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3/21 6:03 「きらきら、きら」

今回のコメント


反省会 (あとがきではないことがポイント)は明日にします。

最後に書いていあるコトダマの分ここまでとは、本当にそのままの意味です。

それも明日書きます。

とにかく疲れました……



********************************



 こうして私の初ライブは終わりを迎えた。


 全曲終えたとき。本当に全身の力抜けていく気がした。こんな事、他の人たちは毎回しているのだろうか。よくわからない。回数を重ねると薄れていくものなのかもしれない。


 舞台袖に入ると私達は床に倒れこむ。倒れながら私達はお互いの手を自然に握っていた。

 周りが静かってわけでもないのに自分達の呼吸しか聞こえない不思議な空間だった。


 初めて私にも光がみえた。きらきらしてた。あらためて手のひらを見るけど、なんの変哲もないただの手のひらだ。あの時はただ夢中で長峰さんに想いが届けって……


 私は勢いよく立ち上がった。あわてて舞台に飛び出す。お客さんはすでに出口へ殺到していた。ここから長峰さんを探すのは難しいかもしれない。


 すでに隣で社長が探していたので近寄ってみると首を振った。私はそれでも諦めずにお客さんに目を凝らす。すると、会場端で一瞬私と目が合った眼鏡の男性。どう考えても長峰さんだ。


 だけど私と目が合った瞬間、彼は出口へと足早に去っていく。見えているけど、人が多すぎて近づくことができない。もう捕まえることができないの……行かないでよ。


 また明日から一緒に働こうよ。ねえ、どうして行っちゃうの?

 私は被り物をしたまま、大声を上げた。


「行かないで!」


 しかし、声はお客さんの喧騒にかき消されて、まったく届かなかった。被り物をしているので、叫んだ顔さえも伝わらない。


 ……本当にもう会えないんだ。


 私は急に全身の力抜けて跪こうとした瞬間、何かが引きちぎられる音がした。

 と同時に私の横から黒い塊が飛び出した。小型でつぶらな瞳のラブリーで迷惑な存在。


「鹿ママの暴走だ!」


 鹿ママはそのまま人ごみに突っ込んで消えていった。時折、人だかりの中で空間ができるので場所は視認できた。


「痛い痛い!」と声が上がり、しばらくするとお客さんもいなくなった。


 会場の出口にはズボンのポケットに噛み付く鹿ママと、観念したように立ち尽くす長峰さんの姿があった。

 社長が長峰さんに近づき笑った。


「お帰り」

「た、ただいま……」



 この後、私はちゃんと長峰さんに謝罪した。長峰さんも私達に迷惑をかけたと謝ってくれた。ついでに社長もヒミコさんも、紗江子も皆で謝った。


 色々あったけど、結局は元に戻ったってわけ。

 ライブの後、いつもは閉まっているんだけど、今日だけ営業時間を延長してもらってたこ焼き屋「たこぼうず」にて皆が集まって打ち上げを行った。


「はい、たこ焼きお待ち~」

「あれ、信道さんが出てくるなんて珍しいね」

「だってさぁ、女子高校生と交流できるなんてこんなときしかな――」


 奥戸三兄弟の長男である信道さんは真さんに首根っこをつかまれて引っ張られていった。


「えー、色々ありましたが、なんとか初ライブも終え、長峰も戻ってきました」

「話が長い」

「長くねえだろ!」


 私が社長の話を無視してたこ焼きを食べようとした横で、紗江子が俯いた。


「お腹が減りすぎて気持ち悪い……」

「紗江子ちゃん、ライブ前緊張しすぎて一日何も食べてなかったからね~」


 途端に俯いていた紗江子が顔を上げた。


「ひ、ヒミコさん! それは内緒って言ったでしょ!」


 せっかくの攻撃チャンスなんで私は嫌味たっぷりに話しかける。


「へ~、いつも自信満々の紗江子様でも緊張するんですねぇ~」

「私はアナタとは違って繊細なんです。一緒にしないでください」


 相変わらずキツイ話し方するなぁと思いつつ、今日は許すことにした。



 打ち上げが始まり、皆が思い思いに食べ始めた。私も食べようとハシを伸ばしたと時に社長が話しかけてきた。


「やっぱりお前を選んだ俺の目は狂っていなかった」

「はぁ? 何言ってるの? こっちは無理やり選ばれて迷惑だっつーの」


 なんだかこうやって言い合いするのは久しぶりのような気がした。

 たまには相手をしてやるかと思ったんだけど、社長は逆に微笑んで話を続けた。


「まぁ、お前は信じないかもしれないけど、俺にはとある能力があるんだ」

「は? 漫画の見すぎじゃね?」

「なんとその能力は……」

「人の話無視するな」

「人の魅力を可視化できるってものだ」

「へ?」


 まさか社長も同じ力を持っていたなんて。私は驚いて社長を見た。

 すると満足げな表情で話を進めだした。


「光が見えるんだよ。華がある人にだけ」


 え? それじゃあ……私は普段自分の魅力の光がみえなかったってこと?


「普通誰にだって少しは華があるんだけどさぁ。お前ってまったく光らないのな」

「は?」

「これだ! って。ベルルの魅力を百パーセント表現するためには、うってつけだと思ったわけよ」


 怒っていいよね。これ怒っていい場面だよね。


「へーっ、またとび蹴りくらいたいわけ?」

「いや、もうわき腹に蹴りが入ってますよね? 綺麗に入ってますよね?」

「椅子に座ったままだから軽いものでしょ? ありがたく思いなさい」

「ふざけんじゃねえよ!」

「ふざけてんのはそっちでしょ!」


 やっぱりこうなる運命なのね。

 いいわ。今日はとことんやってやろうじゃないの!


「二人の前においてあるたこ焼きも食べていいですか?」

「いいよ~。あの二人を待ってると時間かかるからね~」

「二人とも、ちなみにあの二人が食べだすとあっという間になくなるからさっさと食べるんだぞ」

「は~い」


 こうして半年限定のローカルアイドル「鈴なりディアーV」の一ヶ月は過ぎていった。

 まだ五ヶ月もあるんだ。長いなぁ。

 でも、ちょっとは楽しい日々が過ごせそうで私は期待している。



コトダマに載せる分ここまで。




ということで今日はここまで。

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