1-6 毛利との和平交渉
さてここから引き返すとなると問題となるのは毛利か。
「毛利との和平ってのはなんとかなるのか?」
「実はそちらも進んでおりまして、五国割譲の線で話がまとまりつつあります。
ただ、上様に報告するにあたり、城主の清水宗治の切腹を条件にいたしたところ毛利のほうはこれに反発し、平行線となっております。
この点でこちらが譲れば、交渉も成立するかと。
ただこれまで強行に主張していたことを急に譲れば不審がられる恐れも」
官兵衛からの説明でだいたいのことは理解できた。
「どうやって交渉をすすめるかが問題だな。
俺が力を誇示して脅すか。それともいっそ、こちらの事情を話すか」
「毛利の小早川隆景は話のわかる武将です。ただ吉川元春が強行でなかなか話がまとまりません。
いっそ、その両方を取ってみる手も」
官兵衛にどうやら策があるようだ。一芝居打ってみることにするか。
「ちょうど総大将の毛利輝元も含めた三川が対岸にいるようです」
「よし、飛ぶぞ」
上空からそれらしい人物のステータス確認。
名前:毛利輝元
職業:大名
あいつで間違いなさそうだ。
おれは、官兵衛と小六を引き連れて、毛利輝元の前に瞬間移動した。
毛利勢は当然のようにざわめきだった。
「静まれ」
俺が一喝すると、とたんに周りは静かに。
まぁスキル効果が乗ってるから、こうなるんだが。
「緊急の事態が発生したため、急な参上を失礼いたす。
和平の使者にござる」
打ち合わせ通り、小六が口上を述べ始める。
「こちらの菅原殿の知らせにより、緊急の事態が発生したため、我軍はこれより引き返すこととなった。
それにあたって、かねてからの主張通り五国割譲をもって和平としたい。異論はあるか?」
「いきなりやぶからぼうになんだ。その勝手な言い草は」
ステータス確認。
名前:吉川元春
職業:武将
気の短そうな武将がいきなり口を挟んできた。これが吉川元春か。
「まぁ兄上、それにしても緊急の事態とはいったい。そのあたりをお話願えませぬか」
落ち着いた感じの武将がそれをたしなめた。
こっちもステータス確認。
名前:小早川隆景
職業:武将
こっちが小早川隆景か。
「聞くな」
俺は静かに低い声でつぶやいた。
官兵衛の注文である。
「どうしても聞くとあれば、俺が力を振るわざるを得なくなる」
そう言うと俺は振り向くと後方の無人のあたりに派手に雷撃を落とした。
そして官兵衛がそれに続いて台本通りに、
「この菅原殿は一人で数万の兵を倒すだけの力を持っております。しかし、心優しいお方ゆえできればその力は使いたくないと。
ここから引き返さなければならない事情はどうしても今はお話できませぬ。
何卒、今は我らに恩を売ってくださらぬか」
「恩をとな」
吉川広家が俺の目を睨みつける。
しばらくじっと見つめたあと、不意に振り返って、
「恩を買わせておいてもいいか。
隆景、細かい話はまかせた。
輝元様、ここは奴らに騙されておいてやりましょう」
「待て、条件は五国割譲のみ。
それに相違ないな」
毛利輝元が念を押すように尋ねた。
「相違ありません」
官兵衛はかしこまってそう答えた。
「ならばよい」
「お急ぎのようですので細かい取り決めは後日でよいでしょう。
その際にすべて話していただけますね」
小早川隆景が落ち着いた声でそう締めた。
「約束する」
俺は勝手にそう答えた。
「つきましては一つお願いが。
毛利の旗を百ほどお貸し願えませぬか」
官兵衛も台本にないことを言い始めやがった。もう策は次の戦の方に向いているようだ。
油断ならないって言うか、頭の回転が早すぎるんだな、こいつは。
「旗とな……
我らの戦も終わったことであるし、不要の旗を捨てていくことにしましょう。
捨てたものを勝手に拾われて利用されても文句は言えないな」
少し考えた後、小早川隆景はそう答えた。旗を何に使うかわかって言っているようだ。
「かたじけなく」
これで木下軍に毛利が協力してるって絵が作れるわけか。
吉川元春に小早川隆景か、どっちもなかなかの武将だな。
あの二人がいる毛利家は敵にしないのが一番だろう。明智との戦いの後に上手く同盟できそうな気がする。




