3/18 8:25 「きらきら、きら」
今回のコメント
気絶してたわけじゃないから!
プロット考え直してただけだから!
という言い訳だから!
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レッスン場を出てると、すぐに私の背後から声が聞こえた。
「長峰は止めたほうが良いぞ」
私は驚いて辺りを見渡すと、廊下の壁にもたれて社長が携帯電話をいじっていた。さっきの言葉も彼らしい。私は自分の気持ちを言い当てられたような驚きと気恥ずかしさと、なにより社長に言われたことが、気に障った。
「なんなんですか? それ、まるで私が長峰さんを好きみたいに見えるじゃないですか」
「……見当違いだったら良いんだけどね」
いつも様に乗ってくるわけでもなく、淡々と応える社長に私は違和感をおぼえた。だけど、私としてはおどけることしかできなかった。
「あー、もしかして焼もちやいてますか?」
すると音を立てて、携帯電話を閉じた社長がずんずん歩いてくる。私は壁際まであっという間に追い込まれた。壁と社長に挟まれた私は口を閉じて睨みつける。社長が少し私に顔を近づけると、自然に顔を逸らしていた。
「お前に長峰は荷が重い。アイドルでは無理なんだよ」
私にささやく様に言うと、すぐに離れて「もう帰るわ」と言って歩き出した。
顔が赤くなってる……私は頬を手で押さえた。最初はそれを見送るしかなかったんだけど、だんだん悔しくなってくる。
自然と私は社長に向かって歩き始めていた。いや、歩きというよりは走りに近くなる。私だってハッキリと考えてたわけじゃないのに、考えてたわけじゃないのに。長峰さんの事も、私の事も……
「勝手に決め付けるなこの馬鹿!」
「うわああぁぁっ!」
気が付けば、社長の背中に向けてとび蹴りを繰り出していた。蹴りというよりは背中に触れて押し出したに近い感覚。吹っ飛んでいく社長。建物の出入り口近くで転んだ。
社長の叫び声を聞きつけて長峰さんが駆けつけてくる。私はただ「やってしまった……」と青ざめていた。
「なるほど。わかりました。それが今日社長が来ていない理由ですか」
次の日、ダンスレッスンの合間の休憩で、ヒミコさんと紗江子が私を取り囲んでいた。さすがに長峰さんの事については触れることはないけど、社長が私に大して失礼な発言があったことを説明した。二人は「社長ならありえる」と頷いてくれた。
「で? なんで若葉さんがいるんですか? クビになったんじゃないですか?」
「誰が? 私は無礼なことを言う社長を蹴っ飛ばしただけだよ?」
「いや、それがクビになってもおかしくない、って言ってるんです。若葉さんは被り物ですし、人が変わってもバレないでしょ」
「紗江子、アンタ、社長より酷いこと言っている気がする……」
私と紗江子が睨み合いながら顔を近づけようとした時、ヒミコさんが一回だけ手を叩いた。自然と二人の注目が集まった。
「何だかんだ言っても~、社長はマゾなんだよね~」
「……ヒミコさん。急になに言ってるんですか?」
私のツッコミに「え~、違うのかな~」と腕組みしてヒミコさんは考え出した。
「ヒミコさんになんて事言わせるんですか? 私がアナタをとび蹴りしてもいいんですよ」
私の胸倉をつかんで震えている紗江子。ヒミコさんの事になるとコイツも社長であろうと殴りかかりそうな気がする……
ゴメン、ちょっと休憩させてください。
お昼頃に再開予定。
(十分してただろうってツッコミは受けませ~ん)