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土岐川比菜子、26歳。
ごく普通のOL。
特に美人でもスタイルがいいわけでもなく、かといって特技とかも特にない本当に平々凡々な20代半ばのそこらへんにいるような女。
それが私。
そんな私が唯一保っているプライド。
それが
"人気イケメン俳優、浅谷悠祐と繋がっている"
というスキャンダル。
悠祐とは高校の同級生だった。
その時から悠祐は凄くモテていて、女には困った事は無かった。
私は何故だか分からないけど、悠祐に気に入られていて、親友だとかそんなポジションにいた。
時には彼女以上に大事にされる事もあって、それが原因でいじめられたりもしたんだけど。
悠祐は私を凄く大切にしてくれた。
本当にそれだけだった。
私は当たり前みたいに悠祐を好きになって、だけど決して叶いはしない想いを必死で隠していた。
だから他の男と付き合ったりもした。
だけど悠祐の事しか考えられなかった。
20歳になり、悠祐はスカウトがきっかけで俳優になった。
悠祐はあっという間に売れっ子になり、会うことはもちろん連絡も取れなくなった。
そんなある日、ワイドショーで悠祐の熱愛が報道された。
相手は人気モデルの佐伯琴葉、22歳。
あぁ悠祐の好きなタイプだな、と思った。
その日はずっと泣いていた。
しばらくして悠祐から電話があって夕飯に誘われた。
やっと貰えた休日を私と会う事に使ってくれた。
たったそれだけなのに佐伯に勝った気になっていた。
だからお酒の勢いもあって思わず言ってしまった。
「二番目でもいいよ。悠祐が好きなんだ。」
悠祐は少し寂しそうに笑った。
その夜、初めて悠祐に抱かれた。
ずっと夢を見てきた悠祐の指も髪も唇も体温も全部私に向けられていた。
それだけで泣きそうなくらい嬉しかった。
そんなにも悠祐が好きだった。
悠祐はただゴメン、と一言だけしか言わなかった。