3/18 18:40 「きらきら、きら」
今回のコメント
この辺は本編とはあまり関係ない(いや間接的には大有りですよ)のですが、書いておきたい部分なので書きました。
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私たちはそのままの流れで休憩することにした。ヒミコさんは「味がない」と言いつつも黙々と鹿せんをポリポリ食べている。そして急に「うん」と頷いた。
「きっと鹿せんにメープルシロップを浴びるほどかけたら~美味しくなると思うよ~」
「それはもうきっとメープルシロップです。鹿せんじゃないと思います」
「だよね~。でも、味がないんだもん~」
かなり話の流れ的にはおかしいのだけれど、私は話題を変えることにした。
「ヒミコさん。本当に今日はごめんなさい。ご自分の練習もあるはずなのに……」
「気にしなくていいよ~。私は適度に休憩入れないといけないから~」
紗江子も確かに同じようなことを言っていた。そして東京でのアイドル活動を止めた理由の話もしていたっけ。結局は教えてもらえなかったけど。紗江子も知っているってことは結構有名なことなの? いい機械だから聞いてみようかな。
「ヒミコさん、ダンスに関して『全力をだしていない』って聞いたことがあるんですけど、それと適度に休憩入れることは関係ありますか?」
「紗江子ちゃんから聞いたのかな~?」
「ええ、まぁ……」
「そっか~。若葉ちゃんは知らないんだね。私が一度アイドルを止めた理由~」
いきなり核心に触れてしまった。だけどここまで来て「もういいです」とは言いづらいので、だまって頷くことにした。
「大したことじゃないのね~。二年間、単純にダンスの練習のし過ぎで腰を悪くしただけ~。このまま続けたら歩行にも影響があるって言われたの~」
「そんな! じゃあ、今だって……」
「今はもう二年経ったし。極端な練習をしないで上手く疲れが溜まらない様にすれば大丈夫なの~」
ヒミコさんの口調は暢気に聞こえるから平気に聞こえるかもしれない。だけど、そんな簡単な話じゃないはずだ。
「これでもANGの良い所まで行ったんだけどね~」
「ANG? アイドルネクストジェネレーションですか?」
うかつだった。今現在もっとも勢いのあるアイドルグループANG。自分達の劇場を持ち、連日満員のお客さんで賑わっているグループだ。アイドルの情報に疎かった私まで知っているぐらい、メディアに露出している。
二年前といえば、まだ今ほど勢いのなかった頃だから、私がヒミコさんのことを知らなかったのかもしれない。
「これでもちょっと話題になったんだけどなぁ。でも、あそこでトップを狙おうと思うと、今の練習量じゃあ足りないし、きっと私は無理しちゃうから……限界だった」
暢気な口調がいつの間にか無くなっていた。自分でも気づいたようで、照れ笑いのように手ぐしで何度も自分の髪を撫でた。
「あはは、自分に余裕持ちたくて口調も変えたんだけど、ちょっと今は無理みたいだね」
更新は1~2時間後!(70%)