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9/13 7:26

今回のコメント


・昨日の夕食。


親子丼。

以上。(少なっ)



半歩でも前進、とにかく前進。


***********************************


 高月先輩の姿が見えなくなって、僕はなんだか胸騒ぎがしていてもたっていられなくなった。一歩だけ前に足を進めた時に滝川先輩が僕の肩を掴んだ。


「まぁ、待てよ。放っておいても戻ってくるさ」

「でも……」

「美国進の世界だ。本人が出てくることはない。語り部は登場しないのがルールだ」


 確かに今までの日記世界にも本人は登場したことはなかった。今回も同じであれば美国進はいないはずだ。


「だけど、気持の整理は必要だろう。待ってやるのも思いやりの一つだと思うがな」

「……わかりました」


 僕は滝川先輩に勧められるまま、近くのベンチに腰かけた。しばらく、目の前にある池を何も考えずに見つめていた……というのは建前で。実際には高月先輩のことがぐるぐると頭を駆け巡っていた。何か別のことをしないと頭が変になってしまいそうだ。僕は半ば無理やり、滝川先輩に話題をふった。


「そういえば、滝川先輩も日記部だということは、毎回日記を書いているんですよね」

「そうだな。亜也に提出もしているぞ」

「読ませてください」


 言うや否や、後頭部に強烈な衝撃があり、僕はあやうくベンチからこけそうになった。

「痛いじゃないですか!」

「当たり前だ! お前、先輩でしかも女の子の日記を見せてくれって言ったんだぞ」

「――はっ!?」

「おい、それは『女の子にデリカシーのない事を言った』という後悔だよな? 『そういえば女の子だった』っていう気づきじゃないよな?」

「えへへ……」

「なに中途半端な笑いで誤魔化してるんだ!」


 次の瞬間、僕はまた後頭部を叩かれた。滝川先輩はしばらく腕組みをして、黙ってしまう。また余計に空いた時間ができてしまい、僕も無言になってしまった。


 仕方がないので辺りを見渡して、時間を潰すことにする。池、芝生の生えた広場、みょうちくりんな運動器具、子供頃はよく来たこの公園だが、最近来ないうちに随分変わったなぁ。なんて感想を無理やり考えていた時にあることに気づいた。


「滝川先輩。変です」

「なんだ?」

「公園に誰もいません。動物もいません。これ、変ですよ!」


 すると滝川先輩は瞑っていた目を開き、僕を見てため息をついた。


「美国進の日記だからだろ?」

「どういういみですか?」

「大した記述がないんだろ。あくまでも日記の具現化だぞ。日記にないものまで再現されないだろ」


 滝川先輩は言い切った後、わざわざ「誰かさんも大した記述がない日記だったな」と僕の顔を覗き込んだ。僕は視線を反らして横を向いた。

 そんな僕を鼻で笑い、滝川先輩は池に向かい直した。


「こんな機会も滅多にないから、ちょっと言わせてくれ」






よし、会社に行くべ。


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