3/18 19:34 「きらきら、きら」
今回のコメント
うん。話の流れが遅い。
ちょっとスピードを上げようかどうか考え中……(考えるなよ)
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私はやっぱり馬鹿だ。自分の夢を諦めた話を簡単に聞くんじゃなかった。私はそれほど何かに一生懸命に取り組むことはない。ヒミコさんは定期試験の勉強なんて比にならないぐらいの競争に晒されて、重圧に耐えてきたんだ。
そして大切な何かを諦めなくちゃいけない悲しさ。どれだけ想像したって分かり得ない世界だろう。ヒミコさんを横目で伺うと、彼女は笑顔で私を見ていた。その笑顔からは光を感じることができなかった。
「ごめんなさい。私、余計なことを聞いてしまって……」
「いいよ。もう大丈夫。完全に気にしていないわけじゃないけど、今は、自分のできることを一生懸命にやりたいの」
私から視線を外すとヒミコさんは誰もいないレッスン場を見つめて独り言のように呟いた。
「こんな体になってもアイドルが好きだから」
よく分からない。ヒミコさんの気持ちはトレースできない。でも、だけど、何かがこみ上げてきた。そして自分が情けなくなる。私は甘えていたのかもしれない。
「だから『ANG』も好きだったけど、『鈴なりディアーV』も大好き。私の夢はまだここにあるから。紗江子ちゃんや若葉ちゃんにも知って欲しいな。ステージに立ったときに降り注いでくるような声援と拍手を」
ヒミコさんは言った後、恥ずかしかったのか、鹿せんをかじった。
「やっぱり味がないね……」と言って笑った。
輝く存在っていうのはすべてが恵まれているわけじゃなかった。テレビなんかよく練習風景なんか映して頑張っている感を演出してたりするのを見ると、「はいはい努力努力」と思っていた。でも、それはやっぱり一部だけで、ほとんどは注目されないところで自分を追い詰めてたどり着いた姿だったんだ。
ヒミコさんから感じる光の正体が分かった気がする。あれはきっと努力の光だったんだ。だから「ぴかぴか」じゃなくて「きらきら」なんだね。
「なんだ。二人とももう休憩してたのか」
ちょうど長峰さんが買出しから戻ってきた。私たちが鹿せんを持っているのを見ると、長峰さんは頭を下げた。
「鹿せん食べるぐらいひもじかったのか……しかも涙ぐんで……」
違いますから! 本当に違いますから!
更新は1~2時間後!(70%)