かなしみの果実
アプリコットの香りのまま
さよならなんて言わないで
アマレットソーダみたいに
後をひく甘さのまま
いなくなるなんて言わないで
ライムの色した月明かり
声を絞って
使い古した愛の言葉で
いとも簡単に生まれ変わる私を笑って
無花果のように柔らかな私を
余すとこなくたいらげて
まるであなたのものだと
その血管を巡る旅に出たい
泣きながら食べた柘榴
戻れないことが悲しいんじゃない
今ひと時あなたを旅して
そっと冷たい背骨を抱きしめた
またね、なんて笑うと
檸檬のように切なくなるから
今夜は引き止める手になって
赤らんだ林檎のような私を
潔くもいで
熟れ時を過ぎればいらないなんて
実らない種になり朽ち果てて行く前に
なにひとつ残さず
私になんてしないまま
あなたの中で眠らせてください