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夏まっしぐらんど

作者: マリオネ
掲載日:2012/01/13

夏シリーズの一環の話です。


「付き合ってよ」

「いいですよ」

なんて言う感じで僕たちは付き合い始めた。なんて事の無い話なんだけど、彼女持ちって言うちょっとした勲章を、僕の努力も無しに得られたのはもの凄いお得だったと思う。って格好つけてみました。告白された時は別に断る気が無かっただけだったけど、今じゃなんだかんだで好きになって尻に敷かれちゃってる。

 人間の気持ちって不思議だと思う。別にそこまで固執して好きって訳でもないのに、ふとした瞬間の仕草だとか一言だとかで心奪われちゃったりとか離れたりしちゃう所とか。しかも異性とあらば、その振れ幅は大きくなるし。しかも一度振れちゃうと中々もどらないんですよね。それが困り者でなんとも…。

「今日なにしてたの?」

「バイトの後に友達と遊んでたんですよ」

バイト中にたまたま遊びに誘われて『暇だしいっかなー』なんて付いて行ったのが運の尽き。どうやら先日彼女と遊ぶ約束をしていたらしく、どうやら僕はすっぽかしてしまったらしいです。あ、忘れてたのが運の尽きっぽいです。

「こんなに暑い中で2時間も恋人を待っているだなんて面白いと思わない? 良い冗談だわ。ええ大爆笑だわ」

といった具合に彼女はカナリご立腹で、僕は言い訳もできない状態で。

なので彼女にガムテープで縛られても文句の一つも言えないのです。


「夏まっしぐらんど」


 さっきまで友人とファミレスのドリンクバーで青春していた訳ですけど、僕の彼女の田中紫たなかむらさきから連絡を受けて今日の約束の事を思い出し、やばいやばいと彼女の好きなコンビニのアイスを買って彼女の家へ行った訳なんですけど、そんな物買ってる暇があるんだったらさっさと走って来た方が良いわよと凄く優しく諭されてビンタされたんですよ。

その後、道具箱からガムテープを持ってくると、僕をベッドに押し倒してガムテープで縛り始めたんです。初めは「え、なになに。なにするの?」って怖かったんですけど「あんだけ待たせたんだからこれ位は当然でしょう」と言われ、ああそっかとか自己完結してたら、両手足を結構な力で縛られていました。

「さて、こんなに暑い中で2時間も恋人を待つなんて大爆笑な事をしていた私。どうおもう?」

「いやー、僕だったら20分待てないでしょうね。…ぐあ」

また叩かれた。別に僕はMだから殴られるのは構わないけど正直自分の彼女がこんな暴力的なのはどうなのかって思う。それでも好きなんだからホントにどうなのかなって思う。でも縛ってる時に笑顔だったのはすごい怖かった。

「しかしユカがこう言うプレイが好きだったなんて…もっと早く言ってくれれば僕だって頑張ったのに」

「そうね、あなたは今の自分の立場を弁えた方が良いわよ。でないともっと強くぶってあげちゃうわ」

ユカと言うのは彼女のあだ名で、紫を別の読み方でユカリと呼べる所から来ている。僕としては本名のムラサキからラッキーと言うあだ名を作ったのだが、言った瞬間に叩かれて却下となった。ムッキーよりも可愛いと思ったのだが、彼女とはここ等辺のセンスが合わない様で、日々悪戦苦闘しています。

「どうしたら許してもらえちゃいますか?」

「そうね、まずは心からの謝罪の言葉と態度かしら。それで怒りはおさまるわ」

「本当に申し訳ありませんでした」

僕は出来る限りの謝罪の気持ちをその一言に乗せて言ってみることにした。表情作りも忘れずに。

「反省してるのはアイスを買ってきて私のご機嫌を取ろうとしてる所からくみ取ってあげましょう。いいわ、その謝罪で許してあげる」

「わーい」

やはり本当は縛りたかっただけなのか、ユカは案外すんなり許してくれた。それを考えれば僕の頬を待った5、6発のビンタなど全然安いものだった。

「いやぁ、もの凄い悪い事をしても案外早く機嫌が直るユカの事はやっぱり好きです!」

こんな性格の僕だからか、今日みたいなことは結構多く起こる。付き合いたての頃はビンタと共に好きじゃないのかとか付き合う気あるのかと長々とやっていた気もするが、今じゃ直ぐに怒りを収めてくれる。まぁそうじゃないとやっていけないと踏んだんだろうけど。

「そうでしょう。普通だったら別れ話になる様な事をあなたがしても私ならすぐ許せてしまう。本当ならありえない事よ。惚れた悩みかしらね、あなたが本当にされたくない事は私したくないもの」

「うんうん。じゃあ早めにテープ取ってください。そろそろ痛いですよ」

キツめにテープを巻いたせいで結構痛かったりするので早めに取ってほしかった。

「ダメね。もう私は怒ってないけど、こんなに早くテープを取ってしまったらあなたへの罰はどうするの? いけない事をしたら怒られるなんて犬でも知っているわよ」

叩かれて縛られて叩かれてるから結構な罰になっていると思うんだけどそれはどうなのだろう。

「この状態でいるの辛いから、本当にといて欲しいんですよね。そこ等辺は本当にされたくない事換算にはならないんですかね?」

「有り得ないわ。男の人って痛みでアレが起ってしまうんでしょう。縛っている本当の目的は、自分が悪い事をして縛られているのに体が興奮してしまいソレを隠す事が出来ず、『ああ。僕ってなんて下劣で最低な人間なんだろう』って思わせるのが目的ですもの」

「うわぁ…中々難易度が高いお仕置きだったんですねこれ。でもソレを聞くと不思議とプレイに思えるから不思議ですよね。少し興奮します」

全然興奮しないような人のスカートの中を見てヨッシャみたいな事を思ってしまった感覚でちょっと悔しい。あ、悔しがらせるのが目的だからいいんだね。

「あらあら、だらしないわね。悪い事したお仕置きのビンタで興奮するなんて本当に最低のクズだわ」

ユカちゃんノリノリだなぁ。ちょっと羨ましいかも。

「とまあ冗談はさて置きましょう」

そう言ってユカちゃんはテープをハサミで切ってくれた。なんだかんだで優しくて嬉しい。

「ありがとーう。いや、シャバは中々快適です!」

「感謝なさい、私の心の寛大さに。だから抱け」

そう言ってテープを切り終えたら僕の胸に飛び込んできた。出来るならハサミはどっかに置いてからにして欲しかった。危ないし。

「もう、ホントに寂しかったんだからせめて明日まで優しくしなさい。それで今回は良しとするわ」

そう言って僕の背中に手を回すユカちゃん。ツンデレだなぁほんと。僕も大概変だと自覚してるけどこの子もヤバいと思う。

「僕の友達の為に頑張って貰っちゃったのに申し訳ないです」

「ん? アレは良いのよ。単なる実験というおもちゃだったし」

僕の友人とその思い人の恋のキューピットをしてくれと頼んだところ、ユカが結構頑張ってくれたって話で、それ自体の聞こえは凄く良い。とても聞こえはいい事なのだけど、本人的には、この女をどういう風に扱えば思い通りになるかって言う実験だったらしく、その二人が結ばれようが結ばれなかろうが、ユカにとってはどうでも良かったという人の恋をおもちゃにしきった最低の実験だった。まあ結果いい方向に向くようになったから、友人としては良かったのだと思う。

「だけどあの子達は難しそうよ。だって多分恋愛感情とか向けられたら困るタイプっぽかったもの」

「へえ、気になりますね」

なんか実験中にわかったのか、溜息をつくようにユカは言った。

「ミキったら高校生活を優雅に過ごしたいって言ってるのよ。それなのにわざわざドロドロしそうな恋愛感情なんて向けられたらどうかしら。本当に迷惑極まりないでしょうね。本当に好きな相手に告白されたら別でしょうけど、私とあなたみたいな付き合ってからお互いの事を解り合う様な恋愛はしないとおもうわ。」

「へーなるほど」

「恐らくは普通に友達として接するのが一番の近道だと思うわ」

「友情転じて?」

「恋となす」

って言うのがユカの実験の結果らしい。多分間違ってないんだろうからあの友人は望み薄なのだろう。残念です! そんな先のなさそうな友人の事を考えていたら、ユカがモゾモゾし始めた。

「なんです?」

「ありがとう」

急に感謝された。

「さっき怒ったときに、携帯で連絡入れれば良かっただろって言わないでくれたから」

「ああ、じゃあそれ聞いていい?」

「携帯を家に忘れたのよ。取り帰ってる間にあなたが来たら嫌な気分になると思ったから待ってたのよ。だから私にも過失があったわ」

まぁそんな事だとは思いましたけど。

「でもほら、待ち合わせ自体忘れてたの僕ですし。それにそんな事言ったら気持ちよく怒れないでしょ」

後そんな事言ったらもっと殴られるだけだし。

「あなた、怒られるロマンまで持ち合わせてるの?」

ユカが変な顔して聞いてくる。

「ほら、一応自他共に認めるロマンティストだし。それに怒ってくれる方のが疲れちゃうじゃないですか」

「ふーん。それを私だけに向けてくれたら最高ね」

「今回はユカだけってことで」

ユカはそれを聞くと僕の胸に額をグリグリと押し付けた。照れ隠しのつもりなのだろうけど赤くなった耳は隠せていなかった。

暑い夏の涼しい部屋がすこし暖かくなったお話。


「こう言う答えが帰ってくる事を知りつつそれを聞いたユカが僕は大好きなのです」

「……今日は帰らないんでしょう?」


すこし暖かくなった部屋が熱くなっちゃったお話。

ありがとうございました。

もし気に入って頂けましたら、他の夏シリーズも見てやってください。

では。

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