プロローグ
古来より、人は、人ならざるものと戦い続けてきた。
怪異。
妖異。
呪。
災害。
目に見えるもの。目には見えぬもの。
その形は様々に、人々は自らを害するそれらに対し闘い、生存を勝ち取ってきた。
そして、そんな人ならざるものとの戦いの中には、常に最前線に巫女や、戦乙女と呼ばれた乙女たちの姿があった。
彼女たちは歴史の闇から闇へ、影から影へとその姿をひた隠し、人ならざるものが猛威を振るうその時のみ姿を現し、人々を助ける存在であった。
そんな彼女たちの歴史が変わったのは、1919年ベルサイユ条約を目前に控えた頃の太平洋上に奴らが降ってきた時である。
1919年 太平洋上。
その日は良く晴れた穏やかな風が吹く、波の静かな日であった。
太平洋アジア艦隊旗艦として配備されたばかりの巡洋艦サウスダコタの航海士スミス=ハーレイは、そう航海日誌に書き残していた。
この日、世界の枠組みを変えてしまう存在が現れ、北アメリカ大陸はたった1ヶ月でそれらの占領下に置かれてしまうことになる。
それらはその特殊な性質から、最初の発見国家であり被害国家でもあるアメリカにより、『ヴェイグ』と呼称されることになる。
この航海日誌は書き記されたであろう日から3ヵ月後、臨時米政府が置かれたセネガルに設置されたヴェイグ対策本部、巡洋艦サウスダコタ沈没事故調査委員会で初めて衆目に触れることになる。
時は流れ、2012年。
人類はヴェイグをアメリカ大陸への封じ込めることに成功させていた。
しかし、海を越えての侵攻を行うことが難しく、いまだその開放への目処は立っていなかった。
そんな中、人類とヴェイグの戦いの戦いにおいて常に最前線に身を晒し、兵士たちとともに戦う乙女たちが居た。
彼女たちはまだ年幼く、少女といってもいいような年頃の娘も多い。
そんな少女たちが何故ヴェイグとの戦いの最前線に立っているのか。
それにはヴェイクの強さと、それに対する唯一の突破口となるものが関係していた。
ヴェイグには、通常兵器の一切が効かなかった。
その姿は半透明であり、銃弾、大砲、ミサイル、毒、放射線その他一切の兵器薬品類も効果がない。
そのため出現当時最大の戦力を保有していた米軍でさえ、抵抗らしい抵抗も出来ず滅びることになった。
しかしヴェイグが欧州へとその手を延ばした時、戦場で死ぬ間際に歌を口ずさんだ兵隊がいた。
すると、その兵隊の前に居たヴェイグが実体化し、通常兵器が効果を及ぼすようになる。
しかし、全ての歌がヴェイクを実体化させるわけではなかった。
多くの犠牲、多くの時間を要し、人類はヴェイクを実体化させる、その方法を確立していくことになる。
その結果、特定の存在が歌を歌う際に発生させる特殊なエネルギー。
それがヴェイクを実体化させるということが判明する。
しかし、その一方。
そのエネルギーはヴェイグを誘引するという性質も持っていた。
ヴェイグは一定以上の数が集まったとき統率された行動を取るが、エネルギーに惹かれるときただひたすらに歌を歌っている存在を目指すという習性があった。
そして、そのエネルギーを発生させるように歌える存在の多くは年の幼い少女であることが多かった。
最前線で歌い続け人類の守り手として戦うその少女たちは「アイドル」と呼ばれ、その頂点に立つ少女は「トップアイドル」として称えられた。
これは、そんなアイドル達の道程を見守り支える物語である。
~アイドルマスター トップを狙え!~