2-3 柴田勝家のおっさんとか嫌いじゃない
領地やら葬儀やらで忙しい日々に追われていたのもやっと一段落ついた。
官兵衛とかは相変わらず忙しく陰謀に勤しんでいる。あれ趣味でやってるよな。
茶々の顔が見たくなったので清須まで瞬間移動して行ってみたところいないじゃないか。
聞いてみると母親のお市の方の再婚で北ノ庄城へ引っ越したらしい。
北ノ庄ってどこだよ。
小一郎のとこまで聞きに行ったところ越前らしい。
まぁ越前って聞いてもちょっと悩んだことは内緒だ、福井ね。
日本海側って転移前もあまり行ったことがなかったから、土地勘がないんだよな、困ったものだ。
ちゃんと地図までもらったっていうのに、グリフォンで飛んでるうちに気づいたら大幅に行き過ぎて能登半島まで来ちゃってるし……
とにかくすっごい時間かかったけど、やっと着いたよ北ノ庄城。
想像以上に立派な城でビックリ。
安土城は焼け落ちてて見れなかったが、この時代に来て見た城の中で一番立派な気がする。
入り口で茶々のとこに遊びに来たって言っても、入れてもらえるわけもないから勝手にお邪魔しよう。
茶々はどこかの探知してみると、城の一角の部屋に反応あり。
忍び込ませてもらいましょうか。
人がやたらと多いけど、まぁさほど怪しい格好はしてないから、普通にすれ違っても大丈夫でしょ。
俺の顔を知ってるやつとか茶々以外では勝家くらいだろうし……なんて思ったのがフラグだったようだ。
なんで、茶々の部屋の前で勝家本人と出会うんだよ。
こっちも驚いたが、向こうもこっち以上に驚いてる。
あ、夜這いとかじゃないからな。
まだ真っ昼間だし。
「なんだキサマは!」
勝家のでかい声で中から茶々が出てきた。
あいかわらず可愛い。
俺が手を振ってやると、向こうも気づいたようで、
「翔太、わざわざ来てくれたんだ」
「茶々、ちょっとこの男に話があるから、お前は中にいなさい」
と勝家が茶々に恐る恐るって感じで言うと。
「バカ! 大嫌い!」
と、障子を勢い良く閉めて茶々は中へ。
茶々に大嫌いって言われて、勝家はかわいそうなくらい落ち込んでるのがわかる。
お義父さんって大変そうだね。
「たぶん、大嫌いってのは言うほど嫌ってないと思うよ。
本当に嫌いだったらあんなふうに言わずに、冷たい目で睨んだだけで口も聞いてくれないと思うから」
一応、茶々に近い世代からの意見としてフォローしてみる。
「そうか、そうならいいんだが」
勝家のおっさん、がんばれ。
「清須以来か。菅原伊勢守だったな。
とりあえず、こっちへ来てくれ」
まぁ見つかっちゃったからには無視して茶々のところへってわけにはいかないよな。しかたない今日のところは柴田のおっさんにつきあうしかないか。
天守にある城主の間へ案内されて、勝家と向かい合った。
「こんなところまで何の用だ?」
「いや別に茶々のところまで遊びに来ただけなんだが」
「……お主、いったい何者だ?」
「そう言われると困るんだがな。
いろいろと巻き込まれてこういうことになってる」
「目的はなにかあるのか?」
「んー、信じてもらえるかどうかはおいといて、天下の統一かな」
「大きく出たな。お主にできるのか」
「できるかどうかはわからんが、やるしかなさそうだからな。
信長が死んで誰も代わりにやってくれそうにないかなって。
おっさん、代わりにしてくれるか?」
「俺か?
俺にはムリだろうな。
天下とか上様がいなかったら考えても見なかったな」
「なら、おっさんも協力してくれないか?
たぶん、おっさんが協力してくれれば天下もそれほど遠くない」
「織田家はどうなる?」
「御曹司たちがまともな人間たちなら立ててもよかったよ。
だが信孝にしろ信雄にしろ自分の保身とせせこましい領地しか考えてない。
あいつらじゃ天下人とかムリだ」
「だが蔑ろにすることは許さん」
「そのつもりはないよ。
邪魔さえしなければ身の立つ程度の名誉と領地は残してやれる。
だがあいつらの強欲さはそれじゃきっとガマンできないんだろうな」
「まぁそうだろうな。
だが俺はあくまで織田家の家臣だ。
これまでそう生きてきたし、最後までそう生きていく」
忠臣なんだよな。信長に最後まで殉ずるのか……
「おっさんは戦場じゃ強いんだろうな」
「おぉ強いぞ」
「また来るわ。茶々んところへだが」
「茶々に手を出したら許さんぞ」
「もうちょっと大きくなるまでそのつもりはないよ」
「また来たら帰りにでも俺のとこにも顔を出してけ。
茶くらいは振舞ってやろう」
「あぁそうさせてもらおうか」
柴田のおっさんとの戦いを避けて進む道はないんだろうだ。




