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1話 転生 天使って意外とフレンドリー

 


 目を覚ますと、そこは見渡す限りの草原だった。目の前には白ワンピースの少女がいる。頭の上には光の輪っか。こいつが天使ってやつだろうか。


「あなたは眠っている間に死んだそうです。残念ですね」


 だそうだ。


「ならここは天国か、どっちかと言うと地獄に落ちるもんだと思っていたからありがたいな」


「いいえ、ここが地獄ですよ。18歳くらいで死ぬとほとんど皆さん天国にいくんですけどねぇ」


 嘘を言うな。どう見ても天国だろうが。俺は無言で天使の頭をはたく。


「そんなのは当たりませーん」


 クソッ、避けられた。しかし光の輪っかが手に引っかかったぞ。これ触れるのかよ。


「はっ! そ、その輪っかを返してください!」


 いいよ。別にこんなの要らん。俺は輪投げの要領で投げ返してやった。ナイススロー。輪っかは天使の首にスポッと引っかかった。


「あなたは中々良い人みたいですね」


 天使が頭の上でゴソゴソ輪っかを動かしながらしゃべる。どうやら輪を安定させるためには結構シビアなバランスが必要らしい。



「それでは本題です。あなた、異世界に転生するつもりはありませんか?」


「え? じゃあ俺は手違いで死んだのか?」


「いや、寿命だったそうです」


「ならなんで」


「ぶっちゃけ私にもよく分からないんですよね。上司に教えられたことを教えられた通りにしゃべってるだけですし。人を転生させるのを見るのなんて始めてです。特別手当てが貰えるって聞いてやってます」


 天使にも上司とかあるのか、大変だな。にしても手当てって。思考も行動もほとんど人間と変わりゃしないじゃないか。


「で、どうします? 転生しますか?」


「そりゃあ条件によるよ」


 転生なんて訳の分からんものにホイホイ飛び付いたらアホだろ。


「賢明ですね。まずは1つめ、転生するのは魂であって体ではないのです。だから脳の記憶をあちらの世界に引き継ぐことはできません。」


「まあそれは仕方ないか。純粋に新しい世界を楽しめる、とでも考えておくよ」


 天使は少し意外だ、というような顔をする。


「面白い考えですね。そして2つめ、これが最後です。あなたは転生先の体を選ぶことができます、まあ私が提案する4つの選択肢の中からですが」


  「その選択肢を聞かせてくれ」


「その1、あなたは凄まじい腕力と戦闘センスが手に入ります」


「いいじゃん」


「ただ、孤児になります。最期は1人孤独に鬱となり、家の中で自殺します」


「やっぱイヤだ」


「ではその2、あなたは天才的な魔法を操る能力が手に入ります。しかし権力争いに巻き込まれ拷問された末に殺されることになります」


「ネクスト!」


「その3、あなたは超お金持ちの家の子供です。人生イージーモードです。でも死んだ後に呪われて、魂は縛り付けられ永劫に苦しむことになります」


「まともな選択肢はどこへいったんだよお! プリーズギブミー平和な人生!」


「自分で提案しといてなんですけど酷いのばっかりですねえ......」


 天使は同情するといった風に溜め息をつく。


「分かってるよ、上司のせいだろ。お前は悪くねえよ」


「ありがとうございます...... 次でその4なんですけど、聞きたいですか?」


「聞きたいよ。そんなにヤバい選択肢なのか?」


「その逆です。あなたはパン屋の息子になります」


「地味」


「どうなるのかもよく分かりません。教えてもらえなかったので。ただ、一番面白いよ、とだけ言われました」


「パン屋の息子が面白いのかよ。もう基準が分からねえよ」


「私個人としては本当に同情しますよ。やっぱり死んどきます?」


 天使のくせにさらっとそういうことを言うな。イメージ壊れるぞ。



「いや転生しとくよ。 ここは地獄なんだろ? どんな目に合うか分かったもんじゃない」


「ならどの選択肢にします? 私的には3で地縛霊的な物になるのが良いと思うんですけど」


「人間と天使の感覚の違いな。俺はイヤだ。やっぱり4のパン屋で頼む」


「1つだけ異彩を放ってますもんね」


「これを選ぶよう誘導されてるのかとすら思ったわ」


「まあいいでしょう。私にも神様の考えることはよく分かりません。それでは腕を前から上に挙げて大きく背伸びして下さい」


「......それ必要か?」


「分かんないです。でもやれって言われました」


 こいつらは皆で俺をおちょくってるのか? ラジオ体操してる場合なのか?


「分かったよ。やりゃいいんだろ、やりゃあ」


 俺は両手を高く挙げる。


「はい、ありがとうございます。ここでの記憶も消えることになると思いますが、あちらでもお元気で。それでは、さようなら」


 転生するにはあんまりにも間抜けな姿勢のまま、俺の意識は薄れていき、ついには途絶えた。



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