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9/3 0:10

今回のコメント


・今日の夕飯

焼きそば。(目玉焼き付き)

もやしの炒め物。


以上。(少なっ)



***********************************



 新校舎から渡り廊下を渡ると旧校舎へ繋がる。旧校舎の二階三階は文化系クラブが活発に活動を行なう、思い出製造場となっている。僕はさらに昇って四階へたどり着く。

 僅かに階下の音が聞こえるけど、静かなことの場所はさしずめ時が止まった場所である。僕は小さくため息をつくと四階の奥にある日記部の部室へたどり着く。木製の両扉のドアノブを掴むと、少し気合を入れて僕は扉を開いた。


 夕焼けに照らされて高月先輩はいつもの椅子に座っている。今日も日記帳を開き、試験勉強と称して読みふけっていた。扉が開いたときに一瞬だけこちらをうかがうが、すぐに日記帳へ視線をおろす。僕は机に近づき、鞄を置いた。少し離れた席を引いて僕は座る。滝川先輩が来るのを所作なさげに待つ。ここ一ヶ月はこのパターンがほとんどだ。


 クマに殺されかけて一ヶ月が経つ。あの時保留した結論は今だに保留のままだ。ゆえに今日もここへ通っている。

 それにしても高月先輩と二人きりは緊張する。まず会話がない。これは高月先輩が日記帳を読んでいるせいなのだが、先輩は読書をしているので気にしていない様子だけど、僕は静かな間が気になって仕方がない。


 横目で高月先輩をうかがう。少し屈んで読んでいるために肩にかかっていた髪の毛がさらりと下りる。黒く長い艶のある髪の毛が日記帳の前に落ちると、自然な動きで髪の毛をかきあげた。僕はこの仕草がすごく好きだ。髪の毛を束ねれば、書き上げる姿は拝めないのだけど、高月先輩はそれをしない。

 厚い唇を一文字に閉じて真剣な面持ちで日記帳を読む姿と髪をかきあげる色っぽさが、僕を魅了した。今日に限っては見すぎたようである。髪をかきあげた高月先輩の瞳が僅かに動き、僕と視線がぶつかった。


「なに?」

「いえ、なんでもないです!」


 僕は全力で首を左右に振った。全力で振りすぎて首が変な音を立てた。僕は思わず首を押さえて机に肘をついて痛みに耐えた。高月先輩はその姿をしばらく見つめていたが、やがて我慢できなくなったのか、肩を震わせて笑い出した。


「あはは」

「笑わないでくださいよ」

「だって、そんなに首を振らなくても。あははは、ホント、君って変だよね」


 何も言えず「えへへ」と誤魔化すしかなかった。しかし、これはチャンスだ。今までの沈黙の分を取り戻そう。僕は勇気を出して話を続けることにした。


「今日も試験勉強ですか?」


 すると高月先輩は目を丸くして、下を向いて日記帳を閉じて、僕に本を見せる。


「これのこと?」


 僕が頷くと高月先輩は瞳を優しく細めた。オレンジ色に染まった秋の空の光が、高月先輩の黒い髪の毛を茶色に染める。


「そうだね。今読んでるのは第五十九期生の天野つばさの日記だよ。この人は別名冒険王って言われてね。三年間で陸海空色々な場所でさまざまな経験をした人だよ」

「天野つばさって……夏のイベントのサメに囲まれて絶体絶命の人ですよね」

「あはは。よく覚えてるね」

「いや、死にかけましたから」


 後で聞かされたのだが夏のイベントでの出来事も平光先生の力で、仕掛けられたものだった。僕は知らずに巻き込まれ、高月先輩に救われたのだ。


「あの時は本当にごめんね」

「えっ……」


 高月先輩は片手で拝むように僕に謝る。なんだか今日は雰囲気が軽い。



更新は1~2時間後。




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