9/5 3:40
今回のコメント
・理想って言うのは果てしなく遠くにある。
少しはこっちを向けよ! って言っても向いてくれない。
なのにふとした瞬間に凄く近くにあるように思えるときがある。
もしかして理想の瞬間に近づいたのか?
って思った時には、また遥か遠くにあったりする。
小説かいてても、仕事してても、生活をしてても、
「あっ、今すげー幸せかもしれない」という瞬間があるよね。
なんつーか、胸が熱くなる瞬間っていうか。
何が言いたいんだろう。
だけど夜中に書いてるとそういう瞬間がたまにある。
こんな夜中に熱中して書いてる僕、幸せかもって。
同時に明日の心配もするけど。
う~ん、何が書きたかったのだろう。
わかんないけど、まっ、いいか。(いいのか?)
***********************************
教室に戻った僕は帰りの仕度を始めた。すると沙和が足取り軽く鞄を持って近づいてきた。僕は少しイラついた気持で沙和を一瞥する。
「もう帰るの?」
「ああ。家ぐらいしか行くところがないんでね」
すると沙和は僕の顔を覗き込むようにして屈んだ。
「なんだか目つき悪いなぁ」
「生まれつきだろ」
「そうだね。イケメンでもないし」
「あっそ。どいてくれよ。帰るから」
いちいち沙和の言葉が引っ掛かる。きっと沙和には陸上部がある、それに対して僕は日記部を出て行った人間だから、きっと僕が一方的に拗ねてるだけだ。そうだよな。どうせ僕が悪いんでしょ。なんだか暴自棄な気持ちになってきた。
僕は居たたまれなくなって、沙和を避けるように歩きだそうとした。
しかし。沙和は僕の進路を邪魔する。どういうつもりだコイツ。僕は睨みつけるように沙和をみた。すると彼女は瞳を潤ませて、口を一文字に閉じて僕を見つめている。
「な、なんだよ」
さらにずいっと顔を寄せる沙和。僕は一歩下がってしまった。
「甲斐斗、一緒に帰ろう」
「お前は部活だろ」
「今日は部活休むよ」
「何言ってるんだ。お前は――」
『向かう場所があるだろ』と言いかけたが、沙和が自分の手で僕の口を塞いだせいで、モゴモゴとなってしまう。代わりに沙和が小さく舌を出した後、僕に囁いた。
「今日はサボり。たまにはいいでしょ?」
耳にかかった沙和の息で、僕は脱力してしまう。結局、一緒に帰ることを承諾してしまった。帰り道を二人で歩く。沙和とは中学時代も一緒に帰る機会は全然なかった気がする。
「こうやって帰るの久しぶりだね」
「そうだな」
「ふふ~ん♪」
隣をうかがうと、沙和が体を少し弾ませて歩いている。今にもスキップしそうな勢いだ。そんなに部活サボるのが楽しいなら、辞めればいいのに。満面の笑みを急にこちらに向けて沙和が声をも弾ませる。
「ねえ、寄り道しようよ♪」
「小学生か、その言い方」
「いいでしょ、別に。モンブランが絶品のカフェがあるの」
「えー。甘いのはちょっとなぁ」
すると口を尖らせて沙和が上目遣いで僕を見つめる。
「もう、甲斐斗は。女子高校生と付き合うのに甘いものは避けて通れないよ」
「めんどくせ」
「すぐ男子って『めんどくせ』って言うよね。ケーキ食べるのは面倒じゃないよ」
「いや。そういう意味じゃないから。挨拶みたいなもんだから」
「『めんどくせ』が挨拶? よく分からないよ……」
説明するのも面倒くさいので、僕はついていくことにした。
ついたカフェは僕には入店しにくい雰囲気が満載だった。まず、カーテンがヒラヒラがついている。クマのぬいぐるみが置いてある。何これ? 今時ありなのか? と思わせて満席に近い盛況ぶりだった。これは相当モンブランが美味くなきゃ割が合わない。
僕たちは席に座るとそれぞれに注文すると、ケーキと飲み物が届くまで、少しの間を過ごすことになった。
高月先輩ならこういう間ができると恐怖さえ感じるだが、相手が沙和となるとまったく緊張しない。それだけではなく、沙和から話しかけてくれるので本当に楽だ。
話の大半は中間テストの内容や陸上部の愚痴とか教師の噂話等、どうでもいい内容だが、今の僕には十分だった。本当に弛緩した世界が広がっていたが、緊張した世界よりましだ。
モンブランとコーヒーが届くと、話も一段落した。一口モンブランを口にすると、とんでもない美味しさが広がった。これはどのクリームも完全に栗を使っている。さすがは秋だ。栗を贅沢に使ってやがる! などと感心していたら、沙和が頬杖ついて僕をじっと見つめているのに気づいた。
す、少しはしゃぎすぎたかな。僕は咳払いして、コーヒーをすする。沙和はそんな僕を見てにこりと笑った。
「うん。やっぱり甲斐斗はこうでなくっちゃね」
「どういう意味だ」
「子供っぽいところ」
「お前が言うな。さっきまでディスプレイのクマのぬいぐるみで遊んでたくせに」
「あれは可愛さアピールだよ」
「ばらしてどうする。それに俺にアピールしても意味ないぞ」
「甲斐斗はこんなの嫌い?」
どうだろう。もし高月先輩が同じことしたら……可愛くていいかもしれない。
じゃねえ! なんですぐに高月先輩を例に出す! 僕は意味なく首を振った。それを見て沙和は首を傾けた。
よし、寝よう。
寝ないと明日がやばい。
明日が怒ってる。もう寝ろって。(妄想?)