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8/28 5:10

今日のコメント


そらが白々としてきた。

まずい! ちょっと寝ないとイベント間に合わない!(良いのかそれで)



********************



 近づくとより正体が見える。本棚の上部を占める本は、いわゆる上製本、ハードカバーと呼ばれるものでできていた。表紙、裏表紙は茶系統の皮製のようだ。同じ装丁なので百科事典か作家の全集かと思っていたが、背表紙を見ると、どれも「日記」を記載されいる。背表紙下には第○期生と書いてあり、西暦も載っていた。第○期生というのはおそらく輪転高校の卒業生を表すのだろう。僕の年代で八十八期生のはず。輪転高校はそれなりに歴史のある高校だった。総合すると、ここは日記部、目の前に並んでいるのは日記、各本には期生が書いてある……つまり、これは今までの日記部の卒業生が書いてきた日記だと言うことになる。と考えるとこれは壮観である。学校の歴史がここに残っていると言っても過言ではない。立派な輪転高校の財産だ。

「ここにはね、日記部創部以来歴代の部員達の日記が保管されているの」

 高月先輩が話しながら近づいてくる。腰まで伸びた黒髪がふわりと追いついてきた。甘い香りがほんのり香る。僕はちょっと深呼吸をしてしまった。すると高月先輩が横目で僕を見ていて、視線がぶつかる。僕は思わず息を止めてしまい、たちまち顔が赤くなる。高月先輩はジト目で僕を見るめると、「ふう」と小さくため息をついた。呆れられてる!

「日記って言うのは、個人が感じた当事者が生きた時代の生活が凝縮されている物だと思うの。大きな歴史の流れとは違う、小川のような細くて頼りない流れだけど、親しみを感じる愛すべき流れだよね」

 高月先輩は本棚のハードカバーを愛おしそうに白くて細い指でなぞる。その姿を見ていると部室に来るまでさんざん言われていた日記部の、高月先輩の話が嘘に思える。「殲滅の日記姫」なんて誰が付けたんだ。馬鹿馬鹿しい。僕が眉間にしわを寄せて考え込んでいると、高月先輩の口許が僅かに弛んだ。

「そんなに難しく考えないで。偉そうに言ってるけど、私は読んでいるだけで、その人と知り合いになったような感覚になってね。日記の筆者の友達まで旧知の知り合いみたいになるんだ。……変だよね」

「全然変じゃないです! 携帯で有名人のブログとか読んでると似たような気持ちになりますよ!」

 とはいえ、僕は携帯でブログとか読まないけど。沙和がよく有名人のブログを読んで僕に話をするので「お前は有名人の友達か」とツッコミを入れたことがあったから、言えたわけで。沙和との無駄だと思っていた会話がこんなとこで役に立つとは思わなかったけど。なんだか少し高月先輩と打ち解けたような気がした。少し心のハードルが下がったところで、僕はさらに話を広げるべく、質問をした。

「でも、なんで本棚上部と下部でこれほど装丁が違うんです?」

 本棚上部と下部では明らかに違う。ハードカバーと普通のノート。時代が違うのだろうか? いや、ハードカバーにも最近の年代の日記がある。だからきっと理由があるはず。僕は話の種ぐらいにしか思っていないままに質問したのだ。

 しかし、僕の質問を聞いて高月先輩の表情が変わった。つり目気味の瞳に力がこもり、睨まれているような印象に。口を一文字にして黙ったことが相乗効果を生んだ。これは地雷を踏んだのか? 僕の顔は絶対に引きつっているに違いない。




とりあえず今日はここまで!

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