまかせてのんびりさせてもらっていた。
正直、何していいやらわからないからな。
この時代に転移してきてから、慌ただしく駆け回ってたからやっと少し落ち着いた感じだ。
アイテムボックスの整理とかしながら、ひたすらゴロゴロしていた。
それにしても、この時代に来てからさっぱり女っ気がないよな。
各地の様子がやっとわかってきたようで、いろいろ俺も教えてもらっていた。
徳川家康は史実通り伊賀越えに成功し、三河に辿り着いてすぐに軍を編成したようだが、山崎の戦いの結果を知り引き返したようだ。
小一郎から送った戦勝報告に、祝いの書状とか届いてたからとりあえずは放置しておいてよさそうだ。
そちらは一安心だな。
柴田勝家は上杉との戦いを配下にまかせ、居城で準備を整え途中まで進軍したところで、山崎の戦いの結果を知りそのまま尾張へ向かったらしい。
どうやら柴田勝家の呼びかけで重臣たちによる織田家の今後の方針について話し合う会議を開催するらしい。
いわゆる清州会議ってやつだな。
「織田家の重臣ってのはどんな奴らなんだ?」
「もともとは、柴田勝家殿、丹羽長秀殿、明智光秀殿、滝川一益殿の四名でした。
明智殿が死に、滝川殿はこのたび関東の領地をすべて失ったため重臣から除かれるようです」
官兵衛が状況を簡潔にまとめてくれた。
「丹羽殿へ根回ししたことにより、池田殿の重臣昇格はさほど問題なく進みそうです。柴田殿にも反対はないかと。
それに加えて池田殿からも進言していただき、小一郎の重臣昇格までいきたいと」
「それはいいな、小一郎の発言力が増えてくれるといろいろこれからのことが大変だろう」
「まぁ小一郎に大功ありとしないと、池田殿も自分の功が霞みますし、丹羽殿は四国討伐軍が四散したことを有耶無耶にしたいでしょうしね」
「それで重臣会議は数の力でこちらの主張通りに押し切れそうなのか?」
「そこまできてやっと互角ってところが柴田殿の力でしょうね。
まぁそのあたりの筋書きについてはおまかせください」
「悪知恵に感じては官兵衛にすべてまかせておくよ」
「それで悪知恵の一つになるんですが、翔太にも清須に行ってもらいたいと」
「俺も行くのか?
まぁ俺が行って力になれることがあればするが」
「いや行くだけでなく会議にもそのまま出てほしいと」
「なんで俺が、俺は重臣どころか織田家の家臣でもないぞ」
「まぁ顔合わせも必要でしょうし」
「他の面々はすでに知ってるから、柴田勝家との顔合わせか」
「これからの一番の強敵なれば」
「まぁ強敵の顔を拝んでおくのも一興か。
会議の筋書きと俺の役どころが決まったら教えてくれ」
「それはすでに」
官兵衛がすっごく意地の悪そうな顔してる。
筋書きを聞いてみると、よくぞここまで考えるなってくらい細かいことまで考えられている。
俺の役割はいろいろ紛糾してきてどうしようもなくなった時に力づくでっていうことらしい。
まぁいくら考えても、こちらの思惑通りに行かないことだってあるからな。
たいして覚えなければならないセリフとかないようなので気楽なもんだ。
会議まではまだ十日ある。
小一郎や官兵衛はいろいろ工作に忙しそうだ。
このまま、ここでゴロゴロしてるのもつまらなそうなので俺は一足先に清須へ行かせてもらうことにした。