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3/18 0:46 「きらきら、きら」

今回のコメント


ダンススタジオは本当に実在するのですが、入ったことはありません。

昔、夜中に前を車で通ったときに、すりガラスの向こうから、誰かがダンスする影が見えたことがあります。

ちょうど信号待ちで止まったのでしばらく眺めていました。

真夜中、小さな明かり、すりガラスの向こうの影。


なんというか不思議な感覚になったのを覚えています。



********************************



 駅前のダンススタジオ。私達は放課後、ここに集まってレッスンを行っていた。


「はい、じゃあ今のもう一回やってみましょう」

「はいっ!」


 いや、ホント、私が場違いな人間だっていうのは分かっている。


 それにしても、よく分からないことがいくつかある。まずはどうして、振り付けを一度や二度見ただけで覚えられるのか。そして苦しそうなのに何度も挑戦するのか。


 ……なにより、辛そうなのに彼女達のきらきらが半端なく綺麗だって事。ステージで見せる光とは違う、弾けるような感じでないけど、どこか


 テレビではレッスン風景見たことがあるけど、実際にやるのとは大違いだと思い知らされた。


 すでに私は別メニューでレッスンを行っていた。前列の二人とはレベルが違うっていうのは分かっているけど、やはり分けられると疎外感を感じた。この傾向はデビューする前1月から始まったレッスンからずっと続いている。


「なに恨めしそうに見てるんだ。お前はまず基礎からだろうが」

「言われなくても分かってるよ」


 私の前には社長と長峰さんが立っていた。予算の関係で私にまで講師がつきっきりで見てくれるわけじゃない。ちょっとそれも情けなさを感じた。


「あいつ等の半分以下の動きで済んでるんだから、せめて覚えろよ」

「そんな簡単にいくわけないでしょ。だったらやってみなさいよ」

「いいけど、またお前の落ち込みに貢献することになるけどな」

「もう、結構です……」


 私は口に出してしまったと後悔した。弱音を吐くとすぐ「お前やってみろよ」と言ってしまう。だけど、社長には通じなかった。社長はダンス経験者で、私程度の振り付けはお手の物なのだ。


 私が下を向きそうになる時、頭に載せられる手。ゆっくりと優しい手がじわりと私の心にまで染みた。長峰さんはやっぱりすごい。


「若葉、君は君のやれることを少しずつでいいからこなしていけばいいんだよ」

「はい!」

「おい、なんで長峰のときだけそんなに良い返事なんだよ」


 やる気を補充した私は顔を上げ、レッスンに戻ろうとした。私の背後から聞こえるようなヒソヒソ声が耳に届く。


「でたね~。鈴ディア名物『アメとムチ』~」

「私には甘えているようにしか見えませんが?」


 とりあえず今のは聞かなかったことにしよう。





次回更新は1~2時間後(80%)

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