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3/21 2:05 「きらきら、きら」

今回のコメント


被り物をどうやって生かすか悩みました。

設定は面白いのですが、本当に生かすお話作りって難しい。



***********************************



 しばらくして、レッスン場の外から賑やかな声が聞こえてきた。私はベルルを被ったまま隅に座ったまま動けない。声がどんどん近づいてくる。早くしないと。明るく振舞わないと。


「おーす、今日も二人でイチャイチャ特訓して……あれ? 一人?」

「やっぱり恥かしくて~帰っちゃったんですかね~」

「一人で被り物と鹿せん持って特訓ですか、まるっきり変態ですね」


 私はなんとか、鹿せん持っておどけたボーズをして待ち構えることができた。お陰で何も悟られなかったと思う。私はお帰りなさいと言う変わりにお辞儀をした。

 眉間に皺を寄せた紗江子が私に近づいてくる。ば、ばれた?


「どうしたんですか? ……なるほど。パントマイムの特訓も兼ねてるわけですね」


 私は大げさに頷いた。すると紗江子は「お~」と感心している。


「長峰さんはやっぱり恥かしくて帰っちゃったの~」


 ヒミコさんの言うことに私はまたもや大げさに頷いた。二人が小さく拍手をして私を見ている。誤魔化すことには成功したみたい。少しほっとしたところで、誰かに手首を捕まれる感覚がした。


「ちょっと来い」


 横を見ると怖い顔をした社長がいて、私を引っ張っていた。ヒミコさんと紗江子を置いて社長と私はレッスン場の外に出た。


「ばーか」


 外に出て開口一番、社長は言った。私は言い返せないまま俯く。


「何があったかちゃんと話せ。誤魔化せると思うなよ」


 社長は近づいて顎ヒモを引っ張った。私は抵抗しようとしたけど、その元気もなかった。両手で被り物が外されて、私の素顔は外に晒された。社長はこっちを見てポケットからハンカチを取り出して、私に突き出す。ハンカチからは暖かい光が零れ落ちていた。


「泣くな。お前のせいじゃない」


 ハンカチを受け取った次の瞬間、私は社長の腕にしがみついた。最初は声を我慢しながら少しずつ感情をこぼした。


「お前は本当に馬鹿。こんな時ぐらい我慢なんてするな」


 私を包み込むように社長の手が髪を優しくぽんと叩いた。暖かいきらきらした光が私を包む。とても優しくて心に解けていく。我慢していた気持ちが一気に噴出して、私は声を上げて泣いてしまった。他人の前でココまで泣いてしまったのは初めてかもしれない。小さな子供みたいに泣いた。大粒の涙が零れ落ちた。


 しばらく泣いた後、私はぽつりぽつりといきさつを話すことにした。社長は茶化すことなく何度も頷いて聞いてくれた。


「なるほどな。原因は俺ってワケだな。申し訳ない」


 社長がまともに頭を下げたところを初めて見た。同時にもう見たくないないと思った。

「ヒミコは全部を説明する事はできないよ。だってアイツも事件に関係あるんだから」


 頭をかいて「うーん」と言った後、社長は真実を教えてくれた。





更新は1~2時間後(90%)

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