表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本日は晴天に。  作者: ガブリエラ可愛い
5/35

作戦5:ナシアのリン、リンの過去

ども。

パンと米のどちらかなんて選べません。



私は幼い頃から両親と兄妹の暗い表情を見て育った。




物心ついたときにはナシア人として何をしてはいけないかを家族から教わった。


街を歩いていると帝国民に石を投げられたり、

兄が路地裏に連れていかれたりした。


だけど、何をされても我慢しなさいと教わった。


私達は下等民族だから。






二人の兄が徴兵されたとき、

妹たちをよろしくね、と頼まれた。

その時私はまだ八歳だった。






冬になる頃、兄たちは書類になって帰ってきた。




次の年に初老の父が連れていかれた。

父は、お母さんを助けるんだよ、

妹たちの面倒を見るんだよ、と言った。






翌年、父は骨になって帰ってきた。




父さんは果敢に戦ったけど敵の卑劣な攻撃により治療の甲斐なく死んだ、と言われた。


幼心に嘘だと思った。



だって死んだ人はナシア人がほとんどだったから。



近所のナシア人の男は皆連れていかれる。




そして帰ってこない。






残された私達は工場労働を強いられた。


戦況が変わって戦争に使うものが足りなくなったから。




来る日も来る日も、ひたすら工場で弾を作った。


偉い人がたまに工場に来て、

「前線で戦っている諸君の家族を守る弾だ。心してあたりなさい」と言った。


私がつくる弾は誰かを守るためにあるんだ。


そう思うことでなんとか生きていた。




私が十二歳になったとき、二人の妹たちが風邪で死んだ。




薬があれば治せた風邪だったとお母さんは言っていた。


悔しそうな目でお母さんは泣いていた。


でもナシア人が買える薬なんて無い。


ナシア人だと売ってもらえない。


ナシア人だから生きるための薬も手に入らない。


妹たちはナシア人だったから死んだんだ。


ナシア人だから生きちゃだめなんだ。


そう思った。




残された家族が私とお母さんだけになったとき、私はお母さんを守ろうと必死になった。




工場で誰よりも弾を多く作った。


そうするとご褒美に配給券を少しだけ多く貰えた。


それで母さんに元気になってもらおうと頑張った。




でも次の冬、母さんも風邪で死んでしまった。




薬があれば治せた風邪だった。


薬さえあれば。


でもナシア人だから薬は売って貰えないんだ。


ナシア人だから。






一人だけ残された私は軍に徴兵された。


私も抵抗しなかった。




最初の一週間はあり得ないほど理不尽な訓練を受けた。


怒鳴られ、走って、殴られ、這って、担いで。


私はゴミのような扱いを受けながら訓練を強いられた。






ある時、同期のナシア人の女の子が教官から酷いことをされた。




その子を同期の皆で慰めようと頑張ったけど意味はなかった。




私が弾薬庫で銃を片手に冷たくなった彼女を見つけたからだ。




彼女の死は銃の暴発事故ということになった。




彼女に酷いことをした教官はそのまま私達の訓練を行うことになった。


その教官が今度は別の女の子に手を出そうとした。


誰も止められなかった。


従うしかなかった。


悔しかった。


もう限界だった。


殺したいと思った。






だから殺すことにした。




山岳訓練の時に、私からその教官を誘った。


あとは簡単だった。




教官はそのまま山の中に埋めた。


同期の皆は何もなかったフリをしてくれた。


教官の捜索は二週間行われたけど誰も発見できなかった。


何故なら捜索したのは私と同期の皆だったからだ。


結局、教官は軍務を放棄、逃走した卑怯者ということで事件は処理された。




教官を始末することができても私の心は悲しさでいっぱいだった。


なんで悲しさが消えなかったのか、今でも私には分からない。






徴兵されて半年後ぐらいに私達は北方のルチアに投入された。


父と兄達がいた場所に自分が来た。


そう思うと家族との思い出がよみがえって泣きそうになった。






だけど泣いてる暇が無いぐらいにルチア戦線は地獄だった。




ども。

ベジタリアン月間始めようと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ