3-8 女神様再び
大阪城は完成間近。
まぁ、細かい装飾などがまだというだけで、実戦的にはすでに実用可能となっている。
小田原討伐はここから出発したいという俺の要望もあって、我が菅原軍や、黒田軍など中心となる軍勢はここに集合させてある。
出発前の評定も終わって後は明日の出陣を待つだけとなった。
俺も寝室に戻って今日は一人でゆっくりと夜をすごそうと布団に入ろうとした瞬間のことだ。
(ご苦労様でした。勇者よ)
なんと、女神の声が聞こえてきたじゃないか。
何年ぶりのことだ?
(ひさびさだな、女神様。今日はどうしたんだ?)
(勇者よ、あなたのこの時代の苦労が報われたようです。
先程、あなたの時代への道が開かれたようです)
(なんだって! まだ天下統一は成し遂げられていないぞ)
(そうなんですか? でも、あなたの時代のとの間を阻害していたものは全て取り除かれたようです。
あとは歴史の復元力が、小さなキズを埋めて本来の歴史の流れに戻っていくことでしょう)
(すぐ戻らないといけないのか? 今、急に俺がいなくなってこの時代は大丈夫なのか?)
(どうでしょう? わたしの考えではこれ以上、あなたが歴史に干渉するほうがよくない結果を生むと思いますが……
ひとたび開いた扉ですが、ずっとこのままの保証はありません。できるだけ急いで下さい)
(そうか……わかった。少しだけ待ってくれ)
(わかりました。勇者よ、明日の朝までお待ちしましょう)
すごく短い猶予だな……せめて明日の夜までってしてほしかったぜ。
予想外だな……九州や奥州がまだの状態でこうなるとは。
だが、さすがにもうここまで来れば歴史は元の流れのままってことか。
それならば本来いてはいけないはずの俺はさっさと消えるに限る。
俺はまず、柴田のおっさんのところへ飛んだ。
さすがにいきなり寝室に飛ぶのはまずいよな。
「おーい、おっさんもう寝たか?」
俺はおっさんの家の家の前に飛んで、玄関の戸を叩きながら大声でどなった。
いきなり戸が中から開けられ、柴田のおっさんが顔を出した。
「この夜中に騒がしいわ。いったいんだ?」
柴田のおっさんはたいそう不機嫌そうだ。さてはお市様と始める直前だったか?
「わりぃわりぃ、ちょっと明日、俺、消えることになったから」
「は? いきなり、わけわからんこと言うんじゃない。順序立てて話せ」
そう言われても困るんだがなぁ……
「俺がこの世界に本来いるべき存在じゃないってことは、柴田のおっさんも気づいてるだろ?」
「あー、お前のようなわけのわからないやつが、そうそういてたまるか」
さすがにその程度は理解していてくれたか。
「もともと、自分の世界へ戻るための手段を探していたわけだが、やっとその道が見つかったわけだ」
「それで消えちまうのか? この事態はどうするんだ、それとお前の家来たちは」
「別にもう俺がいなくても、この流れは変わらないさ。家来っていうか、あいつらにはこれまでも言ってあるからな。
俺はいついなくなるかもしれないから、そうなっても慌てずに行動しろって」
「そういうものなのか?」
「だが、ひとつだけ俺がいきなり消えちまうわけにはいかない事情があってな。
預かり物の三姉妹なんだけど、下の二人どうしよう?
一応、俺になにかあったときのことは、佐久間盛政に頼んであるけど、それでいいか?」
「盛政か。すでにお前がそうしてるのなら、俺からは何も言うことはない。
なにせ、俺はすでに死んだはずの男だからな。
で、なんだ。下の二人って限定するってことは茶々はどうするんだ?」
「連れてく……まだ聞いてないけどな」
「安心したよ。茶々のこと頼むな」
「あぁ……
んじゃ、そういうことで」
そういえば、娘さんをくださいとか、そういうのやってなかったよな。
「もう会うことはなかろうが、達者でな」
「あぁ、おっさんもお市様と仲良くな」
これで唯一の心残りはなくなった。
柴田のおっさんにも言ったが、家来の皆には常々、自分がいなくなってからのことは言ってあるからあらためてどうこうすることは不要だろう。
官兵衛や小六も察してくれてるはずだ。
家康にはすでに腹を割って話してあるから、勝手に動くだろう。
新連載スタートしました。よろしくお願いします。
「ミノタウロスは今日も草を食む ~異世界転生と思ったら輪廻転生だった~」 https://ncode.syosetu.com/n1804et/
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