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1-2 どうして秀吉がいないのさ

「おおまかに理解したと思う。

 まぁ乗りかかった船だ。

 この子を安全なところに送ってやるのは引き受けてもいい。

 だけど、岐阜や清洲って危なくないか?

 琵琶湖びわこのまわりって明智の勢力圏だろ」


「詳しいではないか。

 確かに近江おうみを抜けるのはなかなか至難。

 こういう事態だと誰を信用していいものかと。

 特にこのあたりの武将は皆信用ならん」


「そうだなぁ。

 この際だからいきなり秀吉に頼るってのはどうだ?」


「秀吉? 誰だ?」


「わからんってことないだろ、豊臣とよとみじゃなかった、羽柴秀吉はしばひでよし

 今頃、毛利もうりと戦ってると思うけど」


「そのようなものは知らんぞ」


「え? まだ改名してない時代なのかな。

 木下藤吉郎きのしたとうきちろうだっけ」


「その名前は記憶にあるな。

 だがその者は以前、金ヶかながさき殿しんがりを引き受けて死んだはずだが」


「なんだって!」


「今は弟の木下秀長きのしたひでながが後をついでおる。

 確かに今頃毛利と戦っているはずだが、明智の与力よりきだから今ひとつ信用ならん」


 秀吉いないんだ……

 この時代どうなってるんだよ。


「ちょっとそのあたりのことを教えてほしい。

 今は中国地方はどうなってるんだ?」


「中国地方の総司令官は明智でした。

 現在は与力の木下秀長殿、黒田官兵衛くろだかんべえ殿らにより毛利を攻めているはずです。

 明智殿の要請により上様自らの出陣で、毛利との決戦となる手はずでしたのに、このような」


 そうか、秀吉がいないことで毛利は明智が受け持つもとになった以外は大筋俺の知ってる歴史と大差ないか。


「んー、そうなるとどうしたもんかな。

 柴田勝家しばたかついえは北陸でやはり遠いよな。

 大阪あたりに誰かいなかったっけ?」


「おー、確か大阪には丹羽長秀にわながひで様と神戸信孝かんべのぶたか様が四国攻めの準備で滞在しているはず。

 あのお二人方なら信用してよろしいかと」


「んじゃ、まぁそのあたりを目指すとしようか。

 ちょっと馬を連れてくるからこのまま待ってろ」


 坊さんの乗ってた馬はどこかへ逃げて行ってしまったようだが、追手の侍が乗ってた馬が近くにそのままいたので、良さげな2頭をいただくことにした。

 異世界で乗馬覚えておいたことが役に立ったな。


「俺が先頭を走るから、馬にただ乗ってれば後をついてくる。

 そう馬に言い聞かせておいたからな」


「わかりましたが、この暗闇の中だいじょうぶなのか?」


「特に問題ない。

 闇の中のほうが逃げるのも有利だろう。

 少々の追手が来ても問題ないが子供連れだからできるだけ戦闘は避けたいからな」


 暗視スキルがあるから闇とか俺には関係ないんだよな。


「よろしくお願いします」


「まかせておけ。

 本当はケガした後だからゆっくり休ませてやりたいが、こんな時だからガマンしてくれ。

 子供が起きて暴れないようにしっかり捕まえておいてくれよ」


 ☆


 大阪目指して南下。

 馬上で頭の中になつかしい声が響いた。


(聞こえますか? 勇者よ)


(その声は女神様かな、ずいぶん久しぶりだな)


(魔王討伐ありがとうございました)


(それでこの事態はなんなんだよ。魔王討伐したら元の世界に帰してくれる約束だっただろ)


(はい。そのつもりであの旅の扉も設定したのですが、この時代より先に進めなくなっているのです)


(この先の時代は俺がいた時代じゃなくなってるってことか)


(そういうことのようです。

 歴史は大きな復元力がありますから少々のことは問題なく本来の歴史の流れに復元していきます。

 ですが、この時代に起こっている異常は復元力の限界を超えております)


(俺がその異常をなんとかして元の歴史に近い流れにすれば問題なくなるのか?)


(そうです。あなたの力は魔王と戦ったその時のまま残っております。その力を使ってこの時代に介入すれば可能かもしれません)


(失敗したら今以上にグチャグチャになりそうだけどな。まぁしかたない。やるだけやってみよう)


(では、その時またお会いしましょう)


(あー、またな)


 どうやらこの歴史が歪んだのは、秀吉が若くして死んでしまったせいだろうな。

 信長という大きな力のせいでここまで大した問題なく歴史は流れてきたが、その死後の流れが上手くいかなくなってるようだ。

 秀吉の代わりを見つけるか、それとも俺が秀吉の代わりをするか。

 天下統一ってやつをどうにかしないといけないんだろうな。

 菅原翔太すがわらしょうたおよそ十八歳(十六歳で異世界転生して二年経ったからおよそそのくらい)、まだまだ元の世界に戻る日は遠そうだ。

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