作戦2:新人ちゃん
ども。
鶏肉が好きです。
「出所おめでとうございます、錦織さん」
「出所って言い方やめようよ…酒巻」
正直、二週間の懲罰房行きより鞭打ちの方が厳しかった。
背中血だらけになったもん。
これまじで俺じゃなかったらショック死です、はい。
とか考えながら俺は副官の酒巻と一緒に隊舎に向かっていた。
酒巻は俺と同じく“普通“の軍人ではない。
そもそもこっちで言う“普通“が“俺達“の普通じゃないから。
普通ってなんだろうなー。
「あー。人助けでこんな目に遭うなんてツいてないわー」
「錦織さん錦織さん、背伸びすると傷が開きますよ」
「あ、そうだね、いたた」
独房で二週間もぐーたらしてたから体は鈍ってるし、背中の傷が痛くてうつ伏せで寝る癖がついたし、ほんとに不運だ。
「それにしてもよくあの鞭打ち耐えられましたね」
「あれコツがあるんだよ。打たれる瞬間に、こう、肩と背中の筋肉を」
「そんな無茶な…」
「そんなことより新人は?」
「隊舎にいますよ」
「んじゃ初顔合わせといきますか」
先週新人がうちの小隊に配属されたらしい。
俺は軍法会議にかけられる前に資料は見たけど二週間ほど独房に入ってたからまだ顔は合わせてない。
その子はどうやら上官を殴ったからこの小隊に来たらしい。
二週間の間に起きたこととかを酒巻から聞きながらしばらく歩くと安っぽいコンテナ隊舎に到着した。
これが我ら帝国陸軍364小隊が誇る「ホーム」だ。
中は男子部屋と女子部屋で分かれていて、シャワーとトイレと給湯室も完備だ。
本当はただの物置小屋だったんだけど俺たちで増築した。
え?なんで一小隊に個別の隊舎があるかって?
そんなん皆から嫌われているからに決まってるじゃん。
でも一番の原因は基地司令の部屋の前に犬のウンコ置いておいたからだと思う。
「おいーす」
「あ、隊長だ」
「おお。久しぶりの隊長だ」
「若干痩せました、隊長?」
「いやー、皆ごめんね? なんかそっちも二週間分の減俸でしょ? すまん」
「いや隊長に比べたらこっちは全然」
「金あっても使わないし」
「使えない、の間違い」
「久々の喧嘩ですっきりできましたし、むしろ良い感じ」
「隊長は疲れてるんだからほどほどにしなさい」
俺と酒巻とこの三人が第364小隊のメンバー。
共に数々の戦場と修羅場を駆け抜けたナカーマ。
望月は男ばかりのうちの隊の紅一点。だけど大食いかつ格闘のプロ。彼女にしたくない女ランキング一位。
五十嵐は色々雑だし不器用。こいつに物を貸すと絶対に壊れて帰ってくる。体がでかいから威圧感ある。
寺門は気配り上手の頼れるお兄さん。こいつイケメンだから並んで歩くのは辛い。ときどき死にたくなってくる。
こいつら三人がうちの小隊の下っ端トリオ。
問題起こすのは大抵この三人。
そして酒巻は優秀な秘書。親父ギャグさえ言わなければ完璧なやつ。
そんな俺達364小隊が新たに迎える新人ちゃんってのが
「到着時に隊長殿が…不在…だったので着任の報告は酒巻さんにしました。ラオライ・リンです」
そう。
新しい仲間はナシア人だったのだ。
ども。
豚肉と牛肉も好きです。