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2-5 滝川一益が手ごわすぎる

 北ノ庄が雪に覆われたという情報により、小一郎と官兵衛が動き始めた。

 狙いは長島城ながしまじょうの滝川一益だ。

 長島っていうと、三重県と愛知県の境目あたりの川の中州だっけ、確か遊園地があったよな。


 本能寺の変以降、さっぱりな感じではあるが、腐っても信長も頼りにしていた名将。早めに叩いておきたいのだそうだ。

 俺も名前は聞いたことあるんだけど、面識ないんだよな。清州会議のときはまだ関東からの帰還途中とのことで会えなかったし。


 長島攻めにいざ出発ということで、小一郎らに合流して間もなくとんでもない情報が飛んできやがった。


神戸城かんべじょうが滝川一益の手によりすでに落城とのこと」


 滝川一益すげぇな、行動が早すぎる。


「官兵衛どうする? 目標をそちらにするのか?」


 俺が官兵衛に尋ねると、官兵衛はまだ余裕の表情。


「これはいい機会かもしれません。桑名城くわなじょうを落とせば、出先の神戸城と本拠の長島城との連絡を断てます。

 迅速に桑名城を攻撃しましょう」


 目標は桑名城ということで進軍していったが、なんだかんだと進軍に時間が取られるのが大軍の弱点だな。俺たちが桑名城に到着する頃には滝川軍は神戸城を捨て桑名城に陣取ってきた。

 桑名城を囲むように陣取れば、いきなり夜討ようちをかけられるは、どうも翻弄されまくってる。


 お互いの戦力全部出しきっての正面からぶつかり合うような戦いはともかく、城を取り囲んでという持久戦となると俺みたいな素人の出る幕ではなさそうだ。

 もうちょっと経験踏まないとなんともならない感でいっぱい。


 うちの連中もやはり若くてまだまだ戦場経験が足らないようだ。

 福島正則とかの行動見てても、敵の行動を見てそれにそのまま反応してるだけだから、いいようにあしらわれてる。

 まぁ俺も似たようなものだから、正則のことを笑ってられんがな。

 将来、名将になるにしてもまだまだ戦場の土を舐めてもらわなんといけないようだ。

 長い目で見ることにしよう。


 今にして思うとこういう若い将来の名将たちを借り受けるより、俺の補佐ができるベテラン格の武将が1人ほしかったな。

 そうすればいろいろ先陣でもまかせて楽できそうだ。

 課題にしておこう。 


 明智と戦ったときにも思ったが、織田家の各将たちって本当にすごいよ。

 まともに同じ数の兵を率いて俺が指揮したのでは必敗だな。俺が彼らと同じ土俵に上がろうってのはおこがましそうだ。

 やはり俺は裏方と、そして実戦での先駆けに徹するほうがよさそうだ。


 桑名城を囲んで半月、春までに滝川一益を倒せば十分ということで持久戦にはいったところ、驚くべき情報が届けられた。


「柴田勝家、近江に向けて進軍中とのことです」


 おいおい、北ノ庄は完全に雪で閉じ込められてるはずだろ。

 しかし、これは無視できる情報じゃない。


 官兵衛の依頼もあり、俺は北へグリフォンでひとっ飛び。

 吹雪の中、北ノ庄付近へ飛んでいると、柴田のおっさんの軍が雪をかき分けて進んでいるじゃないか。

 このおっさん、無茶苦茶しやがる。


 通常の倍くらいというゆっくりとした行軍とはいえ、着実に近江へ近づいてきている。もう二日も進めば雪もなくなるだろう。

 俺は急いで引き返して官兵衛たちと相談した。


「一益を倒してから引き返すってわけにはいかないだろうな。その頃にはすでに柴田のおっさんは京を占領してるだろうよ」


 俺のそうした状況の報告を受けて、


「全軍を引き返せば一益が後方で自由に行動するでしょう。

 ここは二万の兵をもって抑えとして、他は畿内きないへ引き返しましょう」


 官兵衛も苦渋の表情でそう切り出すと、


「ここで引き返されては、いつ尾張の我が領土が攻められるか不安でならん。ここは一気に叩き潰すまで押し切るがよい」


 織田信雄がわけのわからんことを言い出しやがった。


 こいつ、これまでの話を何も聞いてないだろ。

 だいたいお前のほうが一益より兵も多いんだから、自分のところの城くらい自分で守ればいいんじゃね?

 それに一応、お前も織田の御曹司ってことになってるから、一益もお前のところにそうそう兵は出さないと思うぞ。


 織田信雄のほうは適当にスルーして、抑えの大将に蒲生氏郷がもううじさとを残して俺たちは引き返すことになった。

 今回の戦は、滝川一益と柴田勝家にいいように振り回されただけとなった。

 先行きはあまり明るくないな。

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