2-9 佐久間盛政をスカウトしたい
岐阜がひとまず片付いたので、決戦の方に向かってみたところ、残念ながらほぼ決着はついた後だった。
聞いた話によると、小一郎の本陣目掛けて攻めかけてきた佐久間盛政であったが、官兵衛らが想定よりも早く駆けつけてきたことを知り退却にかかった。
しかし、その退却するところへ官兵衛らが攻めかかり、盛政勢を壊滅させたのであった。
ほぼ時を同じくして、丹羽長秀らが柴田勝家の本陣を突き、前田利家が山上で参陣を見送ったことにより、柴田勝家も退却したようだ。
俺が到着した頃には掃討戦へと移った後だった。
もうこうなっては俺がわざわざ参戦する必要もないのだが、俺には一つやっておきたいことがあったのだ。
上空から人物探知を使ってその人物を探したところ、山中に発見した。
散々に配下も討ち取られ、数騎の配下を残すのみとなった佐久間盛政だ。
あぁあ、あいつも運が悪いよな。
このまま逃げていってもその先にはこちらの手勢が待ち構えている。
運の尽きって感じだが、ここで死なすには惜しい武将だ。
確か記憶では生け捕られたと思うんだが、もう微妙な歴史はボロボロになってるから、どうなるかはわかったものじゃない。
俺は盛政がこちらの手勢とぶつかる前にその前に立ちはだかった。
「佐久間盛政殿、一騎打ちを所望する」
「菅原翔太か、小癪な」
「盛政殿が勝てば安全なところまで配下ともどもお送りしよう。だが、俺が勝ったら、盛政殿には俺に仕えてもらいたい」
「いいだろう」
佐久間盛政が馬上で槍を構えて俺と対峙する。俺もグリフォンの上で剣を抜いた。
盛政は馬ごと俺に体当りしてくるかの如く槍を正面からぶつけて来る。一撃にすべてをかけたいい攻撃だ。
これまで上杉勢相手に揉まれてきた男の槍は半端ないな。
しかし、まだ死線を潜り抜けてきた数が俺とは違って少なすぎる。俺はグリフォンの上で体を捻り槍をかわすとともにその槍をつかみ、こちらへ思いっきり引いた。
盛政が体勢を崩し馬から落ちたところを、俺はグリフォンから飛び降りて、盛政を組み敷くとともに剣を盛政の首筋に当てた。
「勝負はあったな」
「無念」
俺は盛政の上から降りて、盛政の前に座った。
「約束通り、俺に仕えてもらうぞ」
「武士に二言はない」
「よし、いいだろう。俺の全軍をお前に託す。
天下を統一できるだけの軍に鍛えてくれ」
「全軍を俺にか?」
「あぁ、まだ少ない兵だがこれからどんどん増やしていくからな。しっかり頼むぞ」
柴田軍屈指の猛将をスカウトできたようだ。きっと俺の軍の要となってくれるはずだと期待している。
「とりあえず、俺の城まで引き上げるが、配下の者共はどうする?」
盛政に配下の意思を確認したところ、全員が盛政に従うようだ。
「なら、いったん全員を俺の城まで運ぶぞ」
「待ってくれ」
「なんだ?」
「柴田勝家殿はどうなる?」
「柴田のおっさんか、俺もあのおっさんのことは嫌いじゃないんだ。
俺を信じて任せてくれないか?」
盛政は俺の目をじっと見ていたが、
「わかった、すべて主となる菅原殿にお任せすることにしよう」
信じてもらったからには、なんとかしないとな。
だが、柴田のおっさん、頑固なんだよな。




