3/18 23:52 「きらきら、きら」
今回のコメント
ごめん、ちょっと折れてた。
もう復活したから。大丈夫。
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こんな時でもケーブルテレビの収録はある。いつもの弁天山公園でオープニングを披露する。今のところの唯一のオリジナル曲「いくぜっ! まるっと鈴なりスズカ大行進!」が会場に流れると、私達は颯爽と登場する。
「さぁ、今日も行くよっ!」ヒミコさんが会場に語りかける。ちなみにマイクを持つとヒミコさんは喋り方を変える。
立ち位置はいつもどおり。だけど少し違うのは、鹿ママを繋いでいる紐が私の体についていることだ。私には体を回転させたり、腰をひねる振り付けが少ないけど、踊ることを許可されたのだ。
登場した時、いつものお客さんたちが待ち構えていた。だけど私の姿をみて一瞬、戸惑ったようだ。
さすがにダンススタジオと会場は勝手が違う。人が見ている分、頭が真っ白になりかけた。だけど、ヒミコさんが一瞬だけ私に振り返ってウインクしてくれる。そうか。ヒミコさんが前にいるスタジオの時を思い出そう。そしたら少し意識がハッキリした。
さらに横を向いたら、舞台袖で同じように腕組みしてじっと私を見つめてくれる長峰さんの姿があった。社長は余計だけど、まぁ気にしない。なんだか踊れそうな気がする。私は体の覚えているままに動かした。
するとどうだろう、体が自然に動く。私、なんだか凄いよ。相変わらず前の二人の光の放ち具合がきらきらと凄いけど。でも、いいんだ。なんとなく一員となってるし。
すこしだけ「鈴なりディアーV」が変化した姿。アイドルらしくなったすが――うぐっ!
「あーっ、また鹿ママが逃げたぞ!」
わわわわっ、体ごと持っていかれる~っ! 私はくの字に体が曲がり、少しだけ引きづられた。盛大な音を立てて、いつものように倒れてしまった……
「やっぱりいつものベルルだった~!」
お客さんの声が聞こえる。ねぇ、また倒れてて良い? 舞台袖を見ると、腕組みしてじっと私を見つめる長峰さんと大爆笑する社長の姿が見えた。また顔に衝撃が走る。鹿ママ、かじってるでしょ絶対。
あんなことがあったのに私たちは収録が終わった後、お客さんの前に出なければならなかった。ライブの告知をするためだ。
いつのまにかミニ握手会のようになっていた。ヒミコさんの前には長蛇の列ができていた。紗江子の前にもそれなりの列ができている。この一ヶ月での成果が現れている気がした。
ちなみに私の前にも人はいる。こんな私なのにありがたいなと思うけど、並んでいるのが、酔っ払いのオッサン、いたずらをするクソガキ、犬、とか……まともな奴はいないのか! と思ったけど、話をすることはNGなので、体を動かすことでなんとか対応した。ってうか対応と言っても酔っ払いのオッサンとクソガキへのチョップぐらいだけど……
これってアイドルなの?
更新は1~2時間後!(70%