3/18 14:19 「きらきら、きら」
今回のコメント
なんとか復活。
さぁ、ジワジワ行くよ~(ガンガンじゃないの?)
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「まぁまぁ、紗江子ちゃん、落ち着いて~。とび蹴りは最後の手段に取っておこうよ~」
「……わかりました」
そういう問題かよ、とツッコミそうになったけど、また問題になるので止めた。
「でも~。社長がいないとなると~、レッスンできないよね」
「だいたいこの人にレッスンいるんですか? 微妙です」
私も同じことを思ってるけど、我慢してるのに。この小娘が。ヒメコさんが再び手をぽんと叩くと、嬉しそうに提案した。
「じゃあ~、私が~先生になるね~」
私よりいち早く反応したのは、もちろん紗江子だった。
「ちょっと待ってください! ヒミコさんの練習は……」
紗江子が一歩前に出た瞬間、ヒミコさんは彼女の唇に人差し指を当てた。すると紗江子の動きが一瞬にして止まる。
「たまには休ませてね~」
「は、はい……」
紗江子は顔を真っ赤にして俯いた。「じゃあ、長峰さんに言ってくるね~」と言い残してヒミコさんは私たちから離れていく。なんとなく気まずい雰囲気が漂う。
彼女はずっとヒミコさんの後を視線で追っていた。憧れの人と練習できる環境がどれだけ大切なのか、伝わってきた。これは謝らなくては。
「ごめんね。私のためにヒミコさんが……」
「まったくです。アナタは本当に足を引っ張っています」
紗江子は私をまったく見ずに答えた。いつものなら腹が立つけど、今日は我慢した。何も言わないでいると、紗江子は小さくため息をついて、私を見た。
「でも、足を引っ張っているのは私も同じです。一緒に練習しててもヒミコさんについていけない時があります」
「私には全然そうは見えないけど……」
「あなたの実力じゃあそうでしょう」
ずけずけと言われるのは社長で慣れていたつもりだったけど、年下に言われるとまた格別にジワジワくる。だけど言い返せない。年下なのに私よりも実力がある。この子は私よりもきっと練習しているはずだから。
「だけど、たまには休憩するのは悪いことじゃないと思います。ヒミコさん最近頑張りすぎていましたから」
紗江子は腕組みをして私から視線を逸らした。
「ヒミコさんは現在、全盛期の半分以下の力でダンスしてます」
「なんで?」
すると「はぁ?」と声を上げて、紗江子が私に顔を近づけた。信じられないと言いたげな表情だった。
「知らないんですか? ヒミコさんが東京でのアイドル活動を止めた理由」
「ごめん、知らない……」
「本当にアナタ、アイドルになりたくてこの『鈴なりプロジェクト』に応募したんですか?」
『鈴なりプロジェクト』とはもちろん、期間限定のローカルアイドルを育てる計画のことだけど……
私は応募なんてしてなかった。社長と長峰さんにスカウトされたからだ。だからと言うわけじゃないけど、アイドルのことには疎い。
それ以前に私の能力のこともあって、あんまりアイドルが好きになれなかったのだ。
更新は1~2時間後!(70%)