2話 積み荷と目的地
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2話 積み荷と目的地
回想に浸っているとロブが話しかけてくる。パチパチと爆ぜる焚火に追加を放り投げながら適当に答えてやる。
「そういや相棒、目的地について話したか?」
俺は素直に首を振る。南の開拓地って以外は俺は聞かされてないし、ロブが先導してたびたびスカウトのジェイコブが安全確認をしてくる、それの繰り返しだ。
「明日には着くんだが、エルフの集落だ。あの無駄に長生きな連中が半分砦のような塀に囲まれた開拓村というよりも基地みたいな場所で生活してる。」
エルフといえば長耳で長生きっていうのは知ってるが、他は俺たちと変わらなかった気がするな、感覚も手業も人間と変わらない、しいて言うなら子供が生まれにくいくらいだ。俺はロブに聞いてみる。
「奴らはこんな旧式の銃を買ってくれるのか?南部都市のどこかに行って普通にカービンでも何でも買ったほうが確実だと思うんだが」
ロブは肩をすくめながら答える。耳すらやれやれといった趣でゆらゆらと揺れている、器用なことだ。
そしてロブは自分の乗ってきた幌馬車を親指で示しながら言う。
「必要なのさ、あいつらの集落の辺りにアメミットが住み着いたんだ、あの爬虫類の化け物さ。卵と肉はなかなかにうまいが、皮は硬いしその癖加工しにくいと来た。その癖数は多いし繁殖期にゃ子供のためにあらゆる生物を襲って巣に貯える。そしておあつらえ向きにそろそろ繁殖期だ。そこで……だ」
「俺たちは集落を守るためにこの斉射砲を売りつける。30連の防衛兵器が二門だ、こんな代物、軍からの払い下げでなければそうそう出回らないからな、普通のルートじゃ手に入らないが俺たちは偶然にもそれを持ってる。いい値段になるに決まってるさ。ギルドの手数料もかからないからなおさらだ。」
そう笑ってロブはハーブティーもどきの何かを飲み下す。
アメミット、あの4つ足で歩く獣みたいな爬虫類は確かに脅威としては最適だろう。ライカンスロープの群れと比べたら幾分かましだが、マシでしかない。あれの群れは最小でも20体、おおけりゃ100を超える集団に成長することすらある。その脅威に訴えれば売り切れる可能性はあると考えたのだろう、現実はどうかしらないが、少なくとも見込みはある。見込みはある……でとどまるのが悲しいところだが。
「売れることを祈ってるよ、でないとメリッサにいい顔してあわよくば口説きに行く計画がパーになるからな」
ロブの顔が憎々しげに歪むのを見て俺は肩をすくめる。それもそうだろうが身近に口説けそうな女は一緒に生き残ったメリッサことロブの妹、メリッサ・カタとコックのジェシカ・オダだけだ。
なら付き合いが長い幼馴染のメリッサを口説くほうがよほど成功しやすいものだ。問題は成功するかどうかは全く別という話だが。
俺たちは馬鹿話をしながら次の見張りが起きてくるのを待つ。交代のエドとジェイは時間通りに起きてきてこれまでと同じように俺たちと代わってくれる。
いつも通り景気の悪い顔をしたエドことエドワード・ササキは景気の悪いペシミストだ。いつも悪いことばかり考えるくだらない奴だが、だからこそ無駄に備えている。エドはその三白眼を眠たげにこすりながら
「ロブ、ユーリ、交代だよ……今日もまた運よく何もなかったみたいだけど、次はきっと何かある、ゆっくり休んでせめてもの休息をとってくれよ。」
なんて面倒くさいことをいい、ジェイことジェイコブ・タナベも無言でうなづいている。この身長6フィート(180センチ)以上ある巨漢のスカウトは単に話すことが苦手なだけだが、やっぱり面倒だ。
単発式のトラップドアを肩に担いで起きてきたジェイは未だに温められているダッチオーブンの知覚に腰を下ろすと無言で自分とジェイの分のスープをよそい、俺たちに幌馬車で休めとばかりにアイコンタクトを送ってくる。
今日の夜の見張りはこれで終わりだ。ゆっくりとは言わないまでも休むとしよう。
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