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本日は晴天に。  作者: ガブリエラ可愛い
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作戦9:レディファースト

ども。

腹が痛いです。




今現在、

さっきまで祭の会合があったこの場所は皇帝を奪還するべく、

俺と酒巻と堀田少尉による作戦会議の場となっていた。



「反帝組織による誘拐という隊長の見立てに該当しそうなのは…この三件ですね。貴族院議員の西円寺氏。活動家の沢木氏とその一派。そして帝都で急速に信者を増やしているという人民団です」


貴族院議員の西円寺重郎は知ってるよ。

貴族のみがなることを許される貴族院議員の中でも大きな権力を持つ西円寺家は帝国の華であり闇でもある。

帝国が近代化に成功したのは貴族院の議員たちの力が大きいからね。


活動家の沢木も知ってる。

生まれる時代を間違えたとしか思えないリベラル的思想は帝国の秘密警察にマークされるには十分な理由だ。

この国では言論の自由はないからね。


でも人民団っていう集団は聞いたことないな。


「人民団?なんだその宗教は」


「知らないのか錦織。人民団は『人類の解放』を究極の目的とした新興宗教だ。帝都の高官たちとつながりがあり、過激な教えを信じる教団員は帝都ではしばしば問題になっている」


「へぇ、変な教えだな。まあ自分は堀田少尉とは違って前線勤務が多いので?そういう知識を知らなくても仕方ないかな?ねえ?」


「錦織さん錦織さん、これは私でも知ってる常識です」


「………」


え、これ、俺だけ知らなかった感じ?

俺、情弱…


「ま、まあ、貴族院議員の西円寺氏も以前から不正に関する話題が尽きない問題人物だ。それと、沢木氏は人権活動と言論の自由に関する発言で、帝都の特殊警察に監視されている」


「堀田さん、よく知ってますねぇ。いやぁやっぱり出世コースに乗ってる将校は違いますねぇ。俺なんか変人と変態ばっかりの小隊長止まりですよ、けっ」


「錦織さん錦織さん、うちの隊はあなたが一番頭がおかしい人ですよ」


「新聞を読むのは成人として当然だろう。お前はもっと社会を知るべきだ」


「うっさいうっさい」


「話を戻します。西円寺氏の別邸、沢木一派の集会所、人民団の教会、この三ヶ所を手分けして探しましょう」


「わかった。私は堂本中将に報告して部隊をこの三ヶ所に派遣するよう進言してくる」


その時ちょうど望月が入ってきた。


「隊長!祭の準備はどうしたんですか!」

「望月。それは後で説明する。他の皆は?」

「外にいます」


「隊長!外に車を止めてあります!」

「寺門か。俺のライフルと弾は持ってきた?」

「はい、載ってます」


「五十嵐とリンは?」

「ここに」「はい。武装各種あります」




「よし。酒巻」

「はい。小隊整列!」


皇帝のことは…

“おっさん“でいいよね。


「これから俺たちは誘拐された“おっさん“を奪還する作戦に参加する!以上!頑張ろう!」


「はっ!!」







『こちら西円寺邸。外から見た限り中に怪しい動きはありません』


『沢木の集会所も同じく』


「各部隊、別命あるまで待機せよ」


『はっ』『了解』



「人民団の方は?」


『現在、偵察隊が教会を包囲している段階です』


「急げ。ただし悟られないようにせよ」


『はっ』



俺達は絶賛ドライブ中。

目的地は人民団の教会。

無線を持つのは堀田少尉。



「今のところ皇帝陛下がおられる場所がはっきりせぬな…」


「堀田さん、ここは落ち着いて行きましょ」


「分かっておる!それと私は少尉でお前より階級が高い!“堀田さん“ではなく“堀田少尉“と呼べ!錦織軍曹」


「ほいほーい」


「お前…後で覚えていろ」


「そんな怒んないでください堀田少尉。短気なのはカルシウムが足りないかららしいですよ堀田少尉」


「カル…何を言っているのだ?それよりお前は慎みを持て。軍人ならば尚更だ」


「ほいほーい」


「お前…いや、もういい…」


「堀田さん、冗談はともかく俺達には無線があるんだから、あんたは本部にいてもいいんじゃないか?なにも俺達についてくる必要はないだろう」


「いや、堂本中将たちが本部にいれば充分だ。私は現場でできることをする」


「へぇ…」


「なんだ?」


「いや、堀田さん、あんた俺よりよっぽど隊長向いてるよ」


「“ゴミ虫“のお前と比べるな。そして私のことは堀田少尉と呼べ」


「ほいほーい」


「お前…このやり取りもうんざりだ…」


「そんなカッカッしてると血圧上がりますよ」


「うるさい」


俺は堀田さんの健康を心配してるのに冷たいなぁ。


「隊長、教会が見えました」


「うん。もう少し行った所に停めて」


「はい」



いよいよ敵の本丸候補その1に到着だね。

他の候補地には変な動きが無いらしいからここが当たりかもしれない。

気を引き締めて行こう。


「あ~、ドライブって楽しいね」


「はい、自分も昔は良くスポーツカーを飛ばしてました」


「え、酒巻ってスポーツカー運転してたの?」


「お前たち、いったい何を話してるのだ?スポ…なんとかとは何だ?」


「こっちの話だから堀田さんは忘れて。それより、先に来てた部隊の方は?」


「少尉と呼べ…いや…もういい…。彼らは包囲し終わった頃だろう。」


「堀田少尉、隊長、無線入ってます」


「噂をすればなんとやら」


「私が出る。堀田だ、包囲したか?」


『はい。それと教会の中で何やら人が騒いでいます』


「分かった。突入は私と364小隊で行う。各自待機せよ」


うげっ、さらっと言いやがったよこの人。

変な関心買いたくないから言わなくて良いのに。


『えっ、364小隊?』


「そうだ。分かったな?」


『えっ、はっ、はい』


堀田さんって意外と天然なのかな。


「堀田さん、今の素で言った?」


「ん?なんのことだ?」


やっぱり天然だ。



「停めます」


俺達が乗ってる車を教会から少し離れた路地裏に停めた。

教会は町中にあって死角が多い。

敷地に侵入するには塀を乗り越える必要があるから、

目立ちにくい路地裏から教会の裏手に忍び込む作戦だ。


作戦の音頭は堀田さんに譲ろう。


「じゃあ堀田さん」


「ああ」



“レディファースト“ってね。



「作戦開始だ」



ども。

腹がとても痛いです。

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