9/13 7:26
今回のコメント
・昨日の夕食。
親子丼。
以上。(少なっ)
半歩でも前進、とにかく前進。
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高月先輩の姿が見えなくなって、僕はなんだか胸騒ぎがしていてもたっていられなくなった。一歩だけ前に足を進めた時に滝川先輩が僕の肩を掴んだ。
「まぁ、待てよ。放っておいても戻ってくるさ」
「でも……」
「美国進の世界だ。本人が出てくることはない。語り部は登場しないのがルールだ」
確かに今までの日記世界にも本人は登場したことはなかった。今回も同じであれば美国進はいないはずだ。
「だけど、気持の整理は必要だろう。待ってやるのも思いやりの一つだと思うがな」
「……わかりました」
僕は滝川先輩に勧められるまま、近くのベンチに腰かけた。しばらく、目の前にある池を何も考えずに見つめていた……というのは建前で。実際には高月先輩のことがぐるぐると頭を駆け巡っていた。何か別のことをしないと頭が変になってしまいそうだ。僕は半ば無理やり、滝川先輩に話題をふった。
「そういえば、滝川先輩も日記部だということは、毎回日記を書いているんですよね」
「そうだな。亜也に提出もしているぞ」
「読ませてください」
言うや否や、後頭部に強烈な衝撃があり、僕はあやうくベンチからこけそうになった。
「痛いじゃないですか!」
「当たり前だ! お前、先輩でしかも女の子の日記を見せてくれって言ったんだぞ」
「――はっ!?」
「おい、それは『女の子にデリカシーのない事を言った』という後悔だよな? 『そういえば女の子だった』っていう気づきじゃないよな?」
「えへへ……」
「なに中途半端な笑いで誤魔化してるんだ!」
次の瞬間、僕はまた後頭部を叩かれた。滝川先輩はしばらく腕組みをして、黙ってしまう。また余計に空いた時間ができてしまい、僕も無言になってしまった。
仕方がないので辺りを見渡して、時間を潰すことにする。池、芝生の生えた広場、みょうちくりんな運動器具、子供頃はよく来たこの公園だが、最近来ないうちに随分変わったなぁ。なんて感想を無理やり考えていた時にあることに気づいた。
「滝川先輩。変です」
「なんだ?」
「公園に誰もいません。動物もいません。これ、変ですよ!」
すると滝川先輩は瞑っていた目を開き、僕を見てため息をついた。
「美国進の日記だからだろ?」
「どういういみですか?」
「大した記述がないんだろ。あくまでも日記の具現化だぞ。日記にないものまで再現されないだろ」
滝川先輩は言い切った後、わざわざ「誰かさんも大した記述がない日記だったな」と僕の顔を覗き込んだ。僕は視線を反らして横を向いた。
そんな僕を鼻で笑い、滝川先輩は池に向かい直した。
「こんな機会も滅多にないから、ちょっと言わせてくれ」
よし、会社に行くべ。




